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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
2−3.悪王一味の活動日誌

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95. 殺し屋イエティ

「魔族でどうだ?」

「ははは。いいんじゃないか?しかしそんなワードどこから出てくるんだ」

「前にいたとこだよ」

「ああ、異世界ね。そこに魔族がいたのか?」

「いたよ。なんか肌の色が血色悪かったり、変な姿の奴とか色々」

「へぇ」


「魔に属する者。魔の一族。魔族、決まりだな」

「皆がなんといいうかな。変える必要あるか?って言われたらどうする」

「はっ、お前らが言ったんだぜ?俺がリーダーだって」

「ははは。よしそれでいこう」



「お前が懐かしむなんてよっぽどいいところだったんだな」

「ああ。俺にとってあそこが帰る場所だったよ。師匠の知り合いの人の家でさ、そこのじーさんがめっちゃ強くて全然勝てんかった」

「ヒカルってなんだかんだで結構負けてるよな」

「負け癖がついてしまったのではないですか?」

「うるせーな」


「ったく、けどもうそれも終わりだ」

「ああ、そーだな」

「皆さんいいですか?一度使ったらもう元には戻れませんからね」

「僕はすでに改良済みだから問題ないよ」

「私も、これでいい」

「よし。じゃあ皆。俺達の未来に乾杯だ」

「セリーだけどな。魔獣化したら俺達は悪王一味あらため魔族と名乗る。ここまで来たんだ。強さを求めた者の末路をこの世界にしっかり刻んでやるぜ」


「私達は永遠を手に入れるため」

「そして僕は研究のため」

「俺はこの世界をもっと見ていたい」

「私はそんなマルを支えたい」

「おれは、おれはこの世界をかわいいでいっぱいにする。ヒカルは?」

「強くなるため。それだけだ」


「なーヒカル。ところでなんだが、なんでマゾクなんだ?」

「魔に属する者。魔の一族その名も」

「そもそも変える必要があるのですか?」

「俺がリーダーだ。お前らが」

「変な名前より悪王一味の方が私は好きよ」

「いや、その、だからー」


「ま、いいじゃないか。たまにはヒカルの言い分も通してやろう。な?」

「マルがそういうならいいけど」

「仕方がないわねぇ」

「僕は何でも構わないよ」

「やれやれですね」

「よし、決まったな。ん?どうしたヒカル。魔族で決まったんだぞ?」

「そーだけどよ、そーなんだけど」

「不服なのか?」

「別に。ぁんだよ、皆して」



「じゃあ、皆、いいな」

「お、おう」

「さすがに躊躇うわね。まるで自害する気になってくる」

「シロ、クロ。後は頼んだぞ」

「了解」

「シロちゃん。もし何かあったら、わかってるわね?」

「もちろんであります。シロ、任務を完遂してご覧にいれます」

「よろしい」


「ははは。なぁダグ。なんなんだこのやり取り」

「動けないことをいいことにいたずらすんなよ、ってこった」

「ああなるほど。大丈夫だろ、若いとはいえ双子は分別のある年なんだからだ。というかそんな大人げないことする奴がいるか?」

「まったくだな。悪魔でもやらねーだろ」

「まったくだな。はっはっはっ」



「じゃ、じゃあ今度こそ」

「覚悟が決まらないなら1人づつでもいいんだぞ?その方が何か起こった時に対処出来るし」

「い、いやいや。やるさ。やるぞーおれ、ふぁいと、おれ。ふぅー」

「俺は強くなりたい。お先」

「あ!ヒカルってほんと変なところで勢いあるっていうか」

「私は」

「ユミ。一緒に飲もう」

「うん」


「お、おれだってー!」

「自分で飲めないなら僕が飲ませてあげようか?抵抗出来ないように痺れさせて」

「もしくは手足をちょん切ってしまいますか」

「いらんいらん!おれは、やるぞ。かわいいのために!うおぉぉぉ」

「いいから早く飲んでください」



「やっと飲んだね」

「ダグは案外流されやすいですからね」

「そうだね」

「さて、皆さんが起きるまでのんびりしますか」

「僕は研究室に行くよ」

「はい。後は私がやっておきます」

「うん。じゃあよろしく。うん?なんだこれ。未開封のゼリー?」

「あ!そ、それは」

「これは、もしかしてユミアに使うつもりなのかい?」

「い、いやぁ、そんなまさか、ははは」

「後でどうなっても知らないよ」

「はい。やめておきます」



「う、俺は」

「目が覚めましたか」

「どのくらい経った?数日ってところか?」

「ええ。そうです」

「皆は」

「ダグが最初に目を覚ましました。最後に飲んだ割に適正が高かったようですね」

「ユミは?」

「まだ寝ています」

「そうか。ヒカルは」

「まだです。彼は時間がかかりそうです」

「そうか」


「気分はどうですか?」

「ふむ。悪くはない。だが、頭がぼーっとするな。そんなものか?」

「どうでしょう。個人差はあると思います。ただ私もダグもそういう症状はありませんでした」

「そうか。様子見かな」

「はい。以上を感じたら教えてください」

「わかった」



「やあ」

「マル?なの?えーと、おはよう」

「おはよ。気分はどうかな」

「ええ、悪くはないわ」

「そうか」

「あなたはどう?何かおかしなところはなかった?」

「大丈夫さ。それどころか調子がいい」

「あら、よかったわね」

「ははは。ああ、最高だ」

「上手くいったのね」

「ふっ。完璧だ。霞がかっていた記憶が鮮明になってきたんだ」

「おめでとう」

「ああ」


「あとは、ヒカルだけね」

「そうだ」

「ダグは?」

「それが一度も姿を見せていない。双子に聞いても何も教えてくれないんだ」

「何かあったのかしら」

「どうもダグが口止めしているらしい」

「ふーん。まいいけど」



「オレは、オレは、う、うぅ」

「うなされてるわね」

「夢でも見てるのかもしれませんね」

「悪夢のようだけどね」

「そうですね」


「ところでシロちゃん」

「はい。なんでありましょうか」

「クロが言っていたのを偶然きいてしまったのだけど」

「グロがでありますか。何をいったのでしょうか」

「私が眠りについてから手元に別のゼリーを持っていたとか」

「そのようなことは決して」

「本当に?」

「そ、そんな間近で凝視しなくとも」

「ふーん。まあいいわ。もし何か企んでいたなら、ね?」

「あはは、何もありませんでしたよ。もちろん」

「ならいいのよ」


「う、ぐっ、お、俺は、お前をっ!」

「ヒカルも目覚めたようです」

「はぁ、はぁ」

「大丈夫ですか?眠ている間ずっとうなされていましたよ」

「ああ。ずっと夢を見ていた。あまり覚えてないけど」

「どこか違和感はありますか?」

「特に、ないかな。まだなんとも言えん」

「何かあったらすぐに知らせてください」

「わかった」


「皆は?」

「あなたが最後です。皆起きてますよ」

「そっか。なんだよじっと見て」

「いえ、雰囲気がかわったなぁ、と思いまして」

「そうかな?自分ではわからん」

「大人っぽく見えます」

「ふーん」


「お、ヒカルも起きたみたいだな」

「えーと、マル?」

「そうだ」

「なんか、なんというか」

「すごくかっこよくなったわよね!」

「あ、ああそうだな。別人に見えなくもないほどに」

「ステキよね。いいわよねぇ。うふふ」

「あんたがそれでいいならいいと思うけど。ゴリラと人間が混ざるとこうなるのか。不思議だ」


「なあダグは?」

「それがいないんだよ」

「おいシロ」

「はい」

「ダグは」

「もふもふさんはどこかに行きました」

「もふもふさん?」

「あらヒカル、起きたのね」

「ああ。ダグがいないみたいなんだが」

「そうなのよ」


「はぁーはっはっはっはっ」

「ダグだな」

「無視しようかしら」

「私は片付けして引っ越しの準備してきます」


「皆揃ったよ、ようだな。つい、ぶへ、ついにこの時が」

「いいから姿を見せろよ」

「ふっふっふっ。とう!」

「ん?」

「なんだ?白い、毛の塊?」

「どーだ。このもふもふ。触りたいだろう!」

「え?ダグ?この毛の塊が?」

「ははは、恥ずかしくてでてこれなかったのか」

「ちがーう!満を持して登場ってことだ」


「もふもふっていうかイエティじゃねーか、ぎゃはははは、何だその姿!ははははは。は、はらいてー」

「ははは。くくっ、あはははははは」

「お、お前ら笑うなよ!」

「ぐっ、ご、ごめん。私無理。あはははははは」

「かわいいだろ!わらうな、わらうなぁー!」


「シロ、皆起きたみたいだね。そして随分と騒がしい」

「ふっ。ダグの姿を見て笑わない者などいないでしょう」

「ダグが眠っている間にシロもすごく笑ったからね」

「だって、あれはないでしょう」

「珍獣としての価値なら相当なものだ」

「ぷぷっ。クロのそれが一番ひどいですよ」

「そうかな?事実を言ったまでなんだけど」

「だからですよ」



「ま、まぁ無事に皆で魔獣化を果たせたんだ。まずは祝おうか」

「そうね、でもダグは視界に入らないでほ、ほしい。くくくっ」

「もういい。切ってくる」

「え?ああ、あーいっちゃった」

「すぐ戻ってくるだろう」

「じゃあ今度はちゃんと乾杯だな」

「ああ。だがすぐにここを出るからな。その後はしばらく忙しくなるぞ」

「早く力を試したいな」

「焦るな。まず自分に出来ることを確認しろよ」

「わかってる」


「俺が今やらなきゃいけないこと、か」

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