04. 旅するみんなのこと
「出発してからもう数日ね」
「はぁ、さすがに歩きっぱなし、疲れます」
「慣れてないとそうよね。けどそろそろモンスターも姿を見せる地域だから気をつけてね」
「はい」
「今のところはまだ人の生活圏内だけど油断はできないわ」
「そうなんだ。ふー、今のうちにできることってあるかな。あ、そうだ。忘れてたけど気晴らしにもらった資料読んでみよっと」
「資料?」
「はい。まずは勇者くん、13才。若っ!導きにより見出された魔王を滅ぼす存在」
「ないそれ」
「今回のメンバーの資料」
「そんな設定資料集みたいなもの渡されてたのか」
「うん。集合場所に着いてから読めって指示されてて。でもすぐ移動始めたから読むの忘れてました」
「そっか。それにしても導きねぇ」
「胡散臭いですね」
「だよね。どんな導きだったんだろ?」
「書いてある。えーと、高い魔力。天才的な魔法の素養。任務を遂行する忍耐力。小柄。華奢な感じ。でもスポーツ万能。十代。意外とお茶目なところがあります」
「導きっていうか特徴じゃん。しかも最後の方自己紹介みたいになってるけど、これでどうやって見つけたのかしら」
「そうですね。ふーん、あの子意外と茶目っ気があるのねぇ」
「ああ、ツンデレみたいな」
「そうかも。ちょっとかわいいとこあるし」
「ふふ。すぐムキになるから、からかっちゃいたくなっちゃうのよね」
「しかしこの特徴、どこかで。いや、まさかね」
「どうかしたの?」
「ううん、なんでもないです。ちょっと知り合いを思い出しただけ」
「まぁ割といるというか、ほんとこれどうやってあの子を特定したんだろ。ダイジョブかなぁ」
「うーん、だけどもしそうなら。派遣事務で査定に同行したつもりが魔王倒して最強になっちゃった件、とかになってたわね。わたしたまに出てくるドジっ子な友達役じゃん。しかしあの子ならありうるな」
「何言ってんの」
「いえ、ちょっと友人の設定に一文書き加えておこうかと」
「マジで何言ってんの。とりあえず転ばないように歩きなさいよ」
「はーい」
「遠足かよ。おいお前。さっさと歩け」
「受刑者みたいにいうな」
「のろいのは事実だろ」
「あのね、わたしは皆みたいに運動に慣れてないの。ったく、ちょっといいかな勇者くん。そんなに口が悪いと敵しかできないぞ」
「うっせーな。だったら全部ぶった斬ってやる」
「やれやれ。もうちょっと社交的になりなさいよ」
「知るかそんなもん。意味わかんねーこといってんじゃねえよ。オレは捨て子で親がいねーんだ、真っ当な教育受けてる奴と一緒にすんな」
「そうだったんだ」
「あら、そんなの普通じゃない」
「え?」
「わたし親に売られたわよ」
「おれは両親アサシン、んで恨まれて目の前で爆死したぜ」
「マルマルさんは親に殺されそうになって返り討ちにしたのが戦士になったきっかけって聞いたことある。親いないくらいなら普通じゃないかな」
「そうだな。たしか孤児院に引き取られたんだろ?ラッキーじゃねーか」
「ぅっせーな、べつにそんなんどーでもいいし、べつに、べつに、うっせーな」
「かわいそうに。生い立ちより今の状況に同情しちゃったわ」
「うっせーな、ぁんだよみんなして」
「そういえば魔法使いの2人は?ほとんど話さないけど、なんでこの遠征に?」
「僕達は禁術を研究し」
「ちょっとカクロカ、言っちゃだめでしょそれ」
「え、ああごめん」
「気をつけてよ、危険な奴って思われたら居づらくなっちゃうでしょ。えーと、その、あれです、わたし達ちょっと人体実験しただけで、それで怒られちゃっただけなんです。あはは。というわけで罰としてお手伝いに来ました」
「そ、そう、それはたいへんでしたね。ははは。ユミさん、この2人まともに見えたのにかなりサイコな人ですね。人体実験しておこられちゃった、てへぺろ、で済ますとかやばいでしょ」
「セツカちゃん。あの子達はきっと、切り捨てていい優秀な人材として選ばれたのよ」
「切り捨ててもいい、優秀な人材」
「あ、別にあなたのこと言ってるわけじゃないのよ?あの子達のことだからね?」
「うん」
「大丈夫だから、ちゃんと守ってあげるから、ね?」
「うん」