52. モンスターバトル
「ウォォォォォォ!ツブセェェェ!」
「サッサトヤッチマエェー!」
「そんな奴に負けんじゃねぇぞー!」
「闘技場としか思えない凄い熱気ですね。やってるのは玉転がしだけど」
「うむ。誰しもが運動会を楽しみにしておったからな。おや、やはり南は優勢である。スーパーエースのフンコロガシボーイズは最早チートの極み」
「あ、ゾウが玉乗りしてる」
「うむ!北のゾウリ殿であるな。見事なり、天晴!」
「ゾウの玉乗りって改めて考えると凄まじい光景だ。でもこれ競技違いますね」
「うむ。勝てないからと試合を投げ売っておるのはよくない」
「この運動会は3種同時に行なってるんですね」
「うむ」
「で、いきなり連れてこられた私は何を?」
「うむ。実況中継である」
「あの、わたし事務なんですけど」
「うむ。ではこれを」
「なにこれ」
「音声拡張魔法がこもったマジでイカしたクリエイティブワンド、略してマイクである。吾輩の新作」
「ハイテクね」
「ふっふっふ。時代の先を行く。それが器用な大山羊さんの所以であるのだ」
「器用っていうか、まあ、器用ではあるのか」
「ささ、事務の君。皆の心に火をつけてくれたまえ」
「とっくに燃え盛ってますけどね。あー、あー、テステス。それでは皆さんわたし事務のセツカより各競技の実況をさせていただきます」
「うほぉぉぉぉー」
「イイゾニンゲンー」
「盛り上げろー!」
「イェーイ」
「さて現在行われている競技は、玉転がしと徒競走と、えーっとあれはなんですかね、実行委員長の大山羊さん」
「うむ。組体操である。争うばかりでは平等とは言えない故、個性をアピール出来る競技も盛り込んであるのだ」
「組体操はどうやって採点するんです?」
「感動」
「アバウトだな」
「おお!あれを見たまえ!」
「オオオ、ヒショウダ」
「素晴らしい!」
「カンドウダァ」
「ニワトリとペンギンによる飛翔ですか」
「うむ!飛べない鳥同士で行われるこの組技は空への憧れを込めた想いが伝わってくる。あの手とも呼べない手で相手を支えるペンギー殿!熱い、熱いのである!」
「ペンギンって鳥だっけ?ていうか実況のわたしいらないんじゃ」
「うむ。いや、他も解説してほしい」
「はーい。えっと?玉転がしは現在南方出身のフンコロガシボーイズの独壇場となっているようですね。他の地方も頑張っていただきたいところ」
「言ってくれんじゃぁねぇかー!」
「やってやれー!」
「さて、徒競走の方は、かなり激戦が繰り広げられているもよう」
「うむ。二足歩行するウマとチーターのモンスターは果たしてどちらが速いのか。気になる戦いですな」
「個人的にはゼブラ1号を走らせたいわね」
「持久力のウマゾウ殿か、はたまた俊敏性をイカしたチット殿か」
「どっちに転んでもおかしくないですね。第1コーナーは馬、第2コーナーがチーターで3が犬ですか」
「ケルベロスである」
「出る競技間違えてるんじゃないかってくらいやばいのが出ててるわね」
「うむ。その実力は伝説級」
「徒競走の?」
「主に殺傷性」
「他選手の命が脅かされないことを祈りながら今、1位がゴールイン!第3レースの勝者は、人間?」
「あれは西のデモロ君である。足の早さは天下一」
「個性が強すぎる面子に埋もれて気づかなかったけど、ああいうのもいるのね」
「うむ。人間に見えるが悪魔である」
「かつて見たことのなかった凄いのが沢山でてきてますね」
「それだけこの運動会は皆が楽しみしておったのだ」
「なぜ運動会にそこまで」
「玉転がしは圧勝で終わったか。むぅ、東軍は何を。これでは吾輩のお財布が」
「えー、玉転がしの次は騎馬戦かな。こういうのって最後なんじゃ」
「なぜであるか」
「だってこう、一番盛り上がるからってそうか。組体操で盛り上がるんだから関係ないか」
「む」
「ミロ、アレハニシノケンタウロス、キバチャンダ」
「ソンザイガキバトカズルイダロー」
「オイー」
「騎馬戦に騎馬そのものがでてくるとは」
「真打ち登場である」
「あれはいいのか」
「問題ない。むしろ燃えておる」
「アシハマカセロー」
「レッセイカラノギャクテンゲキヲミセテヤルゼェェェェェ」
「キシュノオレハアレトトタタカウノカ。ナゼイツモ」
「あ、東軍に知ってる子がいる。がんばれー。ん?騎馬って4人組でやるのでは」
「うむ。彼らは前後2人で馬をやっておるようだな」
「へー、大変ね」
「サンミイッタイノトリオパワーヲミセテヤルゼー」
「タカガヒトリタリナイダケダ、ヤッテヤル」
「モウコノトリオ、ヌケヨウカナ」
「おっと騎馬戦のゴングが鳴り響きました!乱立する騎馬、果たして試合の結果は!」
「うむ?」
「あーっと!キバちゃんが鳥にあっけなく鉢巻取られてしまっている!優勝候補が早くも脱落だぁ!番狂せのこの展開、次はどうなるぅ!ルールが適応できな行為って反則なのでは」
「オイー、トブトカズルイダロー」
「レッセイトカイウハナシジャナイジャン」
「アレヲドウシロト」
「呆然と立ち尽くす一同!しかしその鳥も爬虫類系のギラギラした目に追われています!試合の結果はいかに!」
「カオスである」
「盛り上がっているな」
「ポッ。純粋に期待されていたからな」
「それで、古株も出てくるという話だったがなるほど。たしかに伝説として語り継がれているような存在がちらほらいるな」
「その通り。お前が希望するような者はいたかッポ」
「ああ。あれならトラドでさえ敵わんかもな」
「人間の中にいるバケモノか」
「そうだ。あいつの対抗馬がいないことには俺の目指す世界は成り立たん」
「マルマル、お前は何故」
「バランスだ。世界に必要なのはただそれだけだ」
「そうか。気になる者がいるなら夜会にも呼んでおこう。そこで話すといい」
「助かる」
「お前の協力には感謝している。おかげで私の企みは上手くいった。ポッポッポッ」
「なに、この程度大したことではない」
「見ろ、素晴らしい運動会だ!」
「あ、ああ、よくわからんが満足してもらえてよかったよ」
「ところであの人間、妙な気配がする」
「セツカか。あの子はどこにでも出てくるな。気配というのは?」
「以前感じたことのある、この気配。もっと近くでないとわからん」
「ふむ、彼女も夜会に呼ぶか?」
「いやいい。流石に人間がいては皆和めんだろう」
「な、和む?あー、夜会というより二次会みたいなものか。ははは、モンスターは面白いな」
「そうだろう。皆個性豊かなのだ。人間などつまらん存在に比べればな。ポッポッポッ」
「そういえば事務の君」
「うぉぉぉ!引け引けぇー!東軍負けるなー!」
「事務の君」
「そんな奴らぶっ飛ばせー!ん?なんですか?綱引きが今いいところなんですけど」
「うむ。思ったより熱中していて何より。ちょっとどん引きである。今夜の夜会に君も出たまえ」
「わたしが行っていいんですか?」
「うむ。打ち上げ会だから実況中継してくれた君にもぜひ参加してほしい」
「いいですけど、美味しいご飯ってあるんですよね。人間が食べられる」
「安心したまえ。吾輩が選別した料理人の腕は人間をも唸らすものである」
「食べられなくて唸ることがないのを祈るばかりね」




