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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
1−3.セツカさんの日常

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25. セツカの日常

「あー、つかれたー。数日に一度どっかに査定で送り込まれる日々にもいい加減慣れてきたわね」

「セツー、おつかれー。これあげる」

「何これ、ゼリー?ありがと」

「どうぞ召し上がれ」


「山吹色のお菓子。わたしに対して何やらやましいことでもあるのかなニーナくん」

「ぜんぜん」

「普段あれだけやっておきながら笑顔で即答か」

「今後ともよろしくね、の気持ち」

「ふーん。そういえばこの間言ってた近所に出たスライムは片付いたの?」

「うん。ばっちり処理したよ」

「なるほど。って話聞いて食べるわけないでしょ」

「えー」


「おやおや、どうしたんだ?」

「ロー所長、これ差し上げます」

「ん?ゼリーか。美味しそうだね。どれ。うむ、美味しい。この複雑な味は。リンゴとパイナップルとピーチが入っているね」

「さすが所長さん。せいかーい」

「はっはっはっ、グルメのローとは私のこと。さて仕事せんとな。ご馳走様」


「ねぇ、ほんとは何が入ってたの?」

「みかんとパプリカ。あと凝縮したスライム1000mg配合した特製スライムゼリーよ」

「そんな危険なものをわたしに。所長さんの犠牲は忘れない」



「大変だ」

「あら王子様。ご機嫌よう」

「うむ」

「ショウ王子、何があったんです?」

「ロー所長が魔獣化した」

「あらまあ」


「所長さんって人間じゃなかったのか。出番ねセツ。勇者セツカよ、魔獣討伐に行くのだ」

「まだ勇者ネタ引っ張ってたか。そして相手は所長さんなのだが」

「かつての恩師との戦い。苦渋の決断が迫られる。その時、セツカの選択はいかに」

「この間見た劇が気に入ったのね」

「うん。たまにはドラマしたいじゃん」

「ゴブリンみたいなことを。ニーナちゃんの過酷な脚本は主演がいつもわたしなので困る」


「で、ショウ様。ロー所長は元に戻るんですか?」

「わからん」

「王子様、もうちょっと真摯に取り組むべきではないですか。あなた達が統治する国の民が大変なことになってるんですよ。そもそもどうしてそうなっちゃったんです?人間が魔獣化なんて魔術の実験でもなきゃならないと思いますが」

「ああ、そうだな。双子が残した資料に書いてあったのだが特殊な手法で凝縮したモンスターエキス1000mg配合したものを摂取する必要があるらしい」

「へ、へー、そんなものだれがつくったんでしょうね」


「ニーナちゃん。何か言うことは?」

「すみません。とても反省しています。ところで所長さんはどんな魔獣になったんです?」

「それなんだが」

「あ!待って待って、わたし当てたい!ローさんだし狼でしょ」

「ハズレだ」

「じゃスライム」

「残念」

「豚じゃないかしら。家畜みたいな人だし」

「社畜の言い間違いだよね?ニーナちゃん?」


「いやぁ、みんなすまんすまん、理性を失って遅くなった」

「あ、答えが入ってきた。こんにちはー」

「邪魔しているぞー」

「あれが所長さん?なんかイケメンなんだけど」

「ああ。猿の魔獣化を果たしたらしい」

「へー、所長と猿を混ぜるとイケメンになるのか」


「ねぇセツ、魔王も猿だったのかな」

「だから人間のイケメンの姿してたとか」

「お前ら心配してやらんのか。ていうかお前がげんきょ」

「セツが魔獣化したらどうなるんだろうね」

「期待する目で見るんじゃない。そういえば所長さん、具合はいいんですか?」

「ウキッ」

「え」

「この通り元気だよ。身体が軽いくらいだ」

「そうですか、それは、よかったです。後でバナナあげますね」


「ねぇ王子様、あれは理性が保たれているんでしょうか」

「さーな。ま、勇者セツカがいるんだから問題ないだろ。お前達に何かあっても自業自得だし。近くで様子を見ておいてくれ。何かあったらすぐ報告しろ。じゃ」



「見ておけって言われてもねぇ」

「なんか治す方法とかないのかな。所長さーんバナナですよー」

「ウキッ」

「薬とか?」

「そんなのあるのかな」

「例えば万能薬とか」

「といえばエリクサーか」


「そういえばあの靴擦れの薬ってどこで手に入れたの?以前どうやって手に入れたんだ、とえらく驚いてる人がいて」

「作ったの」

「ニーナちゃんが?」

「うん」

「なんでそんな物作れるのよ」

「小さい頃なんだけど近所のおばあちゃんが薬屋さんやってて、ちょっとお手伝いしてた時に作り方教わったの」


「そんな簡単にできるものなの?」

「さあ?おばあちゃん喜んでたからたくさん作ってあげたことがあって、セツにあげたのはその余り」

「そんな古そうなものを。そのおばあちゃん何者だったんだろ。すごい万能薬の作り方知ってるなんて」

「すごい万能薬?あれ靴擦れの薬だよ?」

「本当に靴擦れ用だったりして。そのおばあちゃんに真相を確認したいわね」

「無理だよ」

「もしかして、もう亡くなってるとか」

「うーん、どうかな」


「その薬作ってあげたあと少ししたら引っ越すとかでどっか行っちゃった。噂ではお金ができていいところに移ったとかなんとか」

「そのおばあちゃんの眩んだ目が見えるような話ね」


「あれ、そうすると容器の裏に書いてあった言葉は」

「きっと落ち込んでるセツがあの容器を見てわたしを思い浮かべるの。もうやだ、体も痛いし、帰りたい。そんな心をいさめるために書いたのよ」

「ニーナちゃんが真面目に答えている。その心は?」

「疲れ切ったセツにトドメを」

「おまえー!」

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