119. ショウとムグラのお城洗浄大作戦
「ムグラ様、お見えになりました」
「来たか。通せ」
「はっ!」
「おいショウ!いい加減あの落書きどうにかしろ」
「ああわかっている」
「だったらなんとかしろよ!でなきゃ落書きの洗浄なんて2度と引き受けんからな!どんだけ工数取られてると思ってんだ」
「わかってる。ムグラ、落ち着け」
「ちっ」
「例の暗闇坊主については調査を進めている。時間の問題だ」
「落書きの方は」
「愚問だな」
「あぁ?だったらすぐになんとかしてみせろ」
「ああもちろん」
「やけに鼻高々に言ってくれるな。ダメだったら落書きごとぶっ壊すからな」
「落ち着けよ。お前が本気でやったらリフォームどころじゃないだろ。だがよかろう。ノラ、あれを」
はいにゃ」
「なんだこのネコ」
「気にするな」
「準備完了にゃ」
「よし。おっとっと、ああ、インクをこぼしてしまった」
「大変だにゃ、今夜の舞踏会にはこの服で出るというのに」
「どうしよう、服が真っ黒だ。ああこまったこまった」
「なんだこの三文芝居」
「でも大丈夫。そんな時はこの魔法の布で一安心。この布で汚れたところをこすってみるとぉ」
「みるとぉ」
「どうなんだよ」
「あら不思議!汚れが綺麗さっぱりなくなってしまったわ!これで今夜の舞踏会に間にも合う!どうだ?」
「お前頭でも打ったのか?」
「とにかくだ。これを使えば簡単に消せる。解決だろ?」
「こんなもんがあるならとっとと出しやがれ!もったいぶってんじゃねーよ!」
「仕方がないだろ。こんなものがあるなんて俺も最近知ったばかりなんだ」
「出どころは」
「街中で露店商をしている女だそうだ」
「何者だ?」
「わからん」
「本当に、わからないんだな?」
「ああ」
「そうか」
「なんだ?心当たりでもあるのか」
「いや。だがお前の言動がおかしい」
「どこが」
「最近これの存在を知ったんだよな?それをすぐに採用するってことは信用のおけるものだということだ。だとするならだ、その商人はお前の知り合いである可能性があると考えた」
「だったらどうなんだ?」
「紹介しろ」
「残念だが俺は本当に知らん。この雑巾に間しては秘書のニーナが普段使用しているもの。使い方がわかっているから問題無いと踏んだのだ。彼女はそういった類のものを見抜くのが得意だからな」
「ちっ。どこの誰がそんな便利なもん売ってんだかな。ぜひとも知り合いたいもんだぜ」
「にゃにゃ!きっと市場の近くにある路地に出没するにゃ」
「やけに具体的だな。このネコ知ってんじゃねーか?」
「と、ニーナが言っていたにゃ」
「だったらその秘書から聞き出しておけ」
「わかった。戻ったら聞いておこう」
「さっきから気になってるそのネコはなんなんだ?」
「にゃーはマスコットにゃ」
「なんの?」
「この国の」
「おいショウ、こんなマスコットがいるなんて初めて知ったぞ。知名度あんのか」
「ない」
「それマスコットじゃねーだろ」
「ノラはなんというか、あれだ、癒しだ」
「癒し?卑しいの間違いじゃねーのか?こいつさっきからケーキばかすか食ってるだけだぞ」
「表現が汚いにゃ。その言葉遣いもこの魔法の布、略してマホヌノで綺麗にしてやるにゃ」
「あんまり略されてねーな。もう少し捻ったらどうなんだ」
「うるさいにゃ。そんなこと言うとこうだにゃ。この雑巾でおーじを消してやる!」
「なんで俺!」
「手頃だから」
「や、やめろ!雑巾で顔はやめてくれ、ぐわぁぁぁ」
「ん?」
「おいおい」
「どーなってるにゃ、ぶくぶくおーじが痩せたにゃ」
「この姿はかつての俺な気がする。どうなっているんだ」
「あー、おいその雑巾って油汚れを取るんだったな」
「んにゃ」
「脂肪って油だから、とか?」
「す、素晴らしいじゃないか!これならもうどれだけ食べても太らない!究極の雑巾だ!」
「まず食いすぎをやめろよ」
「そうだ!この雑巾で服を作ったら、来ているだけで脂肪が消滅していく」
「ボロ雑巾王子の誕生にゃ」
「消滅って、起きてる現象はやばいのによくそんな発想できるな。けどなぁショウ、顔だけ痩せても腹が出っ張ってんぞ。アンバランスにもほどがある」
「ふっ、そんなことか。実に容易い。ノラ、頼む」
「んにゃ」
「ふふふ、どうだ」
「まー、昔みたいにはなったな」
「でもちょっと痩せ過ぎじゃないかにゃ」
「脂肪がないのもよくないんじゃないか?なんにせよ今後は適度に食事を取れよ。折角痩せたんだから」
「どれだけ食べても元通りになるのだから気にすることでもなかろう。さてちょっと失礼する。服がずり落ちるから着替えてくる」
「この雑巾にはこんな使い方もあるのか」
「私も驚いた。じゃない、おどろいたにゃー」
「あん?」
「ありえん」
「いい加減諦めろ」
「どう考えてもおかしいだろ」
「大臣と王妃に言われたんだろ?」
「組織の重役が雑用、それもこんな肉体労働をさせられるなんてあり得んだろ」
「はっ。たまには現場の苦労も感じてみやがれ。そんなだから丸っこくなったんだろーが」
「今はスレンダーだ」
「ズルした結果だろ。この雑巾使えば簡単に汚れが落ちるんだ。今までに比べりゃ楽なもんだろ」
「だからって城全体を掃除っておかしいだろ!」
「お前ん家なんだから自分で掃除するのは当然だろう。デカい家に住むと苦労するって典型的な話しだな。ざまーみろ王子さま」
「俺は豪勢な環境を好んでいるわけじゃないぞ」
「ばくばく食っておいてよく言う」
「食事することが楽しいんだから仕方がない。それはそれだ」
「だからって食いすぎだ。しっかり働いてしっかり燃焼しろよ。健全にな」
「この重労働が健全なものか」
「つ、つかれた」
「王子」
「うん?ニーナか。どうした」
「こちらの書類片付けておいてください」
「今死ぬほど働いてきたんだが」
「ご苦労さまです。民の生活を知りそして寄り添う権力者。素晴らしいかと」
「だろ」
「じゃあ本日中に確認お願いしますね」
「無理言うなよ。それ全部大臣にやらせておいてくれ」
「いいんですか?」
「構わん。今朝ざっと見たがどれも大した内容じゃない」
「わかりました」
「大臣に任せたことは母上には言うなよ。また来られると面倒だ」
「しょーちしましたー」
「ふっ、大臣め。煩雑な俺の苦労をちょっとは噛み締めろ」
「大臣さんおはようございます」
「ええ、おはようございますニーナさん。王子は?」
「日課のダイエットに向かいました。ああ、あれです。窓から見えますね」
「おや今日は煙突ですか。綺麗になれば料理長が喜びますな」
「王子から依頼です。この大量の書類処理をお願いできますか?」
「ええもちろん。任されましょう」
「なんで嬉しそうなんです?」
「ほっほっほっ。王子が書類に埋もれていれば他の事など出来ないのですがね。よほど掃除が好きとみえますな」
「ふーん。もしかしてこの内容の薄い書類の束って」
「王妃からのプレゼントです」
「なるほど。どっちに転んでも大変な目に遭って、ささやかな仕返しのつもりが自ら大きな罠へかかりに行ったわけか。愚かねー」
「最近は食べてばかりで周りの者から良い印象がありませんでしたからな」
「丁度いいってことですか。本人も労働のあとの食事は最高だ、とか言って満足してるみたいだし」
「実に素晴らしい采配です。さすが王妃。ところでノラ殿は王子のところですか」
「そうみたいです」
「ではノラ殿もしばらくはそちらにいかれるでしょうな。それはやや寂しいところですが、城も王子も綺麗になっていくので良いことずくめですな」
「平和ですねー」
「ですなぁ」
「報告」
「ぽっ」
「人間の城が強化」
「なんですと」
「城の形に変化はなし。ただ新品同様ピカピカ」
「まさか、我が軍の進軍を察したとでも。この短期間で新しく?」
「白鳩様。いかがに」
「準備は進めなさい。ですが様子を見ましょう」
「見張りを」
「ええ。ここまで秘密裏に進めていた計画が漏れていたのでしょうか。まさかマルマルが?調査を進めなさい」
「了」
「人間共め。みくびってはいませんでしたが、やってくれますね」




