33. 戻りました
「ニーナ報告にあがりました」
「おお、ニーナ殿お帰りなさい」
「こちら報告書です」
「ありがとうございます。ふむふむ、なるほど。ブルバラ殿は戦闘を控え交渉で乗り切ったのですね。あの方らしい」
「ブルバラさんっていつもそうなんですか?」
「ええ。彼女は戦士としての素養は高いのですが争いを好まない方です」
「あの人って騎士なんですよね」
「はい、そうですよ。正確には元騎士です」
「教養のある人だなぁって思っていましたけど、こういうことは考慮して書くべきなんでしょうか」
「元騎士だから出来て然るべき、ということですか?」
「そうですね、元々出来る人だから当然みたいな」
「ふーむ、評価表は事実のみを記載してください。書くとしたらニーナさんの所感として書いてもらえれば大丈夫です。セツカ殿もいつもそうしていますよ」
「じゃあ所感の蘭があったほうがいいですね」
「そうですな。フォーマットができるまではセツカ殿の感想があってもいいと思ってそのままになっていましたが、そうですなぁ、今後もあってもいいでしょうな。検討しておきましょう。他には何かありますか?ぜひお聞かせ下さい」
「はい、実は書いてる時にここが」
「ふむふむ。なるほど」
「はー、疲れた。直帰でいいのよね。セツはいつもこんなことしてたのか」
「こんにちは、そこ行く美少女さん。ちょっとちょっと無視しないでー」
「怪しい人には一切関わらないと決めています。応えること自体が隙を作ることになるのでさようなら」
「そんなぁ、それじゃ飢えてしまいます。というかもう応えてるじゃないですか。そーだ、これなんていかがでしょう、素敵なブローチ」
「素敵かどうかはわたしが決めること。自分の感想込めてこられるとモノが良くても買う気がしないからいらないのでさようなら」
「ああぁ、じゃあこちらは」
「うるさいわね。ちゃんと働きなさい。じゃあさよなら」
「色んな人間と相対するってああいうのとも関わらないといけないのよね。ブルバラさんは元騎士だけど戦士の多くは学も教養にないからまともな会話が期待できないことも。思ったこと言っちゃうセツって案外こういうのに向いてるのかな。うーん、わたしには無理だなぁ」
「こんにちは」
「大臣さんて暇なんですか?」
「ほっ、ニーナ殿も遠慮がないですなぁ。ちゃんと用があって参りました。セツカ殿はいますか?」
「あ、はーい。ああ大臣さん。今日はなんですか」
「実はですね先日ニーナ殿に査定を依頼しましてな。そのことでお2人にご意見をいただきたいのです」
「えっ、そうなんだ」
「ニーナ殿この報告書にある貢献度が1人の場合どうするか、セツカ殿はいつも任務に対する働きと捉え直し記載しています。こちらを見ていて思ったのですが、評価表を1人用とチーム用で分けた方がいいかどうか、実際に立ち会ったお2人はどうお考えになりますかな」
「今回やってみてわたしは別にした方がいいと思います」
「わたし別にどちらでも。必要なら今までみたいに空いてるところに補足として書いておけばいいし」
「セツってほんと適当ね」
「なんでもきっちりやればいいってものでもないでしょ。そもそも所感なんてなくてもいいんだし」
「じゃあ書かなければいいじゃない」
「参考にするかは、まだ、決めてる途中だし」
「だから今回決めようって話になってるんじゃない」
「うるさいわね、ちょっとやったくらいで」
「ちょっとやっただけでわかることに気づかない方が悪いのよ。まったく。セツってわたしがいないとダメなのね。あ、今のはその」
「わたしだって大変なんだからね」
「それはよくわかったよ。この仕事すっごく大変だった」
「でしょ。だから、今後はニーナちゃんが一緒にやってくれたら嬉しいな。今みたいにわたしだけじゃ足りないこともあるからね。一緒に、お願いしてもいい?」
「うん!もう、仕方がないわね」
「ツンデレか」
「ふん。ふふ」
「ふふふ」
「では今後はお二人で協力して進めてくれますかな」
「はーい」
「では私は帰るとしましょうか。おっとと、なんですか2人してぶつかってきて」
「大臣さんには色々とお世話になりまして」
「ほんとほんと。白紙の手紙とかね。感謝の念がたえないわ」
「おやおや、そんなこと気にしなくとも、あいた!これこれ髭をつかむものではありません。私は大臣ですよ、離してくだされ」
「大臣が民草の私情に関わるなんて出過ぎじゃないですかな」
「そうじゃそうじゃ。このお髭を三つ編みにしちゃうぞ」
「ほっほっほ、お茶目な大臣というのも悪くありませんが立場上、威厳というものが。セツカ殿、羽交締めにせんといてくだされ。そ、そんなに嬉しそうにニーナ殿はなにを」
「ふふーん」
「うふふ」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「邪魔するぞ。お前達に話が、ん?大臣じゃないか。なぜお前がここに、というかうずくまってどうしたんだ?」
「うぅ、悪鬼に襲われまして」
「はぁ?あー、まぁ大体わかった。ふっ、大臣。素敵な髭じゃないか。ははは」
「ご機嫌がよろしいようで王子」
「ショウ王子、どうかしたんですか?」
「ああ。実はな、査定する人数を増やそうと思ってな。なんだ?2人して」
「ふふっ、別にー」
「それならもう話は進んでますよー」
「ほっほっほ」
「どういうことだ?」




