08. かわいいエリクサーの変人よ
「全員、戦闘準備。おい勇者!突っ込むな!」
「あの子!ちょっといい加減にしなさい」
「うっせーな!こんなの適当にやってりゃ倒せるだろーが!ババァは黙ってろ!」
「おい、勇者くん、それは」
「フーン。いいわ。好きにしなさい」
「はっ、最初からそう言ってりゃいいんだ。おっしいくぜー!」
「えっと、ユミさん?なんで勇者くん狙ってるんです?」
「躾よ」
「その、ほどほどに」
「セツカちゃん。狩りはね、常に全力で取り組むものよ」
「そ、そうですか。えーっと。導きの勇者、矢に撃たれ、ここで眠る」
「終わったわね。じゃあ行きましょう」
「お、おう。皆、気をつけて行こう」
「何にかしら?」
「何ってユミ、も、もちろんモンスターだよ」
「よろしい」
「ユミさん、ババァ禁句。補足。死の覚悟すべし」
「セツカちゃんは何を書いてるのかな」
「い、いえ、えーと、その、戦いは常に死を覚悟すべし、と」
「そうね。戦いはいつどこから何が襲い来るかわからないもの。余計なこと書かないように気を付けないとね。生きて帰りましょ」
「ですね、わかりましたから矢をつがえようとしないでください」
「くそ、腕が、かなり痛い」
「そんな大怪我しちゃって。無茶ばかりするからよ。矢も刺さってたけど」
「うっせーな」
「腕触るわよ」
「何すんだ、やめろ」
「薬塗るのよ」
「お、おう。ならさっさとしろよ」
「あんたの召使じゃないんだぞ。ったくもー」
「おお、なんだこれ。治った、痛くない。どうなってんだ」
「靴擦れの薬よ」
「く、くつずれ?そんなものがこんなに効くのかよ」
「そうよ。知らなかったの?靴擦れの薬はとても効用が高いのよ」
「そうだったのか、勉強になった」
「ふっ、チョロい。ああ、ニーナちゃんっていつもこんな気分だったのか。なんていうか、複雑な気分ね。わたしって単純なのかな」
「みなさんってほんと強いんですね。モンスターと出くわしてもあっという間にやっつけちゃうんだもん」
「そうね。確かに実力者が揃ってる」
「最初はぎこちない連携だったけどな」
「戦っていく内に互いの動きや役割がわかってきたからな。皆息が合い始めた。セツカもだいぶ戦いを見れるようになってきている」
「ありがとうございます」
「ですが幼稚なやつが1人います」
「シロ、僕のことだろうか。頑張ったが上手く連携出来ていなかったか」
「クロじゃない。あの子よ」
「勇者か。そうか」
「クロってほんと変わってますね」
「お前ら悪口ばっか言うなよな。オレはお前らなんかいなくても1人で戦えるからな。群れるなんて弱い奴の戦い方だ」
「勇者くん。その発言が子供っぽいぞ」
「うっせーな」
「まーわからんでもないけどな。1人のが動きやすい。けど、面倒くさいから協力して片付けたくなるんだんよな」
「そうね。でも確かに勇者くんのやり方もありか。この程度なら各個撃破したほうが早く片付く。勇者様も楽勝なようだし」
「ふむ、その方法も検討しておこう。場面によっては有効となるかもしれない」
「だって。認めてもらえてよかったねー。ところであんたさっき苦戦してなかった?」
「うっせーな。ちょっと、あれだ、あそんでやってただけだ。弱すぎてな。手加減してたんだよ!うっせーな。ていうか矢が飛んできて」
「何かしら?」
「いえ、なんでも」
「手加減っていう割にめっちゃ気合はいってたような」
「うっせ」
「うっせーな。ははっ、うまく被ったな。お前ワンパターンだよなー。戦い方もそうだし、もっと周り見て習えよ」
「うっ、うぅせ、うるさ、がぁぁぁぁ!オレは、楽勝だぁぁぁぁぁぁ!」
「言葉が出ず混乱して弱さを認めちゃってますよ。アホですね」
「シロちゃん、そこまで言ったらかわいそうよ。アホなのは確かだけど」
「おまえらきらいだー!」
「急に年相応になりました。所詮子供ですね」
「シロ、その辺にしてやれよ。ほんとにかわいそうだから」
「みんな仲良くなー」
「ぐぎぃぃぃーーー!」
「これが連携か、僕もやりたい」
「勇者、連携に敗れる。哀れ」
「ふう、やっと森まで来たな。ん?セツカ、何やってるんだ?」
「靴擦れで痛いから薬塗ってるの」
「靴擦れか。あんたよく付いてきてくれてるから助かるよ。効くのか、それ」
「うん。すぐ治る」
「そりゃすごいな。ちょっと試しにおれのキズにも塗ってみていいか?」
「どぞ」
「おお。治った。これどこで手に入れんたんだ」
「友達がくれたの」
「友達が。ん?ていうか、これエリクサーじゃねえか!あんたの友達どっかの金持ちとか名の通った冒険家とかか」
「あの、わたし事務なんですけど、そんな大層な友達がいるわけないでしょ」
「じゃあどうやってこんなモノ手に入れたんだ。買うとしたらかなりの値段だぞ」
「バーゲンとか?」
「まぁなくはないが、だとしても高価なはずなんだけど」
「多分ニーナちゃんのことだから、靴擦れにこんな高価なもん使えるか!って戸惑うわたしを思い浮かべたら我慢できなくなって買っちゃったんだと思う」
「なんていうか、かわいい友人だな」
「そうね。ちなみに容姿もいいからモテモテ。本人は面倒くさいみたいだけど」
「しかし、エリクサーってそんな野暮ったい容器に入れんだろ、普通」
「こんな容器に入ってる靴ずれの薬が実は高価なものということに驚くわたし、っていうのがあの子のツボに入ったんだと」
「かわいいっていうか変人だな」