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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
2−2.魔人の務め

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76. 青い髪の少年

「どうすりゃいいんだ?設備を増築するための費用はどこから捻出する?戦士達から徴収する登録費等を増額させるか。そんな事したら彼らの生活を圧迫して足が遠のく。そうなったら元も子もない。また遺跡を、いやそれじゃ意味がない。この村のことはこの村の中で賄わないと。あーっもうどうすりゃいいんだぁー」

「大変だトラド!」

「なんだよ、俺の頭以上に大変な事なんてそうそうあるかよ」

「悪いが今すぐ来てくれ!」

「何があったんだ?」

「魔人だ、魔人が現れたんだ!」

「はぁ?それって俺のことだろ」

「いいから来い!」

「わかったよ。まったくさー、報告はちゃんと詳細がわかるように端的に言ってくれよ」

「言ったつもりだがな」


「見ろ」

「何これ。ランク試験A級ってまだ子供じゃないか!嘘だろ。実技、座学、魔法まで。何こいつ。後残すところ実践の査定だけか。おいチェスタ、この子まだいるか?」

「ほれ、あそこにいる」

「本当に子供だ。少年ジニス」

「こんなことが出来るのはお前くらいだろ?」

「あ、ああ。そうかもな」

「魔人だろ?」

「確かに魔人級だな」

「端的にわかるように言った通りだろ」

「おっしゃる通り」

「戦士の中でお前と同等なんてシユくらいだと思っていたが、それがまさかこんな小僧が来るなんてな」

「この子、本当に人間だよな?なんか最近見た目子供のエプロンつけた魔王とか色々居着いたおかげで常識がわからなくなってきた」

「恐らく人間だ。そのエプロン魔王が言っていたよ。面白そうな人間が来た、ってあいつ喜んでる」

「なるほど。何でもこなす、ねぇ。こいつは本物だな」

「ああ。間違いなく本物だ」

「本物の天才が来た」


「ではこちらが最終試験のご案内となります」

「ありがとうございます。この日まで村に滞在してもいいのでしょうか?」

「はい、もちろんです。ただ宿泊施設の部屋が全て埋まってしまっていまして」

「そうなんですね、わかりました」

「申し訳ありません」

「いえ、野宿は慣れていますから大丈夫です」

「でもこの周辺は罠が仕掛けてあるのであぶないですよ?」

「眠たくなるトラップですよね、知っています」

「ご存知でしたか。罠自体は危険性はないのですが無防備になってしまうので」

「問題ありません。試験の前日に使わせていただきましたし」

「使った?」

「はい、おかげでぐっすり眠ることができました」

「そ、そうですか」


「君がジニスだね」

「はい。こんにちは」

「ああ、こんにちは。俺はギルドの長トラドだ」

「この度は試験を受けさせてくださりありがとうございます」

「お、おお。君に色々質問させて欲しい。構わないかな?」

「はい。お答えできる限りご回答いたします」

「ははっ、こんなに礼儀正しい戦士は元騎士を含めても初めてだな」


「さて。君は若いのにとても優秀なようだね。簡単に生い立ちを教えてくれないか」

「わかりました。僕は城の南東にある村から来ました。両親は農家として生計をたてています。祖父は村長です。両親の手伝いをしたり祖父の家で本を読んだりしていたのですが、冒険譚を呼んで冒険家に憧れました。このギルドではそういった人たちを募集していると聞き、家族に相談の上来ました」

「えーっと、戦闘の訓練は?」

「実は戦いの経験はありません。身体を動かすのは田畑を耕したり山で駆け回るくらいしかしていません」

「ええーっと、学問は?」

「祖父は本が好きな人でして。読みはしないのですが集めるのが趣味なんです。だから本は沢山ありました」

「え、ええーっと、つまり独学であると。ま、魔法は?」

「友達と遊んでいる内に気づいたら使っていました」

「気づいたら、そうか。よくわかったよ」

「あの、僕は冒険家になれるでしょうか」

「冒険家か。なぁジニス、戦士じゃなくて冒険家になりたいのか?」

「はい。戦いは苦手です。それに僕が憧れているのは大冒険なんです!色んなところに行ってスリル満点の大冒険をしたいんです!」

「冒険をしたいか。わかった。まず、君はまだ若い」

「やはりだめですか」

「先走るな。安心しろ。今ギルドの制度に年齢を制限するものはない。歓迎するよ」

「やった!ありがとうございます!」

「だが子供だけで危険な場所に行くのは認められん」

「つまり誰か保護者となる方を同伴するならいいということですね?」

「そういうことだ。さて、試験は残り実践だったな」

「はい。先程案内をいただきました。後日試験を行うということです」

「知っているよ。なんせそれは俺が決めたことだからな」

「あの、A級からまずは受けたのですが、これは一番初め、初歩ですよね?やはり簡単な試験でしょうか」

「初歩?ははは。そうだな。初心者が外に出て戦うなんて危なすぎる」

「おいトラド、どうする気だ」

「試験は保護者同伴だ。というわけで俺が君の試験を担当する」

「まさかお前、ゴブリン達のようなことするつもりじゃないよな」

「まさか。ただこの子が危険なモンスターに襲われるより村長が加減しながら見極める方が安全だろう?」

「お前なぁ。よく言うぜ」

「というわけだ。ジニス、俺が君の力を見定める。それでいいかな?」

「はい!でもよろしいのでしょうか、村長のお手を煩わせるような事をしては行けないと父によく言われていました」

「気にするな。俺の気晴らしにもなる。嫌か?」

「いえ!そんなことありませんっ!どうぞよろしくお願いします!」

「ああ、よろしくな」


「ようデモロ」

「おや村長。君が来るなんて珍しいね。死を呼ぶ杏仁豆腐を試しに来たのかい?」

「それ、名前だけだよな?その辺で伸びてる戦士、無事だよな?」

「さあね。で?何しに来たの」

「ジニスのことはもう知っているな。あの子は俺が直に実力を測る。で、お前に審判を頼みたい」

「へー。中々面白そうなこと考えているみたいだね。いいよ。やってあげる。その代り、つまらなかったらあの子の魂をもらうからね。僕のおもちゃにする」

「さすが悪魔、趣味悪ぃな」

「どうするんだい?」

「やれやれ、それで構わん。楽しませてやるよ」

「じゃあ3人で審判をしたい」

「3人で?構わんが、誰がお望みだ」

「大山羊君。僕と気が会うし強者を知っている。あとリーメも。魔法の知識に長けているし大山羊君が熱くなって解説忘れちゃった時のために補佐でほしい」

「審判としては1人の扱いだな。あと1人は?」

「セツカだ」

「それは無理だな。今は城に向かっている」

「僕が連れ戻すさ。ぱっといってぱっと戻って来る」

「なぜ彼女なんだ?他にいないのか」

「あの子は目がとてもいい。きっと君たちが本気になってもその動きを認識するだろう。誰も言わないけどあれも」

「せっかく久々に友達と会うんだ。野暮なことはよせよ。もし連れてくるならこの話はなしだ」

「えー」

「他にいないのか」

「うーん、セツカの代わりねぇ」

「要は戦いを分析出来ればいいんだろ?だったらいい奴がいる」

「ふーん。じゃあ任せるよ。それ、誰なの?」

「元騎士団長だ」

「まぁ、だったらいいか」

「よし、決まりだな」

「盛り上がってくれるといいなぁ」


「えいっ!たぁっ!」

「いい動きですな。考えながら戦っているのがわかる」

「子供らしい単調な動きはしないね」

「うむ。相手がどう考えるかを見据えた、人間の思考を考慮した動きである。とても少年の、戦いに不慣れな者とは思えんのである。しかも戦いの中で熟達しておる。むふー。吾輩も熱くなってきたのである」

「ふふふ、見なよ周りの人間を。皆凝視している。自分達より格上の存在がまだあんな子供なんだ。あはは、本当に面白いことをしてくれるよ。トラドには感謝だね」

「戦士の皆さんには辛い現実ですねぇ。あの魔法も上手に使っています」

「そうですな。火で牽制しながら相手との距離を調整して、風で自らの動きを細やかにコントロールしている。そして隙を見ては大胆に斬りかかる。見事だ」

「うむ。中々に器用であるな」

「どうする?大山羊君の持ち味が持っていかれちゃうよ」

「ふむ。何も専売特許というわけではない。いいのである。彼が器用であっても吾輩が器用な大山羊さんであることは揺らがないのである」

「器用とはいえ、やはりまだまだ未熟ですな。手数が足りない。それを補おうとすると動きが乱雑になる。あれでは一太刀もトラドに当てることは出来ん」

「少年はより技を磨くべきであるな」

「いいなぁ、天才少年か。面白い題材を見つけちゃったな。ふふふ」

「あら、モンスターの皆さんは楽しそうですね。ふふっ、あそこのゴブリンさん達も楽しそう」

「うむ。ドラマである」

「魔王君を思い出すね」

「そうであるな。吾輩も戦いたくなってきたのである!」

「はっはっは。そうですな、あれを見て気が高ぶらん戦士はおるまい。私も闘争心を煽られるのは久しぶりです」

「じゃあ君達とも戦ってみるのもいいかもね。修行と称して。そうだ、彼を勇者にしてしまうのもいいか。ふふふ」

「修行。いい響きである。おお、燃える、心が燃える!真に器用とは如何なものか、その身をもって知らしめてくれよう!吾輩も加わるのである!」

「ちょ、ちょっと大山羊殿、待たれよ」

「ええーい、離せ!離すのだ、丸太の!」

「いやいや、だめですよ!」

「あらあら、盛り上がってますねぇ」

「この面子にして正解だったね。あはははは」


「よく動く。勘のいい子だ」

「この!たぁ!」

「だが隙ありだ」

「いてっ」

「よーし、ここまでだ」

「はぁはぁ、そんな、まだやれます」

「いや、ここまでだ」

「わかりました」

「戦いは嫌いか?」

「望んで行うことではありません」

「そうか」

「冒険者、失格でしょうか」

「いーや。むしろ合格だ」

「合格?試験合格ですか?」

「ああ。なぁジニス、俺も冒険が大好きだ。だから一緒に世界を見て回ろうぜ」

「はい!」

「よろしくな」


「ではこちらが合格証です」

「ありがとうございます。A級かぁ、これからもっともっと上を目指していくんですね」

「えーっと、トラドさん、どうお答えしたものか」

「そのままにしておこう。今はこの勘違いのままが面白い」

「もー。デモロ君みたいなことを」

「ジニス。これからどうするんだ?」

「一旦村に戻ります。合格したことを報告して、今後について家族と話し合ってきます」

「そうか」

「すぐ旅に出るのもいいですが、そう急ぐことでもありません」

「ははっ、大人より理性的だな。けどな、出来る時にやる方がいい時もあるぞ」

「見定めます」

「トラドさんは自分が一緒に冒険に出たいだけじゃないんですか?」

「ははは、ジョーにはお見通しか。けどまぁそうだな。俺にもやることがあるし、落ち着くまではいいか」

「村長は忙しいですよね、祖父も大変だといつも口にしています」

「まったくだよ。金のかかる話ばかり。問題が起これば対処しないといけないし」

「問題といえば、最近はモンスターとも話し合いで解決することも多くなりましたね」

「話し合いねぇ。一通り暴れてからなんだけどな」

「人とモンスターの共存。ふふっ、村長は大変ですね」

「はぁ。まぁこれも魔人の務めと思っているよ」


「あの、トラド村長は元近衛騎士と聞きました」

「そうだけど、何だ急に?ていうかジニス、村長はつけないでほしい」

「村長なのに?その、騎士はやはり退屈なのでしょうか」

「退屈だぞー。国を守る使命があるのはいいんだが、勝手に何かをすることが出来ないから歯痒い思いばかりする羽目になる」

「ですが好き勝手に動けば混乱を招き、場合によっては職権乱用となるケースも出るのではないですか?」

「お、おお。お前はなんでそんなことまで知ってるんだ」

「本で読みました」

「そ、そうか、本で。なるほど」

「この国は北と西と東をモンスター領に囲まれ、南は海。だから隣国から攻められることも無いというのも読んだことがあります。だから軍備の強化を後回しにしているのだと」

「なんでそこまで。まぁ、そうなんだよ。ぶっちゃけ騎士の出番ってあまりないんだよ。自他共に持て余している」

「でもトラドさん、それは平和ということでいいんじゃないですか?それにモンスターとの棲み分けが出来ているということは、そもそも共存がなされていたとも考えられますね」

「ジョー、まさにそうなんだよ。だが今、その均衡が揺らいでいる。だから調査してる騎士もいるんだが」

「渋い顔してますけど、問題でもあるんですか?」

「ない。ないけどある」

「どっちですか」

「近衛騎士に1人、周辺を見て回ってる奴がいてな。ヴァーレっていうんだが、城にいることが滅多にないから放浪騎士なんて呼ばれている」

「その人に何かあるんですね」

「ああ。そーなんだよ。俺がやりたかったことばかりやってるんだ。色んな所を回って問題があれば必要に応じて手を出す」

「嫉妬ですか」

「村長、嫉妬は醜いと本に書かれていました」

「だって。俺は面倒なお使いばっか行かされたんだぜ?あいつばっかり、ずるい」

「子供ね」

「子供ですね」

「あー、俺も冒険の旅に行きてーよー!」

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