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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
第3部 伝承の勇者 3−1.変わりゆく時代

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113/124

113. あばばばばば

「デモロいるかぁ」

「村長か。僕に用があるなんて珍しい」

「まーな。これ何かわかるか?」

「これは、小さい筒?これどこで手に入れたの?」

「ソノマだ」

「ソノマねぇ。答え、わからない」

「解析頼めるかな。大山羊と2人でもいい」

「いいよ。やってあげる。その代わりもしこれが君にとって不要なものなら僕がもらってもいいかな?」

「ああ構わないぜ」

「よし。じゃあ大山羊君を誘ってこよう」

「よろしくなー」



「というわけで大山羊君。久しぶりの実験が幕を開ける時が来た」

「うむ。腕がなるのである」

「そうだ、主も呼ぼうか?」

「池の君はまだ動けないのではないか?」

「この間歩いてたのを見かけたよ。だいぶ馴染んできたみたいだ」

「そうであるか。事務の君2号も魔力コントロールがうまくなっているようであるし、その様子なら会話もその内できるであろうな」

「まあ今日のところはやめておこっか。またジョーに何か言われると困る」

「デモロ君は事務の君2号に弱いのである」

「だって悪魔であるこの僕に心からの善意を向けてくるんだよ?この魔王に。あり得ないよ」

「彼女は熱い心をもっているのである。吾輩は好きである」

「そーかい」

「さて準備は大体整ったぞ、デモロ君」

「始めよっか」



「何から試す?いつも通り?」

「うむ。まずは外装から調べる」

「じゃあ周囲の防壁は僕が。いいよ」

「うむ。では魔力を込めるのである」


「どう?」

「ふーむ。この筒、切れ目がないのである。外装に這わせた魔力がどこにもくぼみを感知しておらん。傷さえないやもしれん。驚異的な丈夫さである」

「へー。トラドも変なもの拾ってきたもんだ」

「ふむふむ。表面にスイッチのようなものもない。中は空洞であるようにも感じる。しかしスカスカというわけでもなさそうな感触が返ってくる」

「ちょっとかしてよ」

「うむ」

「軽い。頑丈さが取り柄で手に収まる中が空洞の筒。用途は何だと思う?」

「そうだな。特定の条件下で動作する何かか。これ単体で考えるなら、ふむ」

「考えるなら?」

「まだ思いつかん。デモロ君はどうであるか」

「僕も思いつかない。何かの部品かな」

「吾輩もそう思っておる」



「うむ。次は強度の確認をするのである」

「え、もう?いきなり壊してしまったらつまらないよ」

「これだけ丈夫なのである。魔力を当て続けても反応はなし。もはやそれ以外手の内ようがない」

「もうちょっと慎重にやりたいなぁ」


「もしこれが何かの装置なら、上手く動いて欲しいね」

「うむ。そうであるな。装置なら、起動。そう、起動までのプロセスがあるはずなのだ」

「そうだねぇ。うん?なんかいまバチッて」

「ふむ、確かにバチバチしておる。これは雷発生装置のようであるな。だんだんわかってきたぞ」

「それはいいけど、大丈夫?」

「うむ!」

「大山羊君、早く止めてよ」

「そう言われても。ま、まずい、まずいのである、止まらないのである!あっ!あばばばば、たす、たす、け、てーぇばばばばばば」

「ちょっとこっちこないでよっ、うわっぁあがががが、は、はな、れ、ろ」

「あばばばば」

「あがががが」


「おやおや。三魔が集うと来てみれば。この2人は相も変わらず愚かなり」



「んー?ねえトラドさん、なんかお肉が焼けた香りがしない?」

「ほんとだ。セツカってそういうことにはすぐ反応するよな」

「だって美味しそうな匂いがするんだもん。お腹空いてきた」

「同じく。腹減ってきたな。ターナ、今日は焼肉にしようぜ」

「そうだねぇ。それにしてもこの香り、ちょっと癖がある。ラム肉かしら」

「うむ。ご明察である」

「うわ!どうしたの大山羊さん、真っ黒じゃん」

「まったくなのだ。事務の君よ。吾輩死ぬかと思ったのである」

「ほんとほんと。ジョーの善意の方がまだよかった」

「デモロ君まで。今日はお料理当番やめておくかい?」

「やる」

「そう。あんまり過激な事にならないようにしときなよー」

「ふん」


「んで結果は?」

「最悪である。見ての通り吾輩のカシミアはこんがりチリチリ」

「僕もデモクの所業を思い出しちゃったよ」

「じゃなくて、モノはわかったのかって話し」

「そっちであるか。うむうむ、これは音声認識で動く雷発生装置であるとみている」

「どういうこと?」

「特定のワードを口に出して言うんだよ。それに反応して雷が出るみたい。何かの部品なのか、これだけで使うのかはわからないけど」

「何て言うと動くんだ?」

「それをここで言ったらまた同じ目にあってしまうのである」

「そうそう。さすがの僕らもちょっと辛い」

「これに聞こえなきゃいいんだろ?耳打ちでいいから教えてくれよ。試したいことがあるんだ」

「ふーむ。よかろう。どうなっても知らんぞ。ごにょごにょである」

「なるほど。よーし」



「よいか!村長の君!絶対こっち来ちゃダメなのである!」

「もし近づいたらハトの城まで飛ばすからね!」

「はいはい。ったく、そんなことが簡単に出来るなら俺達の潜入任務とかバカらしいじゃねーか」

「防壁の準備は出来たよ。もしこれを破れるなら僕らの身の保証はない」

「うむ。念のため吾輩もいつでも遠くへ飛べるようにしておる」

「そろそろ始めるぞー」

「いいよー」


「起動」

「大丈夫かな。トラドがいなくなると僕としてもちょっと困るんだけど」

「うむ。危なくなったら装置を飛ばす」

「うぐぅぁ、ああ、あ?ああ。あー、これアイズの雷よりは弱いな。けど十分だ。むしろ丁度いい。これがあれば単身でも最大火力をだせる」

「あいつ、なんでなんともないの?前から思ってたけど人間ってやたらと丈夫だよね」

「うむ。尋常ではない耐久性である」

「うずうずしてきた。そういやデモロの奴、防壁張ったとか言ってたな。へへっ、試してみるかぁなっ!」


「おいトラド!こっちに来るな!」

「ちょっと防壁殴るだけだって、おりゃ!」

「うわぁ。ちょっと!いきなり何するんだ、危ないだろ。にしても僕の防御を破ったか。トラドって思ってた以上に危ない奴だな。ふーん、これは遊び甲斐があるなぁ、ふふふ」

「よしよしいけるな。これは切り札として持っておこう。おいデモロ、これは俺が使う。いいよな?」

「いいよ。それはもう見たくない」

「いいもん拾ったぜ。これって動力はなんなんだ?」

「たぶん魔力じゃないかな。大山羊君はどう思う?」

「うむ。きっと魔力だと思うのである」

「わかった。便利だな。ほんと、これだからソノマはさいこーなんだよ」



「わけのわからないモノをよく使う気になるね」

「ふむ、デモロ君もそれをデモクに渡しているであろう」

「僕が使うわけじゃない」

「無責任である」

「いーの、僕は悪魔だから」

「悪魔ねぇ。悪魔って人が苦しむのを見て楽しむんだよな?やな性格してるよなぁ」

「その言い方はよくないぞ、トラド。いいだろう、悪魔の流儀を教えてあげる。悪魔は静かな湖面を見てると波紋をお起こしたくなる奴なんだ。小石をなげて起こる波紋は綺麗で静かで規則正しく波打ち広がる。自然が生み出す真円。それを色んな場所に起こすと波紋同士がぶつかって新たな波を作る。その様を見ているのが楽しいのさ。美しい光景デモロはある」

「結局嫌がらせするのが楽しいってことだろ」

「違うよ。美学が違う。ばちゃばちゃやったり大きなものを投げ込むのはダメだ。波が乱れるようなやり方は品性を損なうから僕は嫌いだ」

「よくわかんねーなぁ」

「ふっ、君如き人間がこの僕の美学を理解するの難しいようだ」

「はいはい」


「おや、事務の君2号であるな」

「ああ、魔法講座に来てくれた人の見送りかな。戦士じゃないのに来てくれたんだと」

「魔法講座か。戦士以外にも宣伝効果があったのであるか。上手くいっておるのだな」

「そうらしい。今後も期待だな」



「それじゃ、僕は帰るよ」

「ゴストさん、また遊びに来てくださいね」

「あ、ああ。またいつか。じゃあ、さよなら」

「はい。お気をつけてー」



「なんだかんだでちょっと楽しかったなぁ、皆親切だった。無茶苦茶だったけど。帰ったらどうしよう。なんか、自分のやってることがバカらしくなってきた。でも騎士はムカつくし。フゥ、しばらくはのんびりしようかな」


「ん?あれは、行きに見たシマウマだ。パンダもいるし人も、2人。増えてる。もしかしてサーカスとか芸人なのかな?もうちょっと残っておけば良かったのかもしれない。今更か」


「そうだ、暇つぶしに魔法の練習でもするか。結局闇を生み出すことしか出来ないけど、何かの役に立つといいな」

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