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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
1−3.セツカさんの日常

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36. 暗躍するモンスター

「セツカくん。あれを見たまえ」

「モンスターですね。やっぱりなにか作ってますよ。なんだろ、あまり大きくはなさそうだけど。どうしますか?」

「ふーむ、そうだな。例えば人手があれば見張りをつけその間に別の場所へ向けて調査を進め、もしモンスターを新たに見つければバッサリ。何を作っていたか確認、といくのだがな」

「わたし見てましょうか?」

「いやいや。きみに何かあっては王子が怒る」

「まぁせっかく勢いのってきた事業だからね、今のところわたしとニーナちゃんしか査定する人いないし。そういえば収益ってどうなってるのかしら」

「さてな。王子が怒るのはそこではないのだが、とりあえず今確実にできることといえばこのまま観察を続けることだ。持久戦になる。覚悟したまえ」

「はーい」

「きみはなんだか随分慣れているな。ふむ、なるほど。きみの力を欲した王子の気持ちもわかろうというものだ。さぞ名のある師の元で教えを乞うたに違いない。きみはよき戦士であるな」

「なぜみんなわたしを戦士と呼ぶのか。あの、わたし事務なんですけど。教えといえば少し前から王子の紹介でメイ先生のもとで学んでますね」

「メ、メイだと、まさかメイライか。王子の紹介でといえばそうであるよな。きみは、そうか。どうりで」

「なんです?」

「いや。気にしないでくれたま、ください」

「なんなの?」


「モンスターいませんね」

「そうですね。私達はハズレだったのかもしれません」

「この間みたいにその辺にいたらいいんですけど」

「そうですね。おや?ニーナさん。あそこ、何か動いていませんか」

「うーん、よく見えないけど何かいますね。確かに動いてる」

「近づいてみましょう」

「近づいて大丈夫かな」

「ご安心ください。前回同様あなたのことは必ず守ります」

「ふふ、ブルバラさんのことは信頼してますからそこは心配してないですよ」

「そう言っていただけて嬉しいです。では行きましょうか。なんだか姫を守る騎士のようですね」

「それ悪くないですね。でもわたしも簡単な自衛手段を身に着けたんですよ」

「ほう、それは素晴らしい。どのような技を身に着けたのですか?」

「えへへ、氷の魔法なんです」

「氷ですか、いいですね。氷の魔法は日常で案外重宝するものです。水や食料の保存。夏場は涼しく。うっ」

「どうしたんですか」

「いえ、ちょっと昔のトラウマを思い出してしまいまして」

「ブルバラさんにもそういったことあるんですね」

「はい、私も人間ですから」

「なんだかすみません」

「いえ気にしないでください。もう関わりのないことですから。ですが、そうだな。もしよければ聞いてもらえますか?克服する機会になるかもしれません」

「いいですよ、ぜひ聞かせてください」

「ありがとう。実は、私はかつては騎士だったのです」

「それ大臣から聞いちゃいました。でも一緒にいるときにもなんとなくそうかなぁって」

「やはりわかりますよね。それでトラウマなのですが、あの頃王国で教鞭をとられていた方の指導が、お、恐ろしく。熱血というのでしょうか、普段は熱い方なのですがお怒りになると、それは、もう。その方は時間さえも凍ると言われた程の強力な氷魔法使いでして、今でも思い出すだけで背筋が凍る心地がします」

「へー、ブルバラさんでさえそこまで。やっぱりすごいんだなぁ」

「え?心当たりがあるんですか?」

「うふふ、思い過ごしですよ」

「そ、そうですか。ニーナさんは、確かに気が合いそうですね。はぁ、やっぱり克服するのは難しそうね」


「ヒヒヒ。ウマクイッタ」

「オオ。ソレナラ」

「ゲヒヒヒヒ」

「遠目にも楽しそうですね」

「うむ」

「あの、何を作ってるか聞いてきたほうが早いのではないですか?」

「おいおい、そんな事できたら苦労などしないよ」

「わたし聞いてみます」

「え、ちょっと、待ちたまえ」


「あのー、何作ってるんですか?」

「ギャ!ナンダコイツ」

「ニンゲンジャネ?」

「ナンデコンナニナレナレシインダ」

「ジャマスルナ」

「ごめんなさい、なんだか楽しそうだったからつい」

「へへへ」

「タノシイゾ」

「ゲヘヘノヘ」

「で、何作ってるの?」

「イクサショウゾクダ」

「戦装束?戦うの?」

「アア。チカヂカ、オオキナタタカイガアル」

「ミナ、ソレニソナエテル」

「そうなんだー、大変ね。もしかして魔王と戦うとか」

「マオウハシンダ」

「ソノトムライデモアル。オレタチ、マオウヲソンケイシテタ」

「オイ、コノコトハナイショダゾ。ヨワイヤツヲソンケイシテルコトシラレタラ」

「キットイジメラレル」

「うん、わかった。魔王さんのこと好きなのね。なんでかちょっと嬉しい。教えてくれてありがと。じゃあね。あ、このあたりに人間がうろついてるから気をつけてね」

「アア。ジャアナ」


「オイ。ミノガシテヨカッタノカ?」

「アア。アレガオオヤギガイッテイタ、ジムノキミダ」

「アイツガ」

「ソウカ。ワガマオウノサイゴヲミトドケタモノ」

「カンシャ」

「ミノガセ」


「もどりましたー」

「きみは、さすがメイライの弟子」

「別に弟子ってわけでは」

「それで奴らは何を?」

「戦装束を作ってるんだそうです。それで大きな戦があるって」

「なに!それは大変なことではないか!急ぎ戻ろう。調査は他の者だけでも十分進むはずだ。我々は一足先に戻ろう」

「わかりました」

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