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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
2−2.魔人の務め

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71. アサシンの夢

「うーん、この人も上手くいっていない。原因は何かしら?魔法が扱えるようになった人の共通点、上手く使えない人との違いは」

「お悩みであるか」

「あら大山羊さん。魔法を扱えるようになるために何が必要なのか、未だに手がかりがつかめないのです」

「うむ。大半の者は何となく使えるようになっておるからな」

「そう。まさにその点が一番の疑問です。なぜ使えるようになったのか。該当する人に伺ってみると実は皆さん同じことをおっしゃるのです。こうやれば使えると思った、と」

「理屈ではないのであるな。案外ぱーっとしている者の方が上手く出来るのかもしれん」

「いえ、知能の高さは関係していないのです。魔法使いの多くは教養のある方が多いのは事実ですが、そうではない人も決して少なくはありません」

「ふむ。モンスターは学のない者が大半だがその中で魔法を使う者は多くいる。むしろなぜ人間側は学のある者に集中しているのかが謎である」

「うーん、考えれば考えるほどわからなくなります。今に始まったことではありませんけれど」

「うむ。難題であるな」

「だからこそテーマとして面白いのです。大山羊さん、伝説の魔導師と呼ばれたあなたの知見をおかりできませんか?」

「うむ。よかろう。しかし伝説と呼ばれたのは過去のこと。実は吾輩、かつてのような力は無いのである」

「あら、何かあったのですか?」

「池の主にかじられてしまって力を失ってしまったのである。酷い話である」

「そうでしたの。それは大変でしたねぇ」

「うむ。大変である」

「でもあなたはとても優秀な魔法使いであることに変わりはありませんよ。ぜひお力添えを」

「うむ。任せたまえ。そういえばであるが、君の名はなんというのだ?」

「リーメです」

「魔法使いリーメ。よろしくである」

「はい、よろしくお願いします」


「ここか」

「なんだ、妙な顔して」

「どんな顔だよ。この村は以前にも来たことがある。あの時はセツカと一緒だったな。魔王を倒した後、あの山羊に」

「ああ腕をやられたって話しね。それを思い出してたのか。折角魔王倒したのにだらしねーよな」

「うるせーな。だったらダグ、お前があの山羊を始末してみせろよ」

「いいぜ。けどいいのか?復讐するって意気込んでたじゃないか」

「ふん。今更どうでもいいさ」

「へー。ヒカル君も大人になったねぇ」

「いちいちうるせーな。ほらさっさと行くぞ」

「へいへい。お目当ての魔法研究資料はどこかいね。まずは研究者っぽい奴を探してみるか」

「ああ。こんな田舎だし、王国から来た奴なんてすぐわかるだろ」

「だといいがな。ま、こんな所に来てくれたお陰で頂戴することも出来るわけだし、ありがたく頂こう。飛んで火にいるってやつだな」

「そうだな。それにしてもあの双子、いよいよ詰めの段階とか言ってたが、まだ必要な物があるのか?」

「さーな。興味本位じゃねーの?いつものことだろ」

「いい加減そんなことでお使いさせられる身にもなれってんだ」

「別にいーだろ。見つかんなきゃタダの散歩だ」

「嫌味か」

「皮肉がわかるようになったとはねぇ。ところでさっきから腕を気にしてるみたいだが、調子悪いのか?」

「いや、動かす分に違和感はない。だがなんだか妙な感じがする。ここに来てから、なんというか、何かに引き寄せられるような感覚がある」

「魔王の幽霊がおれの腕を返せーって言ってんのかもな」

「はっ。だったら返り討ちにしてやるさ。何度でも」

「たのもしーことで」

「ふん。おい、おしゃべりもそろそろ」

「そうだな」

「気をつけろよ。ここは腕利きの戦士が集まってる所だ。見つかったらさすがに無事じゃすまねーからな」

「おれよりお前だ。いつも見つかってんだろ。気をつけろよー」

「ちっ。今に見てろ」


「おい、あいつじゃないか?というか」

「なんで山羊まで同じ部屋にいるんだ」

「噂をすれば、だな。どうする?」

「しばらく様子を見よう」

「おっ、冷静な判断。本当に成長したなぁ」

「だからうるせーって」

「うむ。うるさいのである」

「なっ!」

「いきなりバレたか。やっぱりお前、潜入むいてないな」

「うるせーな。久しぶりだな山羊」

「うむ。誰だ?」

「名ばかりの魔王を倒した勇者だ。元だがな」

「ふむ。名ばかりの魔王を倒した元勇者か。たかが知れていそうであるな」

「あらまあ」

「このぉ、いい気になれるのは今の内だ。てめぇーは必ず俺が殺す」

「おいさっきと言ってることが違うじゃねーか」

「うむ。暇潰しにはなるであろう。して何用か」

「てめぇーをぶっ殺しに」

「あー、その人の研究資料を頂きに来た」

「それは困りますねぇ。どうしましょうか大山羊さん」

「ちぎってしまえばいい。戦士諸君を呼んできたまえ」

「ここで暴れられるとちょっと。あなた達もわざわざ来たのに研究資料が破損しては困るでしょう?」

「まーそれはそうだな」

「ではこうしましょう。ちょっと楽しい夢を見ていただきます。大山羊さん、彼らの意識をほんの少しでもいいから途切れさせられますか?」

「造作もない。ほれ、眠るがよい」

「くっ、なんだ、意識がとお、のく」


「おい、ダグ!しっかりしろ!」

「うむ?術にかからなかったか」

「あらまあ、どうしましょうか。うーん。ねえあなた、戦士の皆さんが集まってきたらあなたも大変でしょう?私達もあなたが危害を加えないというのなら何もしません。いかがでしょうか」

「はぁー。わかった。今回は引いてやる」

「うむ。早く行くがよい」

「ありがとう。どうぞお気をつけて」

「いつもいつも余裕振りやがって。おい起きろダグ!くそっ」


「引いてくれたか。危ないところであった」

「ええ。私を庇いながらでは戦えませんよね。彼はたしか悪王ヒカル。非常に危険な人物だと聞いています」

「そうか。古王を討ち名を馳せたか」

「それよりも悪行で有名なんです。特に魔法使いを襲うことが多いようで、恐らく先程のように研究成果を奪うためなのでしょう。私も気をつけるように言われていました」

「そうであるか。しかし警備がなっておらんのである」

「そうですねぇ。安心して眠れるように罠でもはっておきましょうか」

「いい考えである。だが村の者までかかってしまわないように気をつけねばな」

「ふふふ、村の人で効果の程を確かめるのもいいですね。データ収集にはもってこいです」

「うむ。その考え方、君はデモロ君に似ているのである」

「あらまあ」


「ここは、なんだこの風景?ここどこなんだ?ヒカルー!おいっ!ヒカルー!いないか。というか誰もいない。どうしたもんかな。やれやれ。はあ、ヒカルに関わると昔から面倒ごとばかり起きるな。トラドへの反発からこっちに来ちまったが、やっぱやめときゃよかったかなぁ。もうじき魔獣化の薬も出来る。マルマルの計画も大詰め。もう後には引けない。手を引くなら今か。おれは別にやりたいことなんて。ん?なんだ、何か動いたな」

「グオォォォォ」

「うわっ、なんだこのゴリラ!ってこっちくんな!あぶねーだろ」

「グオォォォォッ!」

「あぶねーって言ってんだろ!このぉ!」


「ったくよー、死んだか?いや、傷を負ってないな、なんなんだここは」

「キュッ」

「あん?今度は何だ」

「キュイーッ」

「うわぁー、くっ、何だこいつ顔に!離れ、なっ、なんだこいつ。やたらともふもふしてやがる。この野郎!手が離れねー!この、もふもふしやがって、もふもふしやがってぇー!」


「うへへ、も、もふもふしやがってー、こいつぅー」

「あん?大丈夫かこいつ」

「その内目を覚ますでしょう。まったく、逃がしてもらうなんて情けないですね」

「だったらお前が自分で行け」

「そ、それはちょっと。その、研究も最終段階ですし、ここを空けるわけには」

「ふん。大体研究者の顔写真くらい用意しとけってんだ」

「写真?」

「似顔絵だよ。あーあ、向こうみたいにデバイスでもありゃ楽なのに」

「何のことかわかりませんが似顔絵ですね。今後可能な限り用意しましょう」

「おい今後って、まだ必要な物があんのかよ。それ計画のために本当に必要なものなんだよな?」

「もちろんです。私が騙すような真似したことがありますか」

「むしろ無いと思ってんのか?」

「はい」

「ったく。いい性格してんな」

「ふふふーん。小さい頃からシロちゃんは性格のいい子ねー、とよく言われました」

「そーですか」

「はい。ヒカルも私を見習うといいですよ」

「ふへへ、か、かわいい、さいこー」

「はぁー、なんか疲れた」

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