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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
1−2.勇者と魔王

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16/123

16. カップの中のワンダーランド

「おいセツカ」

「何でしょうか王子様」

「お前が書いたこの査定表、いくつか誇張したような表現が見られるぞ」

「そうですか?見たままに書きましたよ?」

「ふむ。であれば根本的に客観性が足りんのかもな」

「セツは主観的な見解が多いもんね」

「ニーナちゃんは歪んだ見解が多いけど」

「よし。知り合いに学者がいる。そこにいって学んでこい」

「またお出かけか。最近はなかったからよかったのにー」

「セツ、贅沢言っちゃだめ。仕事があるだけいいと思うべきよ」

「そうだぞセツくん。勉強しにいってお金がもらえるなんてこれ以上ないほどの贅沢だぞ」

「それは学びたい意思があればでしょ」

「とにかく行ってこい」

「うふふ、いってらっしゃーい」


「学者さんの家ってここか。なんか良いお家ね。古いけど自然の中に馴染んでて」

「そうね」

「こんな場所なら勉強もはかどるってものね」

「そうね」

「これてよかったね。ニーナちゃん」

「そうね」

「わたしの苦労をすこしは味わうといい」

「なんでわたしまでー」

「あらあら、誰かいると思ったら。こんにちは、あなた達が王子の紹介ね」

「はい。セツカです。よろしくお願いします」

「ニーナです」

「2人ともよろしくね。私はリーメよ。さあ中に入ってちょうだい」

「おじゃましまーす」

「失礼しますー」


「どうぞ」

「美味しそうな紅茶ですね、いただきまーす」

「へー、いい香りですね」

「自家製なのよ」

「なんか落ち着きますね」

「ふふふ。王子から聞いているけれど、物事を色々な視点で見られるようになりたいそうね」

「えっと、そういうことなのかな」

「セツは一点しか見ないからちゃんと周りが見えるように厳しく特訓してあげてください」

「あなたたち仲がいいのねぇ」


「そういうことなら、じゃあご要望通りしっかり勉強していってもらいましょう」

「あの、わたしはそんなにきちんとやらなくてもいいかなって思ってるんですけど」

「ダメよ。そんなんじゃ王子様の心が離れちゃうわ」

「セツカさん、安心なさい。思っているほど厳しくないわ」

「よかったねセツ。わたしはゆっくり見物しているわ」

「あら、ニーナさんも一緒にやるのよ」

「いえいえ。王子から命じられたのはセツだけで、わたしは上司に言われて付き添いで来ただけですから」

「都合よく言っちゃって。所長さんに、ニーナくんも学んできなさいって言われたでしょーに」

「ふーん。わたしには必要ないもん」

「いつもわたしばっかやらせてるんだからたまにはニーナちゃんがやりなさいよ」

「さあさあ、喧嘩しないで。2人仲良く行ってらっしゃい」

「へ?」

「どこに?」

「カップの中よ」

「カップの中って」

「ちょっとセツ、なんかカップに吸い込まれるよー」

「なにこれ、すごい、ちから」

「吸い込まれちゃうー」

「いってらっしゃい」


「お、おお?」

「何かしら、ここ」

「なんていうか、柔らかい感じの世界ね。剣と魔法で活躍できそうな場所だわ」

「つまりメルヘン&ファンタジーと言いたいのね。勇者セツカよ、いざ謎解き大冒険へ出向くのだー」

「つまりってほどまとまってないけど。のんきに言うのはいいとしてもニーナちゃん、今回は頑張らないと危ないんじゃない?真の勇者なんだし、ふぁいとー」

「勇者はセツでしょ、わたしは安全なところで待ってるからいいよ。がんば」

「そうもいかないんじゃない?ほらあそこ。なんかゴツいのがいるよ」

「メルヘンに似つかわしくない外見ね」

「あ、こっち来た」

「セツ、なんとかしてよ」

「いやいや、無理でしょ、あんなゴリラ」

「ど、どうしよう」

「逃げるしかないんじゃないかな」

「なんでそんな落ち着いてるの?」

「だってこんなの日常的に、いや、待って、私の日常って」

「とにかく逃げよー!」

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