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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
1−4.ギルド、そしてモンスターパレード

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57. 姉妹

「入るわよ。アン、いるの?」

「勝手に入ってこないで」

「最近仕事を休みがちって聞いたわ。集中出来ていないって」

「誰が言いふらしてんのよ」

「お互い接点がある仕事なんだもの、どうしたって身内には聞こえてくるものよ」

「接点というほどあるわけじゃないでしょーに。メイはなんで来たのよ」

「あなたが心配だからに決まっているじゃない」

「氷結の魔女とは思えないセリフね」

「そうね」

「心配いらないわ。自分のことだからどうにかする」

「そうね。だけど心配するくらいいいでしょ。私達は姉妹なんだから」

「いいわ。気持ちはわかった。だからもう帰って」

「いやよ」

「ここは私の家なのよ、出ていって」

「もう少ししたら出ていくわ。何があったの?」

「別に、はぁ。もうこれじゃわがままな子供みたいじゃない」

「まさにそう思うわよ」

「なわけないでしょ!自分の家で1人になりたいって言ってるのにわがままに居座ってるのはメイなんだから」

「そうね。となりに座ってもいい?おねーちゃん」

「ったくもー!」

「ふふふ」


「モンスターの行軍が起こった時、諍いがあったのよ」

「西側よね。聞いたわ」

「そんな事知ってるのって、王子ね。あーいや。あの大臣か」

「そうよ」

「なるほどね。今度あったらあの髭むしり取ってやる」

「止めはしないけど。それでどうしたの」

「モンスターが争い出したの。それは仕方がない。だけど、だけど私はそれを止めることが出来なかった。言葉でも、力でも」

「それだって仕方がないじゃない」

「あいつらは力を絶対的な基準にしているのよ?なのに止まらなかったってことは私を弱いとみなしたのよ!」

「そんな事ないでしょ。あなたに勝てるモンスターなんてそうはいないもの」

「でも止まらなかった。それが悔しいのよ!トラドだったら違っていたはず、どうにもならないほどの力が目の前にあったら皆止まっていた。その力があればもっと穏やかな世界にすることが出来るはずなのに。私が普段やっていることって、何も、意味がないって。そう思えて。目障りだとも言われた。私は、私はどうしたら」

「あなたは魔王にでもなりたいの?アンが取り組んでいることは十分世のためになっているわ。交通課がいなかったら人間とモンスターが衝突している場面はもっと多いと思うもの」

「それはそうだけど」

「モンスターの力になりたいの?」

「というより、弱い立場を救いたいの」

「モンスターは弱くはないでしょ」

「モンスターだけじゃないのよ。人間だけでもない。世の中に存在する全てのものに可能な限り対等でいてほしい」

「素敵な理想だけど、それじゃあ世界は成り立たないわ。循環が壊れれば何処かで破綻が生じる。そうしたら今あるものや守ったものごと無くなってしまうかもしれないのよ?」

「だからといって上にいる奴らを野放しには出来ないじゃない。あいつらは挫折を知らないからどんな事で苦しんでいるか気づいていないし、気づいていてもそれを見て楽しむ奴さえいる」

「そうね」

「だからそんな奴らの上に立って挫折ってものを味あわせてやりたい。お前達は決して頂点ではないのだと知らしめてやりたい」

「それは理想の押し付けよ。だとしたら私もアンの敵なのかしら」

「場合によってはそうかもね」

「それは嫌よ、私はあなたと争いたくはない。と言っても小さい頃から争ったことないけど」

「そうだっけ。割と最近、優秀な弟子が出来たって煽られた覚えが」

「私の記憶にはないわ」

「都合のいい聡明な頭ね」

「ふふん、いいでしょ」


「アンは昔から苦手なことばかりやってたもの。それで私なんて眼中にないって感じだったじゃない。小さい頃は不思議で理解できなかったけれど、もしかして自分への挑戦なんじゃないかって気づいた時からあなたの姿が違って見えた」

「そうなの?」

「うん。だってポテンシャルなら私と同等なのよ?それこそ得意な力を使えばトラドだってそう容易く勝利することは出来ない。同じように氷を使っていればいいのに苦手な風ばっかり使ってる。それだって今じゃ十分に使いこなしてるのよ。才能に溺れず努力で事を成す人だなって、そう思っていた」

「まだまだよ」

「もぅ、またそうやって。体術だってそう。運動が特段得意だったわけじゃないのに努力して達人級になって」

「でも届かない」

「アン、あなたいつからそんな風に自分を卑下するようになったの?慢心しないため?十分な実力があるのに自分は大したことがないなんて、それにさえ叶わない人からすれば嫌味よ」

「以前ポールさんにも同じ事言われたな」

「そりゃそうよ。誰だって思うわよ」

「そっか」


「弟子といえばセツちゃんを弟子にしたのはなんで?」

「だってあの子、私の動きが見えてたのよ」

「それは凄いわね」

「でしょ?私は風を使って周囲の動きを察知しながら動くんだけど、あの子そんな力一切使わずにただ目で追ってたのよ。ちょっと信じられなかったくらい。それで、戦闘においてどれほど卓越した技や力があっても相手を捉えることができなければ勝つことは難しいでしょ。だから才能があるって思えたら試さずにはいられずに、ね」

「まぁ、もしかしたら大臣のように先見の力があって、無意識になんとなく感じてるのかもしれないけど」

「なるほどね。たしかにそうかも。あの子って色々なところで妙な事に巻き込まれるけど、次を知っているから無意識に予感に従ってそっちにいっちゃうとか」

「そうかもねぇ。逃げないで寄っていくところがあの子らしいわね。アン、まさかあの子に頂点を取らせるつもり?」

「うん。だってそうすれば私の理想が叶うかもしれないもの」

「もっと現実的なやり方で目指しなさいよ。仮に本当に世の中に平穏をもたらしたいと思うのなら組織だって動かないと無理よ」

「だからこそ交通課に」

「交通課で世直しなんて出来ないでしょ!治安組織というかそれはもう特殊部隊よ。やりたいことが沢山あるのはいいけれど一貫性を失うのはよくないわ」

「うーん。じゃあ影で悪人を成敗するなんてどう?」

「劇じゃないんだから」

「夜な夜な現れる覆面の戦士」

「やめなさい」

「あははっ、はぁ。話したことで楽になったわ。ありがと」

「気にしないで。何度も言うけれどあなたは大切な家族なのよ」

「うん。姉妹だものね」

「そうそう。いつまで経っても私のおねーちゃんなんだから」

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