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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
1−3.セツカさんの日常

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26. ジャングルフィーバー

「セツカ、今回行ってもらうのは南だ」

「なんだか最近のわたしって物語に出てくる特務エージェントみたいね。どうせならそんな感じでやってほしいな、なんちゃって」

「お前なぁ」


「おはよう、エージェントセツカ。今回の任務だが南の海に隠されたマルマルの財宝を探し出してほしい。道中妨害を受けるかもしれないが君なら必ず見つけ出してくれると信じている。以上だ。なおこの魔法メッセージは自動的に消去される」

「おおー、大臣さんわかってるー」

「ほっほっほっ」


「どこからサングラスを。それに魔法メッセージ?自動で消える時間制限ある魔法?そんなモノがあるなら」

「王子。これはフィクションですよ」

「そうよ王子。もっと庶民のことを知らなきゃね」

「ああすまなかったな。なんせ粗末な服を用意してもお前たちより上等なものしか用意できない世間知らずの王族なものでな」


「それでだ。海とは言っても実際に入るのは海沿いの崖に広がる広大な森。ジャングルだ」

「マルマルさんの財宝かぁ」

「お前が聞いたという話を元に探ってみたところ、あまり時間もかからずにおおよその場所は見つかった」

「セツカ殿のおかげですな」

「ああ。おかげでユミ達からぼったくられることもなく済んだ」


「あの、今回わたしだけで行くんですか?」

「まさか。ユミ達と行ってもらう。こちらが見つけたとはいえ共同で進めることを約束しているからな」

「ユミさんかぁ、今どうしてるんだろ」

「ふふふ」

「なんですか、その変な含み笑い」

「行けばわかる。じゃあ頼んだぞ」



「ここが待ち合わせ場所か。みんなまだ来てないのかな。あ、きたきた」

「久しぶりねセツカ」

「ユミさん!お久しぶり、ですね。えーっと、なんでそんなに怒ってるんです?」

「よー、セツカ。久しぶりだな」

「ダグさんもお元気そうで。それで、ユミさんはいったい」

「こいつの二つ名知ってるか?」

「いえ。知らないし知りたくないような」

「王国公認。大魔王ユミ」

「セェェェツゥーカァァァァァ!」

「わたしじゃなくて王子に言ってくださいよー!」


「ははは、お前ら仲良いな。知らない奴が混ざってぎこちない探索にならんか心配だったが、大丈夫そうだな」

「これからぎこちなくなりそうですけど、この人はどなた?」

「ん?俺はトラドだ。こいつらのリーダーだよ。聞いてないか?」

「チラチラと存在だけ出ていた人ね」

「よろしくなセツカ」

「はい、よろしくお願いします」


「狙うは大盗賊マルマルが残した財宝!いいか、マルマルは罠を仕掛けるのが大好きな奴なんだ。だから必ず罠がある」

「あの、わたしは一通り探索が済んでから入ろうかと思うのですが」

「構わないがそうしたら財宝のほとんどを俺達がもらうぞ」

「それはー、だめだけど、うーん」

「あんたのことはちゃんと守ってやるよ。な、ユミ」

「ふん。仕方ないわねー」


「うー、わかりました。2人の実力は知ってますし、そのリーダーならきっとすごいんですよね」

「そうか知らねーのか。すごいっていうか、こいつは王直属の近衛騎士の1人だ。騎士の中でも数人しかいないこの国の最上位に位置する実力者だぞ。元だけど」

「今は3人くらいじゃなかったか?あんな仕事よくやるよなー。毎日王の後ろを金魚のフンみたいに付いて行って、勘が鈍らんようにたまにお使いに駆り出されるんだぜ?つまらんだろ」

「どんな人なのか大体わかりました」

「冒険はロマンがないとな!よーし行くぞー!」



「はぁ、やっと着いた」

「大分旅に慣れたな」

「そりゃもう、毎日のように戦士たちと野を駆け回ってますから」

「さすが戦士セツカね」

「あの、わたし事務なんですけど!もー!」

「ふふっ。わたしに比べればそんなの可愛い間違いじゃない」

「えっと、ああー、そうだ、罠ってどんなものがあるんですか?」

「お、興味あるのか。よし俺が教えてやろう」


「まず典型的なのだと、足元に作動用の糸とか紐があってそれに引っかかると矢が飛んでくる。こんな感じに」

「っておい!うわぁ、危ないでしょ!なにやってんのよ!」

「罠のこと知りたがってたから」

「だからって危険な実演しなくていいですよ」

「こういうスリルがあると探検って感じでいいよなー」

「スリルなんていりませんよ!」


「さすがセツカだ、もうトラドと仲良くなってる」

「仲いいかしら」

「あとは、定番の罠といえばこれ!落とし穴だ」

「だからやめてって!うわわ、危ない」

「ははは。いいぞぁ、段々楽しくなってきた!」

「やっぱり入口で待ってればよかったー!」



「おいトラド、分かれ道だ。どうする?」

「二手に別れよう」

「じゃあ、私はダグさんとユミさんと一緒に」

「あんたはトラドと行きな」

「やだ」

「バランスとしてはそれがいいのよ。いつもそうだから」

「だってこの人といると命がいくつあっても足りない気がしてならない」

「わははっ、大丈夫だ。絶対守ってやるって」

「ほら元最強がこう言ってるぞ」

「じゃあ頑張ってね」

「うう、わたしもう帰れないかも」

「よぉし、ガンガンいっくぞー」



「なんでこんな森の奥に罠ばっかりあんのよ!」

「罠のないトレジャーハントなんてつまんねーだろ!とにかく逃げろ!」

「何言ってんのよ!いさぎよく安全にがっぽり稼ぎなさいよー!」

「ロマンのわかんねーやつだなー!」

「ていうかこのキレイな丸い岩どうやって作ったのよ!」

「マルマルが頑張って削ったんだろ」

「そんな、無駄なことするかしら!」

「罠が好きだからな。想いをこめて削ったんだろー。ははは!すげー楽しいぞマルマルゥー!」

「もー!なんでいつもこんな目にー!」



「おいセツカ」

「はぁー、なんでしょーか」

「見ろ。ユミ達だ」

「あ!ほんとだ、合流出来たのね」

「静かにしてろ」

「なによ。さては罠にはめるきなのね」

「ああそうだ」

「あんたってほんと」

「いいから見てろ。それと死にたくなければ絶対に前に出るな。いいな」

「わ、わかった。あれ?誰か来た。あれって」



「こんにちはユミさん」

「久しぶりねシロ、財宝は見つかった?」

「まだです」

「早くした方がいい。トラドの奴、おれ達の動きに気づいてる」

「そうね」

「元近衛騎士ですか。王国の騎士には以前ひどい目にあわされましたから是非とも避けたいものです」

「ならさっさと見つけるぞ」

「クロは?」

「勇者と一緒に別方向を探しています」

「そう。トラドと鉢合わせないといいけど。あの子じゃ勝てない」

「行くぞ」



「トラドさん、あれって」

「2人はあの双子とグルだ」

「そんな」

「君があの双子に捕まったことがあったそうだね。それ以前から監視していたのだが、なぜかいつも見抜かれると元同僚に相談されてな。調査したところ内通者がいたわけだ。おそらく遠征以来の付き合いなんだろう」

「もうなにも言葉が出てこないわね」

「そうか」


「君を入口で待たせようかと考えてはいたんだ。ここが危険なのはわかっていたからね。だけどあの双子らがいるのもわかっていたから、入口で待たせることも出来ず連れてきてしまった。すまんな」

「いえ。そもそも王子が派遣しなければよかったんだし」

「ふっ、君は相当気に入られてるようだな」


「さて、片付けるか」

「え?まさか」

「安心しろ。捕まえるだけだよ。殺しはしない。少なくともユミとダグはな」

「でもあの人数ですよ、しかもみんな実力者」

「なぁに。いつものことだ。このくらいじゃないとハンデにならん。何よりこの方がスリルがあっていいだろ?」

「最後のが本音か。どうぞお気をつけて」

「おう」

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