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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
1−3.セツカさんの日常

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37. 王子だって男子だもの

「王子。報告に参りました」

「ああ。重大な情報を得たとのことでだったな。報告しろ」

「はい。モンスターらが少数で集まり何かを作成しているところを発見し、その、近寄り確認したところ戰装束を作成していることが判明しました。また彼らの会話から戦を起こす旨の内容を聞き取りました。以上となります」

「そうか。わかった」

「大体こちらで把握していた内容と一致ですな」

「そうだな。さてどうしたものか」


「そういえばセツカ、お前は何か気づいたか?」

「わたしが気付いたというか直接あの子たちに」

「あああ、セツカくんそれは」

「なんだ、構わんから話せ」

「モンスターたちに直接聞いたんです。何してるのか」

「お、お前は、あーもう、まったく!いくらなんでも危険だろ!何のために戦士達に調査させていると思ってるんだ!」

「だって悪い感じしなかったし。楽しそうだったし」

「楽しそうって、はぁー。とりあえず無事だったから良かったもののモンスターは危険な奴が多いんだ。気安く近づくな」

「でも魔王さんも大山羊さんともふつーに話したし」

「セツカ殿、あなたが出会った者は特殊な存在です。あなたと出会ったモンスターは少数派なのですよ」

「それはそうですけど、でもあの子たちは実際魔王さんのこと好きで」

「とにかく今後はモンスターに近づくような行動は慎め」

「わかりました」

「それでセツカ殿が気になったことは何かありましたか?」

「いえ、さっきの報告通りです」

「そうか。今日のところは一旦下がれ。何か確認をすることがあればまた呼び出すことになる。よろしくな」

「はーい。では失礼します」


「まったく何が魔王を好きだと言ってただ。そんなことで危険かどうかなんて、ん?魔王を、好き?強さで序列を決めるモンスターが人間に負けた魔王を快く思っている。おい!待てセツカ」

「な、なんでしょう」

「そいつらが言ったことを全て話せ。可能な限り一字一句思い出せ」

「えっと、たしか」


「なるほど。さっき聞いたことと変わらんな」

「王子、何が気になったのですかな」

「わからん。だがセツカと話したというモンスターの考え方がかつて聞いたものと異なるのでな」

「かつて聞いた、ですか」

「あ、ああ。そんな話を聞く機会があったのだ」

「ふむ、そうですか。それで?」

「ああ、人間に負けた魔王をモンスターらが好むというのが解せんのだ。奴らは負けたものを見限る。何かおかしい。いや、だとするなら彼はもしかして」

「王子どうなさった」

「なんでもない。セツカ。もう一度だけ聞くぞ。何を話した。何を隠している」

「別に隠してなんかないですよ」

「嘘だな。顔に出していないつもりなんだろうがいつもより少し勢いに欠ける。姿勢も重心が安定していない。こんな立場で大勢の人間と相対してきたんだ。なめるな」

「その」

「セツカ殿、話しなさい」

「わかりました。でも絶対ここだけの話にしてくださいよ」

「内容による」

「そうですか。あの子たちは魔王さんを尊敬してて、その戦っていうのも魔王の弔いって言ってた。それだけです」

「弔いですか、これは戦の準備をした方がいいのかもしれませんなぁ。しかし特段隠す必要もないように思われますが。王子?」

「ふふふ、そうか弔いか。ははは」

「ショウ王子?」

「いや気にするな。話はわかった。下がっていいぞ」

「はい、じゃあ、失礼します」


「ニーナ報告にあがりました」

「待っていたぞ。お前たちも重要な情報があるとのことだな。ブルバラ、聞かせろ」

「はい。調査中不審な存在を確認。その姿を視認したのですがモンスターではなく人間でした」

「なに?それが重要なことなのか」

「はい。指名手配中のダグでした」

「なるほどな。何をしていた」

「わかりません。何か探している、もしくは採取しているような様子でしたがこちらに気づき逃走。相手は腕利きのアサシンということもあり捕えることは出来ませんでした」

「わかった。他には何かあるか?」

「ほ、他にですか、ええ、はい。その後モンスターには出くわしましたが知性はあまり高くなく、今回の調査対象には該当しない者と思われましたが、襲いかかってきましたので、その、ニーナさんの協力も、あり、撃退に成功。治安維持に貢献した次第です」

「内容はわかったが、どうかしたのか?お前にしてはやけに歯切れが悪いぞ」

「いえいえ!なにもありません、はは」

「そうか、ならまぁいいが」

「あはは、ではこれで」

「まて。ニーナからも聞きたい」

「わたしからは特に何もありません」

「ふーん、わかった。では下がっていいぞ」

「はい。失礼します」


「どう思う?」

「ダグの件は有用ですな。彼らが潜伏して今回初の報告です。活動範囲がわかっただけでも収穫といえますな」

「そうだな。暗殺者ダグ。目立たないがかなり危険な人物だ。警戒を強めねばならんな」

「モンスターの動きに関連があるのかも調査いたしましょう」

「ああ。勇者は魔王を討った者だからな。もしかすると従うモンスターもいるかもしれん」

「弔いとは真逆の反応ですな。何か見当がついておられるので?」

「ただの勘だ」

「そうですか」

「しかし、手配犯が勇者というのもおかしなものだ。名を変えるか」

「ヒカルと名乗っているそうです。今後はその名で呼びましょうか」

「うーむ。同名の者がいた場合わかりづらい。いっそ奴らにも二つ名を与えるか」

「ユミ殿のようにですか」

「ああ。ダグとマルマルはそのままでいいとして、カクロカサシロサはどうするか。何か特徴はあるか?」

「カクロカは冷徹と感じるほど感情の起伏がない子でした。サシロサは、あの子は元々医療関係の業務を担っていたのですがカクロカに感化され現在のような非道な思考に変わっていったようです。この子達は双子でどちらも頭のいい子で将来を有望されておりましたな」

「お前も気にかけていたな。医療関係者ね」

「ええ、あの子達の両親はともに元騎士でしたが任務の途中で父親は命を落とし母親は重症で戻ったとか。サシロサは母のためにと医術を学び面倒を見ていたそうですが、その甲斐なく母親も他界したと聞いております」

「献身的なやつだったのか。カクロカは残った最後の家族、さぞ大切だろうな」

「おそらくそれが今に至る要因となったのでしょうなぁ」

「よし決めた。悪魔公カクロカ、堕天使サシロサ。ふふ、どうだいいだろう?」

「王子はなんというか」

「なんだ、だめか」

「いえいえ、よろしいのではないでしょうか。あとはヒカルですな」

「ヒカルか。やつがいなければこいつらは今頃捕えられていたはずだ。つまり元凶。よし。悪王ヒカル、これで決まりだ」

「わかりました。手配書は更新いたしましょう」

「任せた」

「確認ですが、暗殺者ダグ、大怪盗マルマル、悪魔公カクロカ、堕天使サシロサ、悪王ヒカル、そして」

「大魔王ユミア」

「ふむ。では手配いたします。王子、楽しんでおられますな?」

「まさか」

「やれやれ」


「ところで気になっていたんだが、ブルバラはどうかしたのか?」

「さて、私も気にはなりましたがわかりませんな」

「何だったんだろうな。ニーナのことを言おうとしたところで言い淀んでいたからてっきりあいつも何かしたのかと思ったのだが」

「そうですな。しかしあの2人は意思が強く聞き出すのは難しかったでしょう」

「俺もそう思う。だから今回は見逃したが、これもいずれ確認しよう」

「また案件が増えますな。モンスターに悪王一味」

「なーに、大して問題ではないさ」

「おや、最近やけにご機嫌ですな」

「ちょっとな。そのうち伝えるから待っていろ。朗報だ」

「おやおや、それは楽しみですな。ホッホッホ」

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