120. アンの理想郷
「アンさーん」
「はいはい、帰りたいって言うんでしょ」
「それ以外に僕が言うことあると思います?無理やり連れてこられて」
「もう少しだけ待って。先生との勝負で勝てそうなの」
「12敗2引き分け。いい加減諦めたら?」
「まだよ。デモロ君、今日のメニューは?」
「今日はこれ。甘く朗らかに飛び立て魂、臨死体験スイートポテト」
「先生、どっちが多く食べられるか勝負よ!今日こそ勝つ」
「いいだろう。しかし勝算が出来てから挑んでもらいたいものだな。この料理さすがに辛い」
「あはは、君たち凄いよ。周りの戦士達は食べてもおかわりなんて出来ないのに」
「いっそ倒れてくれたらいいのに。僕は早く帰りたい」
「村でも見て回ったら?戦士に鍛えてもらうとか、魔法使えるようになってみるとか何かしらあるでしょ」
「はいー」
「はぁ、何かしらあるでしょって、すでに魔法もアウトドアも才能ないって烙印押されたってば。ランクで言ったらFランクだと驚かれたし」
「戦士としてはありえないランクだってみんな驚いてたな」
「評価に値しないってことでしょ。僕に才能というほどのものはないの」
「リーメはむしろ燃えてたがな。この人に魔法を使わせられたらどんな人でも魔法が使えるって」
「この村の連中って遠慮がないな。トラド村長、この村何か楽しめるものはないんでしょうか?」
「今言ったもの以外にあるわけ無いだろ。ここは観光地じゃないんだから」
「ですよねぇ。何か珍しいものでもあればいいのに」
「俺が言うのもなんだが、珍しくないものの方が少ないと思うぞ」
「ですかねぇ」
「あ、ゴブリンだ。迷い込んだのかな」
「あれはうちの戦士だ。ちゃんと登録してある」
「へっ?あれモンスターですよね?ゴブリンのそっくりさんじゃなくて」
「安心しろ。まごうことなきゴブリンだ。なんちゃってゴブリンじゃない」
「へー、そんなのもいるんだ。モンスターは馴染みあるけど、こうして人間の生活圏内で一緒に暮らしてるのは初めて見ました。こんなモンスターもいるんですねぇ」
「ま、まあな。シモザってデモロがどういう奴か知ってるのか?」
「知らないですよ。天才料理少年、ジニス君のお友達、みたいな?」
「遠からず、かな。でもないか」
「そーだ、シモザ。君は珍しい客人だ。この村の感想を聞きたい」
「いいですよ。感想かぁ、そうだなぁ」
「待った待った。ちゃんと聞き取りしたいから今はまだいい。一通り見てから聞かせてほしいし」
「わかりました。どうせアンさんのことだからまだ数日いそうだし。あのゴブリンって話しかけても大丈夫ですか?モンスターとゆっくり話すなんて中々ないからぜひ聞いてみたいことがあって」
「大丈夫、人間よりよっぽど紳士的だぞ」
「やった。いつも交通整理してる時に思ってたこと質問してみよーっと」
「あの」
「人間だ」
「人間Aがやってきた」
「ドラマになりそうにないな」
「凡庸って言いたいのなら甘い。Fランクたる僕は凡庸以下さ」
「おお」
「むしろドラマになる」
「稽古つけてやろうか」
「どこが紳士的なんだろ」
「僕は交通課でほら、交通誘導したりしてあったことない?」
「お前は知らんが他のなら知っている」
「質問か?」
「ドラマチックな質問を所望する」
「どうな質問だよ。あのさ、君たちって道を横断とかならまだしもさ、いつも街道選んで歩いてるし、真ん中ばっかりあるくでしょ。どうして人間のいる道を歩こうとするの?街道歩くにはまあいいとしてもわざわざお互い衝突するように歩かなくてもいいと思うんだけど、なんで?」
「簡単なことだ」
「わからんとはさすがFランク」
「ドラマ、いや。コメントは控えさせてもらう」
「ゴブリンのくせに句点を使うとは。このゴブリンが紳士なら擦り切れた鎧がタキシードに見えてくるよ。で、なんで?」
「当たり前なのだが」
「だって」
「歩きやすいから」
「言われてみれば当然なんだけど、どうしてか腑に落ちない自分がいるのは不思議なことだろうか」
「どうかしたの?」
「あ、セツカさん。ゴブリンズと話してイマイチ納得出来ないとこがあり」
「モンスターだから仕方ないんじゃない?」
「他にもモンスターって滞在しているんです?参考までに話してみたくて」
「いるよー、ゴブリンズの他にもソロっていうモンスターがいるらしいよ。ていうかモンスターと話すって、いつも話してたのに。もしかして気づいてないのかしら。大山羊さんには会った?」
「たぶん会ってないです。少なくとも名前は知らないけど、モンスターなんですか?」
「うん。ヤギの人。である、っていっつも言ってる。凄い魔導師何だって。私は大山羊さんのいいとこ見たことないけどね」
「ヤギかぁ、どんな感じなんだろ。モンスターの凄いのって言ったら領主と、後は魔王だよね。恐怖の象徴、モンスターの王。その姿を見たものは生きては帰れないという」
「あー、うん」
「うむ。吾輩である」
「う、うわぁ!びっくりしたぁ」
「あそうそう。いつも急に出てくるのが特徴」
「先に教えてほしい」
「うむ。ではやり直そうか」
「結構です」
「何か用であるか?」
「用ってほどじゃないんだけど、人間に対してどんなこと思ってるのかなって聞いてみたくて。あ、僕はいつも交通誘導してて」
「おお、あの人間の一派か」
「一派、せめて組織にしてほしい。まるで僕がナミチさんやアンさんと同類みたいじゃないか」
「そうか。すまんな」
「いいけど、ここにいるのもそうだけどいつも何を思ってるんです?」
「ふむ。事務の君よ」
「はい?」
「君は今何をしておる」
「な、なにって、し、しごとを、して。探しているところです」
「そうか。では名無しに付き合うとよい」
「吾輩、人間との共存を望んでおる」
「へー、なんでですか?僕のイメージだと共存まで考えるモンスターっていなかなって」
「うむ。飽きた」
「え?」
「飽きたのである。モンスターの上下関係が面倒なのである」
「それだけ?」
「うむ」
「セツカさんは知ってました?」
「ううん知らない。でも今聞いて大山羊さんならそうかもって納得はした」
「つまり適当に言ってるわけじゃないんだ」
「当然である」
「人間との関わりは思いの外楽しい」
「へぇ、何かきっかけでもあったんですか?」
「うむ。この事務の君がまさにそうだ」
「わたし?何かしたっけ?」
「古王、いやシドであるな。あやつの頼みを聞き護衛した時からである。縁を持ち会うたびに騒動を起こす。実に楽しませてくれるのだ」
「不名誉な話しね」
「セツカよ!」
「え、あ、はい。急に大声で名前で呼ばれるとびっくりする」
「吾輩感謝しておるのだ。吾輩だけではない。デモロ君もである。その心根のなんと熱きことよ!今でも思い出すあの胸の高ぶり!」
「なんかあったっけ?まあ楽しいならいいけど」
「あの、デモロ君の名前がなんでここで出るんです?」
「ふむ?導きの君は知らんのか」
「えーっと、デモロ君は悪魔なのよ。というか現魔王ね」
「へ?」
「そーだ、ご飯食べに行こうよ。モンスターの筆頭と話せる機会なんてそうそうないんじゃない?さー、れっつごー」
「あ、あの」
「なんだい」
「デモロく、さん、様は魔王の如き魔王なのでありましょうか」
「うん魔王だよ。普通に話なよ」
「殺さない?」
「君次第」
「ひぃー」
「シモザ君って物怖じしないと思ってたけど」
「ま、まおうですよ?」
「何言ってるのよシモザ。今朝まで普通に話してたし、無事だったでしょ」
「アンさんは強いからいいけど、僕は凡人なんですよ!Fランクの!」
「根に持ってるわね」
「シモザ殿。何かあれば近衛であるこの私が君を守ろう。うぇーい」
「酔っ払いの放浪騎士に言われても全然信頼できん!」
「やれやれ、安心しろよシモザ。俺が村長やってるうちにそんな気生臭いことさせねーって」
「トラドさんがそう言うなら」
「ふーん」
「考え込んじゃってどうしたの?」
「セツカ。君は僕に初めて会った時どうだったっけ」
「さあ、覚えてないけど」
「この間きた人間も僕に怯えていた。シモザもだ。これが普通。今更思い出した」
「わ、わたしもすっごいびっくりしたな、そうそう。もう恐怖の象徴が目の前にいて生きて帰れないと」
「僕としては君のような反応がいいんだ」
「悪魔で魔王なのに人間が怖がるのが嬉しくないの?」
「そんな人間を見てて楽しいと思うのかい?」
「腰抜かしておっかしー、みたいな」
「小さい頃はそりゃそうだったけど。今は、僕の美学ってものがある」
「美学ときたか」
「ふん。ああ思い出した。そうだ、人間ってのはくだらないないことをする奴らが多い。それに比べるとここの連中は面白いからいいね」
「みんなのことが好きなのね」
「う、違う」
「ふーん」
「ふふふ」
「セツカ、その笑いをやめろ」
「みんなー!デモロ君がみんなのこと大好きだってさ」
「や、やめてくれ」
「デモロ君ありがとう!」
「俺達にはデモロ君がいなきゃだめだ!ありがとう!」
「いつもいつもありがとう!」
「う、ぐ、ま、またこのパターンか。よし、体調悪いからしばらく料理当番はしないでおこう」
「大丈夫かデモロ君!」
「いい薬あるぞ!」
「ヴァーレが万一に備えてエリクサーとか持ってるはずだな。えーっと、あほらあった」
「んー、くすぐったぞぉー、ふふふ」
「わたしの中にあるこの師匠の師匠のイメージがどんどん変わっていくわ」
「いらない、っていうか僕に善意を向けるなぁー」
「ね、怖くないでしょ?」
「そうですね。魔王なのは本当なんですか?」
「うん。三魔烏って伝説のモンスターの1人。っていうか大山羊さんもそうだし、あとは池の主っていうのもいて、たまにその変歩いてるみたいよ」
「はぁ、なんかもうついてけない。混乱してどうとらえたらいいのかわからなくなってきちゃった」
「シモザは相手が何者かあまり気にしないでしょ。ナミチもドンも、ムグラさんもみんなそういうところを気に入ってるみたいよ」
「まぁ、なるべく対等にっていつも思って接してますから」
「モンスターにもそうでしょ。だから交通課なんて仕事続けられてる」
「ですかね」
「相手が魔王だからって今更臆することもないでしょ」
「うーん、それは常識をかなぐり捨てるようでなんだか抵抗感が」
「対等はどこいった」
「なるべくですよ」
「魔王とも仲良くなれる。いい村よね。私にとっての理想郷ね」
「この関係性がずっと続くといいですね」
「うん」
「魔王とさえ、か。ところでなんで魔王がここにいるんですか?」
「セツちゃん知ってる?」
「うん。妹が怖いから逃げてきて行くあてがないから料理番として雇ったの」
「アンさん、僕の頭では追いつけないです」
「大丈夫よ。私もさすがに言ってる意味わかんないから」
「デモクっていうらしいんだけど、わたしは会ったことなくって」
「魔王より怖いんだ」
「頂点って呼ばれてるらしいよ」
「モ、モンスターの頂点ってつまりこの世界の頂点なんじゃ」
「そういうことになるのかな?」
「魔王の妹、普段なにしてるのかしらね」
「デモロ君が仕送りして商いしてるらしいよ」
「へー」
「デモロ君に似てるのかしら」
「たまにここに来てるからもしかしたら会ってるかもね」
「あ、あはは、なんかここが世界の中心って言われても納得だ」
「デモロ君」
「シモザか。どうかしたの」
「話してみたくって。魔王であるデモロ君はどうしてここにいるのかなって」
「その質問は僕を疎ましく思ってのことかい?」
「ただの好奇心。魔王と呼ばれるほどのあなたがここにいるのってなんでだろうっていう好奇心。大山羊さんは楽しいからって言ってた。デモロ君も?」
「そうだよ。ここにいるのは楽しい」
「そうなんだ。モンスターって何かこう、目的とかあったりするのかな。いつも交通課で接してるとこれからどこに行くんだろーとか、ちょっと機嫌悪そう、とか色々聞いてみたくなっちゃって」
「君達と変わらないさ」
「デモロ君には何か目的というか、目標ってあったりするの?ここにいるとそれが叶いそうとか?」
「目的か。最近ちょっと忘れてたけど1つある」
「へーどんなの?」
「ふん。いいよ、教えてあげる。勇者を作るんだ。伝承の勇者を」
「ゆ、勇者を?魔王が?」
「そうさ。人間は救いようがない。だから救世主が必要なんだ。人間の心を鎮める救世をもたらす存在が必要なんだよ」
「救世主、デモロ君じゃダメなの?」
「僕は、悪魔だから」
「いっそ天使になっちゃうとか」
「人間の世だからね。人間の手でないと君たちは納得しない」
「ふーん、そういうものかな」
「そうだよ」
「勇者ってどんな人なんだろーね」
「比類なき武力。強大な魔力。聡明な頭脳。人望」
「完璧人間だね。そんな人いるかな。部分的にはいるけど」
「そうだね。一番近いのはセツカだ」
「ああ、たしかに」
「トラドもいいかもしれない」
「へー、村長だしね」
「あとはジョー」
「ジョーさんって、受付の?」
「ああ。人望は素晴らしい。僕らも彼女はきらいじゃない」
「素直な言い方じゃないところがデモロ君らしいのか。なんかわかってきた」
「ふん。少なくとも君は違うね。まったく魔力感じないし。ま、人好きのする感じはいいけど、それくらいさ」
「ふっ、所詮Fランクですから」
「アンさんおはようございます」
「おはよ」
「ヴァーレさんも行ったみたいですね」
「ええ。それじゃシモザ、そろそろ私達も行きましょうか」
「はい」
「ふふっ、名残惜しそうね」
「いやぁ、ここってアットホームだから」
「あなたは気にいると思ってた」
「だからって誘拐は勘弁してくださいね」
「そうでもしないとこないから。でも次はちゃんと誘うわ」
「ぜひ」
「シモザ」
「あ、デモロ君」
「これを道中食べるといい」
「ちなみにこれは」
「導きのおにぎりさ」
「どこに導かれるんですかねぇ」
「君次第だ」
「まぁ、アンさんに食べさせてからでいいか。ありがと」
「う、うん」
「うむ。昨日善意を大量に浴びたから善良になっておる」
「面白い特性よねー」
「君達には三途の川越えハンバーグを用意してあげる」
「はいはい。ジョーと一緒に食べに来よっと」
「それじゃゼブラ、またよろしくね」
「ブヒヒーン」
「ねえシモザさん。ゼブラは移動のためとわかるけど、パンダ3はなぜここまで走らされたんだろうか」
「さあ」
「そこにいたからよ」
「理由はないのか。かわいそうに」
「パンダ3、元気でね。アンさんがいやになったらいつでもここに来ていいからね」
「ほら行くわよ」
「ああ、パンダ3が泣きそうな顔で連れ去れられていく。ごめんねー、バイバーイ」
「ではみなさんごきげんよー」
「シモザー、あとアンも一応、気をつけて帰れよー」
「はーい。トラドさんお元気でー、皆さんまた遊びに来ますねー」
「なんか帰りはあっという間って感じですね」
「楽しい小旅行だったものね」
「でも疲れた」
「最近兵士の警備が強化されてゼブラ乗ったままだと入れないから門くぐったら歩きよ」
「あ、はい。大丈夫です。ナミチさん怒ってるかな」
「大丈夫よ。じつは事前に伝えてあるから。ちゃんと有給消化されてるわ」
「おい」
「冗談よ。必要なら自分で申請してってさ」
「まったく」
「じゃあまた明日ね」
「はいー」
「はぁ、つっかれた。ん?あれ、いつの間にかいつもと違う道に入っちゃった。ここどこだろう。あ、市場だ。行ってみよ」
「お兄さん、お花はいかが?」
「僕ですか?そうですねぇ。ごめんなさい、今日は疲れていて」
「それならこの花なんてどうかしら。リラックス効果があるそうよ」
「あはは、あー、実は手持ちがなくて。なんせ急な旅路についたため。また来ますね」
「そう、いつもここでお店開いてるからまた来てねー」
「はいー」
「普段来ないから知らなかったけど、こんなところに市場があったんだぁ。ほんとにまた来てみよっと。へー色々あるんだなぁ」
「うわっ」
「あっ!ぶつかってしまってごめんなさい。よそ見していて」
「いや、僕も考え事をしていた。わるかった」
「いえいえ、見たところ大丈夫かと思いますけど、どこか痛んだりは」
「問題ない。ん?あんたどっかで見たことがあるような」
「僕ですか?ああ交通課で働いてるからじゃないかな」
「交通課か。なるほど」
「それより、僕もどこかであなたに会ったことがあるような」
「僕は知らないな」
「ふーん、気のせいかな」
「もう行くよ。じゃ」
「あ、はい。それでは」
「はぁ、うっかりぶつかっちゃうなんて。僕としたことがほんと疲れてるなぁ。アンさんにはしっかりと埋め合わせしてもらわないと。しかしさっきの人どっかで見た気がするんだけど、うーん。気になる。妙に気になるけど頭回んないや。今日はもう帰って寝よう。明日から出勤とか、旅行の後こそ休みたい」
「交通課か。顔を覚えられるのはまずいかも。そうだ、思い出した、あいつ、看板引き抜いたあと見に行ったら現場にいた奴じゃなかったか。僕のことを思い出されると面倒だ。今日はやめておこうかな。よし、今日のところは散歩がてら下見として城壁をグルっと回ってみるか。最近騎士まで見回りに出てるし、前にやった東と南はやめておこう。西からでて北に回ってみるかな」
「こっちはこっちで兵士が多いな。モンスターって北と西が危ないんだっけ。普段気にしないから忘れてた」
「おい君」
「は、はい」
「何をしている」
「散歩を」
「こんなところをか?」
「こんなところと言っても城壁沿いだし、大丈夫かなと。兵士もチラホラいるみたいだし」
「何かあってからじゃ遅いんだぞ。気分転換で普段いかないところをって気はわかるけどな、西と北はやめておけ」
「わ、わかった」
「気をつけて戻れよ」
「ああ、そうする」
「兵士に声をかけられると途端に不安になる。あんなとこ普通誰も来ないか。僕自身、今までも来たことなんてないから怪しまれるのは当然だな。街中から北に行ってみるか。一応見てから決めよう。というかそもそも何しようかまだ決めてないなぁ、とりあえずいつもの落書きでいいか」
「ここが北門か、さすがに通れそうにないな。うーん、逆に通っちゃえば追ってくる人いないのでは?よし、封印していた透明化を使えば、いけるか。でも不安だから右足だけ残しておこう。よ、よし。準備はできた。い、行くぞ、がんばれゴスト」
「なんだ?」
「どうした?」
「何かが動いたような」
「何も無いぞ。おいおい、遅番で来たばかりだろ。しっかりしてくれよ」
「いやぁ、たしかに動いてたような、なんかこう、靴だけが動いてるみたいな」
「ははは、怪談話しなら夜に限るがさすがにそんなネタじゃ恐くないぞ」
「ネタじゃないんだがな。おっかしいなぁ」
「し、心臓がいくつあっても、足りない。こわかった。すごく。これやっぱりやめようかな。あでも見つかると怖いから透明化は続けておこ。ていうか帰りも通らないといけないのか、うーむ。そうだ帰りは東側にいって入ろう」
「この辺りは人がいないな。よし、やるならここか。北門を出てやや東寄りっと。ん?何だあれ、誰かいる?人にしてはなんかデカいな。人というかあれは、デカい、ハト?」




