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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
1−3.セツカさんの日常

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38. テッペン目指して

「はーい、今日の授業はここまでよー」

「メイ先生ありがとうございましたー」

「ふふふ、セツー、見てみてー」

「おー、先生みたいな氷ね。冷たいから頬にくっつけないで」

「あんなに危ない所に行くなら身を守る方法は身につけないと。ていうかセツって今までどうやって生き延びてきたんだ」

「危ない!って思ったら逃げてた」

「野生の勘か」

「熟練の、いややっぱなし。えーっと」

「もう認めたら?」

「何をかな、ニーナくん」

「鍛え抜かれた熟練の戦士だと」

「見よ!このスレンダーな腕」

「漢気感じる厳つい背中!」

「相手が怯むちょっとすごい眼力!」

「いま、事務最強のゴリラがここに!」

「ちょっと待て。なぜゴリラ。てっきり勇者とくると思ったのに」

「力こそパワー!って感じがセツにぴったりかと」

「せっかくのったのにイマイチだったわね」

「えー」

「ニーナちゃんはメイ先生から教わったの?」

「うん。仕事の後にちょっと通ってたのだ」

「へー知らんかった」

「ニーナちゃんは優秀だから教えやすくて嬉しいわ」

「えへへー」

「先生、わたしも何か教えて欲しいです」

「そうねぇ、何がいいかしら」

「ふふーん、セツにはこのメニューをこなしてもらおうか」

「何それ。腕立て1000回、町内ランニング10周、素振り1000回。王子を罵る。過酷ね」

「まだよ。それが毎日のトレーニング。それに加えて依頼を受けたら最後に、この依頼で悪い評価をされたくなくばわたしを倒すがよい、と言って戦士たちの前に立ちはだかるのだ」

「できるか!」

「いいわね」

「ちょっ、メ、メイ先生?冗談ですよね?」

「あらいいじゃない。強くなりたいんでしょ?」

「そんなこと言った覚えは全くないのですが」

「あら、私にどうしたらいいかは聞いたでしょ。ならそのメニューをこなしてもらおうかしら」

「かしらー。うふふ」

「あー!そういえば王子に頼まれたことがあ」

「そんなもの後でいいわ」

「そんなもの、ですか」

「ええ」

「と、とりあえず失礼しますー!」

「あはは。もーセツったら、冗談なのに。ふふっ」

「あら、冗談なんかじゃないわよ?」

「え」


「あー殺されるかと思ったぁ。みんなが恐れた理由がよくわかったわ。ふぅ、防衛手段かぁ。逃げることができればいいのよね。だとしたら素早く動いて迫られても上手に受け流すような感じよね。バリア張っても大山羊さんみたいに壊されちゃうこともあるし、でも避けれなかったらだめか。難しいなー。誰かに聞いてみようかな。トラドさんとか、でもあの人ってスペックが高すぎるから誰かに教えるって向いてなさそう。どこにいるか知らないし。ターナさんたちなら色々教えてもらえるかも、ってあの村遠いな」


「うーん。理想的な姿はさっきからちらついてるけど、メイさん見た後だからな。双子だし、同じだったらアウトよね。でもまぁちょっと聞きに行けばいいか。危険だ!と感じたらさっきみたいにすぐ逃げよう。気取られないように気をつけて。よーし、期待せずに行ってみよーっと」


「こんにちはー」

「あら、セツちゃんじゃない。どうしたの?仕事の依頼はしてなかったはずだけど」

「はい、今日は個人的なお願いでアンさんにご相談というかお話だけを聞きたくて」

「なーに?」

「アンさんって素早くて受け流すような動きをするじゃないですか。それってどうやって身につけたのかなぁっていう話だけを」

「なるほど。つまり強くなりたいのね」

「違います」

「いいわ。教えてあげる」

「それは嬉しいのですがまず話を聞きたくて」

「わかったわ。じゃあちょっと待っててもらえる?やることが出来たからそれを終わらせてくる」

「はい、ありがとうございます」

「いいのよ。ふふふ」

「大丈夫かな」


「お待たせー」

「よろしくです」

「じゃあカフェにでも行きましょうか。年上として奢ってあげる」

「そんなわるいですよ、わたしから来たんだし」

「いいのよ。じゃ行きましょ」

「あ、はい」


「ここ最近オープンしたのよ」

「へー、人気あるんですか?」

「いいえ、イマイチよ」

「そう、ですか」

「味が微妙なのよね。でもだからいいのよ」

「なんで?」

「まずいってほどじゃないほどほどの味で客も少ないからゆっくりできるのよ」

「なるほど。それはいいですね」

「そ。実は私には妹がいてね、双子なんだけど、その子とたまに一緒に過ごす時に来てるのよ」

「あ、ああ、そうなんですか。へー、仲いいんですね」

「そうなのかな。カフェで一緒に、なんて最近のことなのよ」

「何かきっかけでもあったんですか?」

「うん。最近あの子の元に生徒が2人来るようになったらしくって。その子達は仲がよくて姉妹みたいだからつい私のことを思い出したみたい」

「姉妹みたいですか」

「そう言ってたわ。私もね、セツちゃんを見てるとなんだか妹みたいであの子を思い浮かべることがあったの」

「さすが双子ですね」

「ええ。あ、こっちよー」

「え?パンダ3号、なぜここに。あーどうも、ってなぜこっちに座るんです?ちょっと狭いんだけど。パンダの毛ってゴワゴワしててちょっと痛いわね」

「それでねセツちゃん」

「はい」

「メイから色々聞いててあの子は弟子を取ったそうなのよ。それも優秀な」

「はあ、あの、そろそろお暇しようかと、パンダ3、ちょっとどいてもらえるかな」

「メイったら嬉しそーに自慢してくるのよ。それを見てたら私も欲しくなったの」

「そうですかー、じゃ、今日はありがとうござ、ちょっとパンダ3マジどいてほしいんだけど。これ以上ここにいたらテッペン取りにいかされちゃう」

「欲しくなったのよ」

「えーっとお子さんとかですね。いいですよねー子供がいると賑やかで」

「ええそう、弟子が欲しいの。じゃー行きますか」

「だからどいてってこの白黒熊!あああ、いや、いやよ!わたしは強くなりたいわけじゃないんです!」

「よぉぉぉし、最強目指すわよ!メイなんて眼中にない、打倒トラドだ!」

「無理に決まってんでしょ!」

「やればできる。パンダ3号、絶対逃しちゃダメだからね。んー、最強の戦士。たのしみー」

「あの、わたし事務なんですけどぉぉぉぉぉぉ!」

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