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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
2−3.悪王一味の活動日誌

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94. 壊れた魂の治し方

「皆揃ったな。魔獣化の準備は整いつつある。ようやくここまでこぎつけたな」

「はい。私だけ一足先にですが」

「ははは。シロのおかげだ。魔獣化した感想は?」

「部位の増殖については妙な心地です。背中が疼くような感覚があります。神経は通っているようなのですが、まだ慣れないですね。ちなみに集中すれば翼を動かそうです」

「見た目は羽でも飛べそーにはないんだな」

「ダグは飛んでみたいのですか?それなら鳥系のモンスターで魔獣化した後に大きな翼に改良してあげますよ」

「いやいい」

「改造か。いいね。望むなら僕がやってあげるよ」

「だからいらんっつーの」


「ではどんなモンスターを使いたいのですか?」

「おれ?おれは、うーん。考えてなかった。皆は何か指定の奴があるのか?」

「私はなるべく今の姿と変わらないようにしてほしいわね。マルは?」

「特にないな。まあ動きづらそうなのとか狭い所に入れなくなるようなことになるのはごめんだな」

「動きやすさか。それなら脚を8本にしてみてはどうだろうか」

「それはちょっと」

「じゃあ私と同じで変化が少ないタイプがいいのね」

「そうだな。人型か」


「ヒカルは?」

「俺は決めてある」

「頭が良くなるやつだろ」

「うるせーな、ちげーよ。お前は猿でもくっつけとけ」

「猿なんてくっつけたらブサメンになっちまうだろ。んで?」

「魔王だ」

「あー、それで大事に」

「魔王か。骨は精製に少し時間がかかると思うよ」

「構わねーよ」

「わかった」


「よし、こうしよーぜ。なりたいものを自分で取ってくる」

「面倒ね。わざわざ自分で取る必要はないでしょ。みんなでやったほうが効率いいじゃない」

「何使うかお楽しみがいいだろ」

「ははは、それもいいかもな。ところでダグ。まさかとは思うが、ネコじゃないよな?」

「な、なんでだよ。だめか?」

「いやぁ、そのゴツい感じで猫耳はちょっと」

「いいだろべつに。おれがもふもふの猫耳になったっていいじゃん」

「だったら山羊でいいんじゃねーの?大山羊から取ってくるとか」

「無理に決まってんだろ。ていうかやだ」

「わがままだな」


「僕らはどちらでも構わないよ。自分で取ってきてもいいし、僕の手元にある素材でいいならそれで作る。こだわりがあるなら持ってきて」

「おっし」

「ふむ。一応探してみるか。だがあまり時間はないからな。この拠点はその内騎士や西の連中にバレる」

「ならいっそ拠点を移してからとかでもいいんじゃないのか?」

「だめだよ。ここにあるもの全てを持っていくことは出来ない。最低限の資材からだとだいぶ時間がかかることになる」

「急いではいないけど、ゆっくりもしてられないか」

「ああ。他の勢力に比べ戦力的に明らかに負けているからな。何かあった時対処できない。最近ちょいちょい変なのが出てきたし、強化は早め済ましたい」



「お疲れ。マルは何を使うつもり?」

「まだ考えてるところだ。何かおすすめでもあるのか?」

「特に無いわ。ただあなたはどうするのかなと思って」

「ふーん、考え中ではあるんだが候補はある。ユミは?」

「私は悪魔にしようかと思ってる」

「ははは。相性いいんじゃないか?」

「もぉ。やっぱりヒカルとダグには絶対知られたくないわね」


「シロの時は鳩が瓶にたっぷりと入れていたが、使用するのはそこまで多くなくていいらしいな」

「みたいね。血液ならコップ一杯もいらないそうね」

「多くなくていいならなんとかなりそうだ」

「何を使うつもり?」

「この間、近衛騎士に追われた時に西の領主を騎士にぶつけたんだ。西の領主がそこで傷を負った可能性は高い」

「でもさすがに血は乾いてるんじゃないかしら」

「ま、残ってればなんでもいいだろ。骨でも出来るんだ。液状でなきゃ効果がないってこともあるまい」


「それって、ゴリラよね」

「ああ。知性が高く力も強い。その上領主になるほどの実力者ともなれば申し分ないだろ」

「そうね。そうなんだけど、ゴリラか」

「なんだよ」

「いえいいの。マルが選んだならゴリラになってもいいと思うわ」

「ははは。そんなに渋い顔しなくてもいいだろ」


「何にせよやっとだ。この魔獣化に俺は少し期待している」

「少しなの?」

「あまり思い入れないようにしている。適切に期待したい」

「周りはとんでもないのが相手だものね」

「戦力の強化という点では目的は達成されるさ。俺が期待しているのは自分自身のことなんだよ」



「俺の魂は壊れている。魔獣化、つまり別の魂を掛け合わせることで補修出来るんじゃないかって思うんだ」

「そうなったら別人になりそう」

「どうかな。そうかも。だけど別人になってもいいんだ」

「いいわけないじゃない」

「俺は俺を完成させたい」

「一緒にいる人のことも」

「考えているよ。昔は周りにあるものは人も物も全て使うモノだと考えていた。でも今は違うだろ?」

「かなぁ?」


「大袈裟に聞こえるんだろうが今ここで生きていることが嬉しいよ。もうよく覚えていないが過去には何度も何度も挫折した。どうにかしてその状況から抜け出たいともがき続けて。それで俺は魂を壊した」

「そこまで、そもそも出来るものなの?」

「どうやったのかはわからないがやり遂げたんだよ。だから今がある。今度はそれを修復する。俺の長い旅もそれで完了だ」


「その後はどうするのよ」

「好きに生きる。思うままにな。たとえ短かったとしても自由を楽しみたい」

「そう」


「挫折しそうになった時に思い出す言葉がある。それでも次があるって知り合いがよく言っていた。その言葉を自分に投げかけ続けてやっとここまで来れた。今はそれだけで嬉しいんだよ」

「次があるとは限らないじゃない」

「だからこそ次を探す。自分が気づいていないだけ。だから次って何か探すんだ」


「これからの次は長いわよ?なんせ数百年は生きることになるかもしれないんだもの」

「ははは。俺が思うに、数百年なんてあっという間だよ」



「これからか」

「ちゃんと考えてよね?皆の行く末が関わるから」

「もちろん。行く末かぁ。始まりは戦士達の境遇を憂いていたんだったな。だからお金を貯め始めたのがきっかけ。今のギルドみたいなものを立ち上げたかった」

「じゃあ対立しなくてよかったじゃない」

「ならあいつらといたいか?」

「うーん」


「金は貯めた。けど資金だけあっても権力がなければどうにもならないことに気づいたんだ。誰も見向きもしない。それでそのうち諦め始めてしまったよ」

「次はなかったと」

「ははは。ちゃんとあった。財をためることをやめた頃には大盗賊として名が通っていたよ。そんな中でだな、王子の進める事業のことを知ったのは」

「ふふっ、運命の出会いね」

「だな。くすぶっていた想いがそこで再燃したのを感じたよ」


「俺はわざと捕まりショウに近づいた。で、その事業へ資金を渡す計画を立てた」

「段々知ってる話になってきたわね」

「ついでに大盗賊を捕らえこき使ったということでショウの名声をあげることも考えた。人はブランドに弱いからな」


「以前セツカに南の隠し場所を教えたのもその計画の一部でショウに資金が渡るように仕向けたんだが」

「直接渡せばよかったじゃない」

「ただ渡したんじゃ裏で盗賊と関係があると思われるだろ?名声に傷がつく」

「ふーん」


「十分な資金を渡すことが出来た。そこまでは良かった。だけど勇者や誰かさん達のように一部の人間は王国の元で働くことを拒んだだろ」

「元騎士達を含めてね」

「騎士も、そうだな彼らもだ。王国が関わってちゃ大した恩恵もないことが気になった」

「なんかわかってきた。悪王一味は」

「そ。勇者を利用して組織を立ち上げたってわけだな。王国と組織。この2つから戦士の居場所を作る。そうして争わせることで互いの存在を必要とさせようとした」


「今とはあまりそぐわない状況ね」

「そうなんだよ。ギルドだ。まさかトラドとセツカがあそこまでやるとは思わなかった。まったく参ったよ、ははは」

「笑い事じゃないでしょ」

「いいじゃないか。おかげで魔獣化なんて極端な方向に進んだ。俺が求めていたことが全て叶いそうだ」


「セツカちゃんはこっちに来なくて正解だったわね」

「ああ、俺も来なくてよかったと思う」

「あの子って変な子よね」

「改めて考えるとな。どんな相手でも受け入れる。受け入れるからこそ否定も対立もする。セツカはそれでも関わろうとする。確かに変わった子だ」

「ヒカルは大丈夫かしら」

「今は見守るしかないさ。あいつもセツカへの想いには気づいている。どう結着をつけるかは本人次第さ」

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