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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
1−2.勇者と魔王

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24. 帰還

「セツカさん起きてください。城門まで来ましたよー」

「ほんとだ、馬車に揺られていつの間にか寝ちゃってました。なんか懐かしく感じちゃう」

「帰りたいと思われるでしょうけどこのまま城に入りますねぇ」

「はい、大丈夫です」

「そうですか。ではもう少しだけのんびりしていてください」

「わかりましたー」



「王子、セツカ殿が戻ったそうだ」

「大臣、本当か!今どこにいる」

「こちらに向かっているとのこと。もうじき来るでしょう」

「そうか、無事なんだな」

「ブンドウからの報告によればそのようです」

「ならいい。騎士が一緒なら大丈夫か。しかしなぜブンドウと一緒にいるんだ?あいつは確か北の森で潜入捜査中だったはずでは」

「王子、到着されたようです」

「わかった。通せ」

「はっ」



「ブンドウただいま戻りました」

「ショウ王子、ご無沙汰しております」

「セツカ!お前今までどこにいた」

「王子」

「ああすまん。ブンドウ、報告を」

「はい。北の森にて潜入捜査中、囮として売人に捕まり監禁されていたところセツカ殿が入ってきました。その後、我々2人は双子のもとに運ばれ人身売買の現場を確認。現行犯で逮捕を試みましたが、カクロカの手により売人は殺害、双子を捕らえようとしたところ勇者なる者が現れ逮捕を妨害。双子と勇者の3名が逃走。現在行方を追っている次第です」


「勇者だと、生きていたのか」

「はい、当時の年齢からすると外見年齢は一致しないように思われましたが、面識のあるセツカ殿および双子がその者を勇者と断定しております」

「わかった。ご苦労だったな。セツカどういうことだ。なぜ勇者が、いやそもそもなぜお前がそこに」

「王子、順を追って確認しましょう。焦らずとも彼女はここにおりますから」

「あ、ああ、そうだな」

「セツカ殿、あなたの同僚からいなくなる直前、伝説の剣のある広場までは一緒だったと確認がとれています。また、露店を開いていた少女があなたと思わしき人物が光に包まれ消えたと証言しています。あっていますかな」

「はい、あっています」

「ではその後どうなったのか、ブンドウと会うまでの経緯を聞かせてください」

「わかりました」



「勇者が違う世界にいた?どういう意味なのだ。10年もの歳月をそこで過ごしていたと。そして戻ってきて魔王を討伐。そこにセツカが居合わせた。これは偶然なのか。もうわけがわからん」

「この件は最優先で調査いたします」

「ああ、頼む。セツカご苦労であった。お前の報告書は読ませてもらうがまとめてあるな?」

「はい。馬車の中でまとめられましたので。あと、ちょっといくつか報告と確認させていただきたことがあるんですが」

「いいだろう。だが疲れていないか?急ぎではないなら一旦休んで後日でも構わんのだぞ」

「大丈夫です。査定と称して色んなところに出向いてますからこのくらい慣れてます」

「ははは。そうか、たくましくなったな」

「誰のせいですか」


「それで?」

「まずは戦士達に資格として等級の制度を設けてみてはどうかと。これは勇者が異世界という場所で行っていた制度らしいのですが、資格試験のようなものです。等級があり各級ごとの試験を突破した人がその級を名乗ることが出来て、級によって報酬の額や受領できる依頼が変わる、というものです」

「なるほどな。それに近いことはこちらでも検討はしていた。だが問題がいくつかある」

「問題ですか?」

「詐称出来てしまうことが1つ。先の二つ名もそうなのだが、その者だとどうやって証明するのか。試験的に何人かで試したのだがやはり証明がままならないというところで躓いていてな。どこにいてもわざわざこの城に問い合わせなければならないのだ」

「それは手間ですね」

「そうだ。だから今国内各所に支部を設置しそこで対応する方向で考えている」

「へー、簡単にはいかないんですね」


「問題はもう1つある。等級をつけるのはいいとして見合う等級の付け方がまるで定まらん」

「セツカ殿が進めてくれている査定がかなり役に立っているのですが、まだまだ時間がかかりそうですね」

「そうだな。お前が言いたかったことはそれだけか?」

「あと、ターナさん達から聞いたことなのですが、マルマルさんって大盗賊だったんですか?」

「ああ、そのことか。そうだな、お前には言っておくか。マルマルについてはその通りだ。私より一世代上あたりの年代の者であれば大体知っていることなのだが、あれは稀代の大盗賊と呼ばれた男だ」

「そんな人だったんだ」

「そうだ。実はな、奴は莫大な財を隠し持っていることがわかっている」

「大盗賊マルマルの財宝ですな。しかしターナか。たしか過去の魔王遠征時に戻らなかった騎士の中にその名があったはず」

「ふむ、元騎士たちか。戦士の村とやらも調査しておけ」

「わかりました」


「あの、莫大な財宝ってそんなすごい金額なんですか?」

「国を賄えるほどだと言われてはいる。実際どうなのかはわからんがな。それを狙ってトレジャーハンターと称して旅に出る者もいたほどだ。彼らからすれば冒険なのだそうだが。そしてそれは我々も狙っている」

「え、この国ってお金ないんですか」

「お前、それ王の前で絶対言うなよ。打首になっても文句言えんからな」

「は、はいー」

「国の財源というよりは個人的な話しでな。先に話した二つ名など国で必要となる手続きを行う支部だが、予算がおりんのだ。戦士たちの収入はまだ不安定。彼らのために予算をさくのであれば運用をきちんと整理してからだと。それが出来ないから困っているんだが」


「じゃあその予算のかわりに財宝をゲットするわけなんですね」

「そういうことだ。そして偶然にもマルマルが捕らえられたことがわかった。それがユミたちだ」

「そうなんですか、なんか全部つながってるんですね」

「ああ。ユミ達はマルマルの口を割らせたいが手の打ちようがなく困っていた。そこにあいつらのリーダーが私に提案してきたのだ。マルマルの罪状を帳消しにする代わりに財宝の一部をいただけるように取引してみないかと」

「それってマルマルさんは呑んだんですか?」

「ああ。おかしな条件つきでな」

「おかしな、ですか」

「魔王討伐に参加させろ。これがやつの出した条件だった。こちらも前々から魔王討伐が叫ばれていたからな、悪くはないと判断しマルマルほどの者ならもしかすれば、と期待も高まった」

「ですが動機がわからないため皆どう扱っていいか意見がまとまらずにいたのです」

「マルマルさんは王子の計画に協力したいっていってましたけど」

「本当のところはどうだろうかな」


「とりあえず奴は戦士達の雇用状況を改善したいという私の計画を知っていた。私が金に困っていると知っていたわけだ。だから条件に段階を設けてきたのだ。十分な敵地の調査で終われば財の半分。魔王を討伐したらその半分。もし自分が死んだら何も渡さない。どのみち死刑になったら渡すことはないからな。結局条件を呑んだよ」

「えっと、なんで魔王討伐したら分前低くなるんです?」

「我々の敵を討つのです。貢献度合いは大きいのだから功績分は差し引くということですな」

「はー、なるほど」

「結果は戦死。財源の確保が出来なくなった。だが今ユミたちがマルマルから聞き出した僅かな情報から財宝の隠し場所の1つを特定しようとしている。わかれば報告してやるなんて言っていたが、色々ふっかけてくるつもりなんだろう」


「それって、南の海の方ですか?」

「わからんが、なぜお前が知っている」

「いや、マルマルさんが海の方に大事なものを置いてきたって言っていたので」

「お前は本当に、はぁ、まったくお前が関わると読めなくなるな。知ってることを話してくれ。それで今回は終わろう。さすがに疲れた」

「はい」



「ではここで」

「はい。ブンドウさん、ありがとございました」

「いえいえ。ではぁ」

「セツカ戻りましたー」

「セツ!」

「おお、また抱きついて。またくさいとか言うんでしょ?」

「うん。でもこのままでいい」

「そっか」

「今回は心配した」

「前回は心配しなかったのか」

「どこ行ってたの」

「魔王城とか色々」

「なんでなんにも言ってくれなかったの」

「伝説の剣見た後いきなり光りに包まれて気づいたら魔王城にいたのよ」

「意味わかんない」

「ほんと自分でもなんでああなったのか」


「もう、どれだけ心配したと思ってるのよ。いなくなった翌日来ないし、その次の日も来ないし、次の日もその次の日も。いつまで経っても来ないし誰もセツがどこにいるのか知らなくて本当に心配したんだからね!」

「うん。ごめんなさい」

「もう、ほんとに心配したんだから、ほんとに」

「ごめんね、まさかこんなことになるなんてさすがにね。ところで今こっそりわたしの背中に貼ったのは」

「ウォンテッド。すぐにみんなが見つけてくれるように」

「ふふ、これがあればすぐ見つけてもらえるね」

「うん」

「ただいま、ニーナちゃん」

「おかえり。セツ、もうわたしに黙ってどこかに行っちゃだめだぞ」

「はいはい、気をつけます」

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