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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
2−2.魔人の務め

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69. 大山羊さん

「ここが大山羊さんの部屋です」

「うむ。事務の君。世話になる」

「いえ、ここ無駄に広いからちょうどいいです。村長って言われたら大山羊さんが出てくださいね」

「む?経緯がわからんがよかろう」

「よし」

「しかしあまりここにはいないかもしれん」

「えー。そういえば普段何してるんです?」

「山羊の世話である」

「そういえば山羊だった。その子たちここに連れてきたらいいんじゃない?」

「吾輩にとってはどちらでも構わんがな」

「まぁ距離なんてあってないようなものですもんね」

「うむ。だが世話になる身。何か供物を献上するのも考えねばなるまい」

「供物。家賃ってことですよね?」

「うむ」

「別にいいのに。でも山羊がいたらミルクが簡単に手に入ってターナさんが喜ぶかも」

「では数匹連れて参ろう」

「その山羊って普通の山羊ですよね?もちろん」

「当然である」

「よかった。いきなり2足歩行のマッスルが数匹来たらと想うと」

「異な事を言う。そんな山羊がおるわけなかろう」


「お布団はここに」

「うむ。不要である」

「あー、干し草の方がいいってこと?」

「うむ。吾輩は自前の物がある故」

「枕が変わると、って奴ね」

「違うのである。よかろう。就寝前にしかやらんのであるがお見せしよう」

「何を?」

「うむ。吾輩の魔法の真髄である。見よ!モードチェェェンジッ!」

「うわっ、まぶしい」

「モードシープである」

「羊ね。ああ眠るから。っていうか種が変わってるけどいいの?」

「些事である」

「そうかなぁ」

「見たまえ。この毛並み。ウール100%である」

「でしょうね。おお、何この毛並み。ウールってふわふわしてるようで意外と硬い質感なのにめっちゃふわふわ。というかもこもこ」

「うむ。吾輩は毛並みも最上のモノ。カシミアである」

「もこもこー」

「そろそろ離れてほしい」

「やだ」

「困ったのである」


「大山羊くーん」

「おやデモロ君であるか。いかがした」

「実は相談があってね。あれ?君も人間の中で暮らすことにしたんだ」

「うむ。中々悪くない」

「でしょ。で、セツカはなんでくっついてるの?」

「もこもこ」

「なるほど」

「うむ。困っておる」

「ふーん。セツカはそのウールが欲しい。大山羊君は離れてほしい。どちらの要望も叶える答えがあるよ」

「素晴らしい。さすがデモロ君である」

「どうするんですか?」

「セツカ。ハサミの準備を」

「りょ!」

「だめである。その要望受け入れがたし。吾輩の毛を刈り取るのであれば決死の覚悟で望みたまえ」

「今の君じゃ僕には勝てないでしょ」

「うむ。であるならばやめてほしいと頼むのみ。お願い」

「やだ」

「メェー、実に困った」


「あら、大山羊さん。なんだか右袖のフォルムがいつもと違うようですけど何かあったんですか?」

「うむ。学者の君。悪魔である。2人の悪魔が吾輩の魂を刈り取ったのである」

「ああ、さっきセツカさんが持ってたのはあなたの。あの子が随分嬉しそうだから何かと思えば。もう1人というのは」

「悪魔である」

「悪魔?」

「うむ。この村に馴染めるか不安で一杯の我輩に奴らは容赦ない仕打ちをしたのだ。なんとむごい。であるからして逃げてきたのだ」

「あらまあ。酷いですね。それにしてもあなた不安だったのですか」

「共存など過去に例のないこと。吾輩やっていけるだろうか」

「伝説の魔導師の悩みって普通ねぇ」

「うむ。当然である」

「大丈夫ですよ」

「何を根拠に言っておるのだ」

「だってセツカさんと、それに私ともこうしてお話しているじゃありませんか。先日も会議に出て皆さんと意見を交換し合っていましたし。共存、問題なく出来ていたと思いますよ」

「そうであるか。その心根に吾輩、感動である」

「あらあら」

「皆の者とも少しず馴染めるよう努力してみせよう」

「ええ。その意気ですよ」


「であるからして吾輩は言ったのだ。デモロ君、その展開はイマイチであると!」

「それで魔王はなんて?」

「うむ。じゃあモンスターを一掃できるような武器を作ってみせる。そう言い飛び出して行った。しかし未だ完成はしておらんようだ」

「へぇ、なんかモンスターって道具作り上手いんだなぁ」

「ふっふっふ。吾輩は器用故」


「大山羊さんはあっという間に馴染んでますねぇ」

「そうだな。大山羊もなんだが、まさか戦士共もあっさり仲良くなるとは」

「あなたがいじめたゴブリンズもいい具合に溶け込んでいるようですよ」

「らしいな。あいつらが頑張ってるから周りの人間も負けじと張り切ってるみたいだ」

「思わぬ効果でしたね」

「こうなると知ってたらもっと早く受け入れてた。後は魔法だ」

「ええ。そろそろテストも終えようかと思います」

「じゃあ告知するか」

「はい」

「こっちが本命といきたいが、正直どうなるか読めん」

「成功を祈りましょう」

「祈りねぇ」


「おっおやっぎくーん」

「デモロ君とはしばらく口を聞かないのである」

「さっきのはごめんよー。ちょっとセツカの機嫌を取っておきたかったんだ」

「何故」

「ふふふ、面白いことをしようと思ってね。それで相談に来たんだよ。勇者の選別を行うんだ」

「ほう。面白そうであるな。相談とは?」

「この間、魔王城の方で家探ししてたんだよ。で、これまた懐かしい面白い物を見つけたからデモクに渡しに行ったんだけど。大山羊君はさ、むかーし魔王君のライバル選ぶために作った剣覚えてる?」

「うむ。勇者の剣であるな」

「それが王国の街にあってさ。なんとまだ機能してたんだ」

「なんと」

「だけど誰も抜いてくれないんだよ。真の力を未だに解放する場面がないのは僕らの本位ではない」

「うむ。まさしく。伝承に謳われる勇者の如き力を振るってほしいものである」

「でさ、池の彼もそろそろ目を覚ましそうだろ?だから彼と戦える者を選別するための剣にしようと思ってるんだ」

「うむ。よい考えである。新たなる勇者物語の誕生であるな」

「そ。でね、いいモデルの能力者がいるじゃない」

「うむ?誰だ?」

「ほら、さっきいた君のお気に入り」

「事務の君か」

「そう。セツカの持つ能力なら池の主に対応できる」

「なるほどそれで機嫌を。しかし対応出来ても対抗出来なければ勝負にならん」

「わかってるよ。だからモデルなんだ。彼女と同じ力を持つ者を選び出す仕組みを作りたいんだよ。どうかな?」

「りょ。任せたまえ」

「よーし。じゃあ上手いこといきそうならあの剣改良しに行こう」

「うむ」

「ふふふ、台本も考えておかないと」

「手に汗握る熱い展開を大いに期待している」

「うむ。大山羊君。期待していたまえ」

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