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03. メンバーと旅の途中で

「あそこが集合場所ね。うわっ、もうみんな集まってる」

「誰か来たようですよ」

「あの、こんにちは。セツカと申します。よろしくお願いいたします」

「例の子ね。マル、来たわよ」

「ああ。メンバーも集まったことだし、出発だ」

「あ、あの」

「こんにちは。よろしくね。道すがら自己紹介しましょうか」

「歩きながらですか」

「ええ、あまりのんびり出来ないのよ」

「そうなんですか、わかりました」

「聞き分けのいい子だな。俺は戦士マルマル。この隊の指揮をとる」

「彼は名の知れた傭兵で指揮官としても優秀なの。とても信頼できる人よ」

「あいつがいればよっぽどひどい状況じゃなきゃ死ぬことはないだろうさ」

「オレだって負けないぜ」

「よくわからないけど、なんだか凄い人なんですね。名前はかわいいけど」

「ふふ、それは本人には聞こえないところでね」

「あ、はい、そうですね。すみません」

「緊張してる?」

「それは、もちろん」

「そうよね。急ぐけど、じっくり馴染んでいって。さて、メンバーだけど大まかに戦士と魔法使い。戦士は剣士と弓使いで計4人。ああ、私はユミアよ。ユミって呼んで。お察しの通り弓が得意よ。それと魔法使いが2人ね。サシロサとカクロカ、双子だそうよ。見た感じあの2人はセツカちゃんと同じくらいの年齢ね。で他の戦士は」

「おれはダグだ。ポジションは中衛ってところだな。今回使うのは弓だ。このメンツの場合、前後を幅広くカバーするのが役割だな。普段はダガーをよく使ってる」

「なるほど。指揮官のマルマルさんは剣ですね」

「そうよ。あとはあの子」


「オレは勇者だ。そう言われた」

「ゆうしゃって本気かしら。わたしより若そうだけど」

「おいおい勇者ってそれ称号だろ。名前じゃねぇじゃんか。自己紹介がそれかよ、ははは」

「うっせーな」

「で、セツカちゃんは後衛職?魔法使い、という感じでもないけど」

「お前できることあるのかよ」

「デスクワーク」

「デス、クワーク?なんだそれ、必殺技か?デス・ク・ワーク。デス、なんか強そうだな。死を予感させる一撃必殺な感じだぜ!」

「あのねぇ勇者くん。デスクワークも知らないの?」

「うっせーな。んなこと知るか。それで武器は何を使うんだよ」

「それはおれも聞いておきないなー。どういう戦い方するのか知っておきたい」

「まさかその手にある紙束で戦うとか言わねーよな」

「なわけないでしょ!わたしが戦うとか、あの、わたし事務なんですけど!」

「じむ、ってなんだ?」

「情報の管理が主な業務よって言ってもわからなそうね。はぁ、そうね。勇者くんでもわかるように言うなら後衛の中の後衛、かな」

「ふーん。よくわからねーけど邪魔すんなよ」

「はいはい、しませんからがんばって。サボったら点数引くからね」

「点数?」

「報酬が減るってことよ」

「なっ、なんだと」

「サボらなきゃいいだけだろ」

「そうね。勇者くん、私も勇者の実力に期待しているわ」

「というわけだから少年よ、かんばりたまえ。なんちゃって」

「くっ、みてろよ」

「ふふ、案外素直な子じゃん。ちゃんと見てるわよ」


「さて、みんな聞いてくれ。まずは獣の森まで進む。その間宿泊できる所はないからしばらくは野宿になる」

「じゃあ道すがら食料を確保していくか。この辺りだと、草原があるからそこで多めに調達しておこうぜ」

「それって迂回になるんじゃねーのか?一気にいこうぜ!」

「まあ多少は迂回することになるな。だがどこかで補給はしないといかん。多少遠回りでも草原を通ろう。美味い飯食いたいだろ?」

「ふーん、しゃーねーな。わかった」

「えっと。ユミさん、まずはってことはその先もあるってことですか?」

「ええ、そうよ」

「獣の森ってここからどのくらいかかるものなんです?」

「一月ほどかな」

「えー!その間ずっと野宿なの?なんで、どこかに宿泊できるとこあるでしょ」

「あんた何も知らないのか。ここから先の平原は魔王側が大半を領土としてるんだぞ」

「そうなんだ。街から出てもこっちには来ないから。そういえばそうだったっけ」

「おいおい、じむさんよ。じょうほうのかんりが仕事とか言ってなかったか?大丈夫かよ」

「仕方ないでしょ。何にも知らされずに当日になったら集合場所にそのまま行けって言われたんだもん」

「まじか。お前ほんと大丈夫かよ」

「いちいちうるさいわね。大丈夫なわけないでしょ!そうよそうよ。わたしは全然大丈夫じゃない。後衛職とか、そもそも事務は戦いに参加するような人種じゃないのよ。もーやだ、どこかに雲隠れでもしようかしら」

「いや、待ってくれ」

「何でよマルマルさん」

「悪かった、ちょっとやりすぎた。君のことは事前に知らされていたんだ。王子がどんな目的なのかも知っている。王子から、君が暗い顔してたらちょっとからかってやれと言われていたんだ。彼がそういって寄越すくらいだし、てっきり親しいのだと。すまん」

「ごめんね、からかうにしてもあんまり上手じゃないから止めた方がいいって言ったんだけど」

「けど逆に来てすぐ帰ってりゃ止めなかったんだがな。あんたしっかり付いてきたからこりゃ行けるって思ったんだ」

「なにそれ、もー!こっちは泣きそうなんだぞー!」

「すまんすまん、本当は途中に宿はある。と言っても数えるほどだし森に近づけばさすがに無いがな。すぐ出発したのは迷う時間を与えないためだったんだが、すまんな」

「まったく。あの王子め」

「きっと期待してるのよ」

「勝手な期待は困るわよ。まったくもー、なんでわたしなのよ。いつも仕事ちゃんとしてたし。所長さんも止めてくれたら良かったのに。しょちょーさんのバカー!」

「だからじゃないかな」

「どういうこと?」

「この子なら信頼できるかなって」

「あー、程よく真面目でいい具合に手を抜くだろうわたし」

「こんな危険な仕事、真面目過ぎたら途中で絶対死ぬわ。激戦の最中逃げないなんて自害に等しいからね」

「なのに事務のみんなは責任感発揮してちゃんと見届けようとする。わたしだったらさっさと逃げてそれで頃合いを見て戻って来る」

「おお、素晴らしい人選だ」

「適任ね」

「ぐすっ。うぅ、自分の性格が恨めしい」


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