84. 掲示板
「今頃セツカ先輩はご友人と楽しく過ごしているんでしょうね」
「そうだなぁ、あいつにはいつも助けてもらってばかりだからな。気兼ねなく楽しんできてくれてるといいな」
「お土産楽しみですね。はい、こちらは私からのプレゼントです」
「う、おう。また書類かよ。はぁ、俺も息抜きしたいよ」
「トラドさんはどんな事するんです?」
「冒険だ」
「冒険って旅とはどう違うんです?私はあまり遠出しないのでよくわからないですね」
「捉え方にもよるだろうが、やっぱわくわくかな」
「わくわくですか。スリル満点!みたいな?」
「スリル満点。いいねぇ。うんうん、手に汗握る大冒険にはそれが必要だな」
「旅はのんびり行くことも出来ますからね。つまりトラドさんには刺激が足りないと」
「端的にいうと足りないんだろうな」
「なるほど。でしたらこの書類を今日中に片付けないとデモロ君の悪魔料理フルコースが待っている!と言ったら部屋にいながら冒険が出来そうですね。では手配いたします、村長」
「いらん。そういう刺激じゃないんだよ、ジョー。あぁそうか、ショウが妙に追い詰められてる時がたまにあったのはこういうことか。あいつ、今頃羽を伸ばしてるんだろうなぁ」
「はい、これ今日中にやっておいて下さい」
「いや、ニーナ、この量の処理はさすがに」
「集中して取り組めばあっという間ですよ。タヌキさんなら出来るでしょー。ふふっ」
「お前まだそれを」
「さー、がんばれおーじー」
「ところでこのしゃべるネコは」
「気にしないでください」
「無理だろ。なぁ、この子なでてもいいか?」
「どうぞー。わたしは構いませんよ」
「そうか。こういうのがいると気が和むなぁ」
「にゃあ。ねぇ王子」
「なんだ?」
「ひとなでいくらで買うにゃ?」
「か、金取るの?こいつ、さすがニーナのネコ」
「ノラはぷにぷにしててふわふわしててすべすべしてて気持ちいいんですよー」
「いくら出すにゃ?」
「拷問か」
「にゃー、いい机はゴロゴロすると気持ちいいにゃー」
「集中できるかぁー!」
「今日中に終わらせてくださいねー」
「トラド村長こんにちは」
「よぉ」
「あら、ジニス君こんにちは」
「こんにちは。小人さんもこんにちは」
「ははっ、人形にも挨拶か。そういうところは子供っぽいなぁ」
「え?あー、はい。そうですね。ジョーさんが大切にされてましす」
「ありがと、ふふっ。よかったね小人さん」
「まんざらでもないようで」
「そうかそうか。それで今日はどうしたんだ?」
「はい、両親と話して頻度を制限してなら戦士として働いてもいいと許可をもらいました。こちらその旨を記した書状です」
「お、おお。書状か、なるほど。たしかに両親の署名がある。なんかもうお前が村長でいいんじゃないかな」
「何言ってるんですか。ジニス君に出来るとしてもだめですよ。責任持ってちゃんと仕事してください」
「わかってるよ、言ってみただけですよ」
「今後ともよろしくお願いします」
「よろしくな」
「では登録するためサインをいただきますね。書類を用意しますのでお待ち下さい」
「はい、わかりました」
「そういえば僕にも先生と呼べる人ができました」
「へー、そりゃよかったな。どこで出会ったんだ?」
「村に帰った時にです。旅をされているそうなのですが、僕が帰った時に丁度村を訪れたようでして」
「旅人か。いいなぁ、会ってみたいものだ。羨ましい。色んなことを知っていたんだろ?」
「はい、とても博識です。数日ですが沢山学びました。特に魔法、風の魔法を教わりました」
「風の魔法かぁ。自由気ままな旅び、と。いやまさかな」
「今だったらランク試験も一つ上を受けられるかもしれません。目指せB級戦士!」
「微妙な戦士だな」
「ですよね。僕の実力じゃまだまだこの程度です。先生にもまったく敵いませんでした。速くて追いつくので精一杯です」
「はは、は。あれに追いつけたのか。A級のこと、いつかはわかるんだろうけど、逆に言い出せなくなってきたな。どうしよ」
「ではこれで登録完了です。はい、こちらA級を証明するプレートです。失くさないようにお気をつけください」
「はい。わぁ、僕の名前が掘ってある。僕もこれで戦士の一員ですね。もっともっと頑張って皆さんのようにB級やC級になれるように頑張ります!会ってみたいなぁE級戦士」
「どうするんです?これ」
「さっき俺も考えたけど、どうしよう」
「私はしりませんからね」
「はい、村長として責任とって怒られます」
「村長じゃなくトラドさん自身が怒られてくださいね。村長の名前使うのはズルですよ」
「はい、トラド、怒られます。というかもう怒られている。すみません」
「謝るのは私ではないでしょ」
「はい」
「わーい、がんばるぞぉー!」
「無邪気が心に刺さる」
「ジニス君がんばれー」
「かつてないほど追い詰められているよ。助けて、小人さん」
「皆にはもっと戦士として楽しんで取り組んでもらいたいんだよなぁ」
「楽しんで、ですか」
「何かないものかなぁ」
「トラドさんが楽しいと思えるものはスリルなんですよね?皆さんもそれぞれ楽しんでいると思いますよ。たまに話しを聞くとやっぱり危機一髪、という状況にヒヤヒヤしながらも満足しているみたいですし」
「そうなんだが」
「僕は冒険がしたいです。トラド村長はそれを伝えたいということでしょう?」
「そうなんだが、少年に見透かされると自分が幼稚に思えて仕方がないな」
「うむ。では吾輩が言ってやろう」
「急に出てくるなよ。さすがに驚くだろ。ていうか言わなくていいからな」
「ふむ。村長の君よ。モンスターらは現状満足しておる。これ以上はまだ望んではおらんのだ。じっくり取り組むが良い」
「へいへい」
「前にも言いましたけど、結局トラドさんが冒険したいだけでしょ」
「そうなんだが、違うんだ。なんて言ったらいいんだぁ?皆がそれぞれ満足するポイントがあるのはいいんだが、俺がやりたかったのは違うんだ」
「どうなったらいいんですか?」
「うーん。もっとさ、大勢と関わってほしいんだ。今って大半が配達であったり、モンスターとの問題解決だろ?そうじゃなくて、ギルドは人の生活に溶け込んでいってほしい。そうなれば登録する者も増える」
「へー、ちゃん組織の事を考えていたんですね」
「当たり前だろ。ジョー、俺だって結構考えてるんだぞ?」
「しつれいしましたー」
「まったく。あーあ、小人さんなんとか言ってやってくれよ。俺だって頑張ってるんだぞーって。なんてな。はぁ」
「そうか」
「そう、ん?」
「あの、いま小人さんが喋ったような」
「俺もそんな気がしたけど」
「うむ。気のせいである」
「あー、僕は何も知らないでいた方よさそうですね」
「なんのことだ?」
「さあ?」
「小さな仕事ってなると請け負いたくなる奴が極端に減る。そうなると依頼も来なくなる。これをどうにか解消しないとな」
「メリットがあればいいんですよねぇ。うーん、そうだなぁ。あ、冒険だ」
「冒険?」
「そう。つまることろ皆さんは自分の出来ることで挑戦することが楽しいんですよね。自分を試したい」
「ざっくりいうとそうだな」
「挑戦したくなる。うん。掲示板を作りましょう」
「作るのは構わないが、今とどう違ってくるんだよ」
「今は窓口で仕事を紹介してもらう、もしくはこちらからお声がけします。掲示板に貼るとまず全員の目に触れます。それで依頼が受理されたらそうとわかるように印をつけるんです。最後に完了したら斜線を引いて終わったということを示します」
「ふーん、需要があることを示すのか?」
「はい。自分もって気持ちになりませんか?」
「どうだろう。大山羊はどう思う」
「いいかもしれん」
「他にやる奴がいるなら自分もってなるか。よし。やってみよう」
「あとランクごとにどんな仕事が受けられるかを見せるのもいいですね。そして各依頼にポイントを設定して、一定値貯まると試験を受ける基準を満たしていると判断、ランクを受ければ高収入が望めると視覚的にわかれば大きな仕事の合間に細かい仕事で稼ぎながら上を目指す。そんな流れが出来れば」
「制度が活きてくるか」
「僕も自分がどんな仕事が受けられるのかをいつでも確認できるのは助かると思います」
「あ、ああ、そうだな」
「ふむ。しかし遊びのようで堅物は好かんかもしれんな」
「該当する人達にはこちらからのフォローが必要ですね」
「よし。ジョー、その考えまとめておいてくれ」
「わかりました」
「ショウに伝えておくか。自慢できるといいな。掲示板じゃいまいちだし、何かいい言い方ないかな」
「ギルドと同じ感じでクエストとか」
「じゃあ、仮名でクエスト制度としよう。うまくいくといいなぁ」
「トラドさん」
「なんだ?まだ何かあるのか?」
「はい。ある程度仕事が片付きました。戦士の皆さんが構築したカリキュラムも大分まとまってきました」
「うむ。魔法の方も学者の君が上手く取りまとめておる」
「それで?」
「クエストの考えをまとめるのは明日までにやります」
「そんなに急がなくても」
「そしたら、トラドさんは用済みです」
「え」
「村長、手が空いたなら新人冒険者に冒険の流儀を教えてもらえませんか?」
「いいけど」
「じゃあ用済みなトラドさんは大冒険にでも行ってきてください」
「モンスターのことは三魔烏でなんとかしておこう」
「僕と冒険に行きましょう、トラドさん」
「おまえら」
「行きたかったんですよね?冒険」
「ああ、冒険の旅に出たい」
「うむ。人生とは冒険である」
「哲学したいんじゃねーよ。冒険ってのはスリルだ、そしてロマンだ!それがなきゃ冒険じゃない」
「僕もそう思います」
「ジニス、とっておきの場所がある。建築士ソノマのダンジョンだ。いくつか見つかっているが俺が知ってるのはその中でも最大級のダンジョンらしい」
「攻略はまだなんですよね?なんでわかるんです?」
「入口に規模がわかるように目印があるんだと。マルマルのよりも難解なダンジョンだ。ソノマのダンジョンは地下100階はあると言われてるが実際はわからない。なんせ見つけた者が少ないんだ。わくわくするだろ?ずっと行きたかったんだ。やっといける。ありがとうみんな!よぉーし、攻略するぞー!」
「はい!」
「ふふっ、2人ともお気をつけて、いってらっしゃい」




