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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
第3部 伝承の勇者 3−1.変わりゆく時代

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112/126

112. ありがとう魔王

「あはははは!さあ戦士諸君、今日もひれ伏すがいい。僕のインスピレーションはとどまるところを知らない!」

「うぅもうダメだ」

「おのれ魔王め」

「今は笑っているがいいさ。だが必ず、必ず俺達は皆揃って美味しく完食してみせる」


「相変わらずの寸劇だな」

「相変わらずだなんて、ゴストさんもだいぶ慣れてきましたね」

「嬉しくない」

「いらっしゃい」

「ま、魔王」

「デモロ君、こんにちは。いつものを」

「いつものか。仕方がない」

「今日は2つお願いします」

「2つ?ああそっちの彼の分か。いいだろう」

「ありがとう優しい魔王さん。ほら大丈夫だったでしょ」

「くっ、ジョーはどうも苦手だ」

「魔王に天敵あり、か。勇者じゃあるまいし」



「さあどうぞ。普通のだから。ほら、美味しい」

「でももしこの人の胃袋も」

「ふふっ、聞こえてますよ?」

「い、いただきます」


「ふーん」

「な、なんだ悪魔め」

「君は変わったものをまとっているね」

「な、ななな、なんのことだか僕にはわからないな、ああさっぱりだ」

「ゴストさんってわかりやすい方なのね。私は本当に何のことかはわからないけど」

「それを使って何をするのか知らないけど、闇に呑まれないようにね」

「フン、それなら問題ない。なんせ僕は闇を操るからな」

「そうかい。ならいいけど」



「おい、さっきの見たかい」

「見た見た」

「もしかして、あれで魔王を滅することが出来るんじゃないか?」

「今こそ皆の力を1つにして魔王を倒すんだ!ってやつ?」

「そうそう、力っていうか気持ちだけど」

「よし」

「おい戦士諸君、聞こえていたぞ。おい!や、やめるんだ、変な顔でこの僕に近づくな」

「ああ、いつも美味くて面白い食事をありがとう魔王」

「うぐっ」

「おお、いつも楽しい時間をありがとう魔王」

「ぐふっ」

「君がいなかったら俺達は荒んでいたに違いない、ありがとう魔王」

「君のおかげで俺達は強くなれた、ありがとう魔王」

「くっ、昇天してなるものか」

「おいおい、皆その辺にしとけ。このネタはまだまだ使えるからな、へっへっへっ」

「あ、その悪意は心地いい」

「しまった、回復させるいとまを与えるな!」

「おお!とりあえずありがとう魔王」

「あざっす魔王!」

「ふん、バカだな。上辺の善意など悪意に等しい。さて、君たち覚悟していたまえ。次回の料理はセツカ仕様だ。世界の彼方へ吹っ飛ぶ美味しさを存分に味わうがいい」



「みんな快調に飛ばしてるねぇ」

「ターナさん、仕入れから帰ったところですか?おかえりなさい」

「ジョー、変わりないかい?」

「はい。皆さんいつも通りです」

「そう。デモロ君が無茶してないか心配だったけど杞憂だったみたいね」

「さすがにそこまで分別がない子じゃないですよ」


「この2人気は確かか?あれがいつも通り?分別のない、子?なんだかんだでジョーさんもやはり」

「こっちのおにーさんは?見ない顔だけど戦士には見えないわね」

「こちらはゴストさん。魔法を使えるようになりたくて訪れてくださった方です」

「どうも」

「おや珍しいね客人ね。それで使えるようになったの?」

「えへへー、なったんですよ。ね」

「あ、ああ、はい」

「へぇ。じゃあゆっくりしていきな」

「いや、長いをする気は」

「もうお帰りになるんですか?」

「ま、まあもうちょっといても、いいかな」

「ふっ、わかりやすい子だね」

「わかりやすくて悪かったな。フン」



「リーメは?」

「外で騎士と魔法の練習しているはずですよ」

「騎士と?」

「はい。光の騎士ピックァリィンです。思い出してきました。下級か中級の騎士だったはずです。名物騎士ですよ」

「ああ例の。トラドから聞いたことがあるわね。そいつが何の用で?」

「魔法を強化したいそうです。同僚達に置いていかれているからだとか」

「なるほどねぇ」

「ただ魔法の素養はとても高いようです。ちょっと悔しいです」

「ははは、あんたでもそう思うことあるのね」

「そりゃありますよ。上手く出来ないことなんて沢山あるもん」

「まあ誰にでも才能ってあるものだからね。来てもらった成果があったなら村としては良かったんじゃないかな」

「名物騎士にいい思い出はありませんから、あまり好きではないので複雑な心境です」


「ジョーさんも騎士にいい印象がないんだ」

「騎士といっても一部の人だけですよ。ああいうちょっとズレた騎士は自分本位な言動で動くから事後処理が大変だったんです」

「やっぱり騎士はろくでもないんだな」

「全員じゃないですよ?ゴストさんは騎士が嫌いなんですね。まぁさっき言った通り一握りの騎士は騎士として相応しくない人物がいるのは確かです。しかもそういう人ほど目立ちますから、騎士全体の印象が悪くなってしまうのも仕方がないですね」

「あの騎士も迷惑ばっかりかけてるんだろ」

「うーん、活動内容事態は割とまともだったかな。ただ破天荒なことをするので余計なものがついてまわるというか」

「案外そういう騎士が大成するもんだったりするんだけどねぇ」

「そうなんですか?」

「だとしたら世も末だな」

「だってほら、近衛騎士は全員が破天荒な奴ばかりだからね」

「たしかにそうですね」


「そういえばリーメ先生に用があるんですか?」

「仕入れに出る前についでに頼まれたものがいくつかあってね、それを渡したかっただけよ」

「じゃあ私が代わりに渡しておきましょうか?」

「話したいこともあるから今回はいいよ。ありがと」

「わかりました。もし先にリーメ先生に会ったらターナさんが探してたってお伝えしておきます」

「うん、よろしく」

「あとセツカさん戻ってますよ」

「お、なんだ帰ってたのかい。じゃあ晩御飯の準備でもしてやろうかねぇ」

「ふふっ、きっと喜びますよ。最近はデモロ君のスペシャル料理でちょっとお疲れみたいなので」

「デモロ君もずっと待っていたからね」

「はい。じゃあ私はこれで」

「僕も部屋に戻るよ」

「はいよ。お腹すいたらまたおいで」



「入るよトラド。ポールからの預かり物だ」

「ん?ターナか。助かる」

「何を依頼したんだい?」

「悪王一味の動向だ」

「今更だね」

「そうでもないんだ。南の樹海に行った時に一味の1人、ダグに会った」

「ふーん」

「問題はあいつは人間をやめていたこと。半魔だったんだ」

「それはまた思い切ったことしてるね」

「奴らはまだ何か企んでいる。そもそもあいつらの目的は未だによくわかっていない。愉快犯と思われていたが、そうでもなさそうでな」

「危険分子であることは依然変わりないと」

「そういうことだ」


「そのダグってのは何してたんだい?」

「ただ遭遇した。偶然俺達を見かけたんだろう。後腐れがないようにきっちり話したかったんだんじゃないかな」

「あんた達はいつになっても不器用ね」

「そうだな、そうじゃなきゃもっと上手く出来たのかもな」

「話した結果、馴染みと対峙しても大丈夫かい?」

「もちろん。元々感傷で手が止まるようなことはない」

「そうだったね、あんたはそうだった。だから王のコマ使いなんてやってたんだもんね」

「やな思い出だ」


「ポールに調べさせたのはダグの出現に関してだ」

「というと?」

「おそらくダグは侵入者を感知して追ってきた末に俺だと知った」

「つまり一味は南の樹海に陣取っていると」

「そういうこった。ポールの調査によるとどうやら間違いなさそうだ」

「あんたが戻ってから依頼したんだろ?この短期間で結果を出すとはさすがポールさん、元騎士団長ってだけはあるのねぇ」

「どうかな。俺の時もそうだが、あいつはわざと出てきた気がする。俺達はここにいると知らしめるような」

「何のために?」

「わからん」

「困った奴らねぇ」

「まったくだ」


「だが1つわかっていることはある」

「へぇ」

「南の樹海はマルマルにとっては庭みたいなもの、奴にしてみれば古巣に戻ったようなものだ。それが意味することは、穏やかではないだろうな」

「居を構え縄張りを示した。確かに穏やかな話にはならなそうだねぇ。さて、私はそろそろ戻るよ。セツカちゃんがご飯を楽しみにしてるからね」

「あいつも戻ったか」

「気づいてなかったの?あんまりこん詰めないようにね。ああそうだ、例の騎士さん。ちょっと悪目立ちしてるから気をつけておきな」

「りょーかい。休憩がてら様子見てくるか」



「はっはっはっ。この槍でモンスターを殲滅してご覧に入れましょう。我が槍に貫けぬモノはなし。魔王といえど我が前にひれ伏すのみぞ。ん?」

「うむ。騒がしいのである」

「あら、大山羊さんこんにちは。どうされたのです?」

「うむ。何やら騒がしいようなので見に来たのである」

「そうでしたか。すみません、少し熱中してしまいました」

「君が熱中するとは珍しい」

「実はこの方の魔法が素晴らしいものでして。なんと魔法で陣を描き武器を作ってしまったのです」

「ふむ。それか。器用であるな。ふむふむ」

「ヤギだと、まさか」

「ピカさん、こちら大山羊さんです」

「器用な大山羊である」

「ま、魔導士大山羊か!まさか、まさかこんなところで会うことになるとは!」


「魔法で武器を作るか。なるほど。ふむ、こうであるな。うむ出来た」

「なっ!」

「あらまあ、大山羊さんも同じようなものを」

「ふふふ、吾輩器用故、この程度容易いのである」

「なんと、私はやはり」

「ちょっと大山羊さん、この方は悩んでここに来られたのです。当てつけるような真似は」

「釘を刺しに来たのである。吾輩達を殲滅などと口走っておった。しかしその程度でモンスターを殲滅とは片腹痛いにである。はっはっはっ」

「それは道理。口が過ぎたようです。謝罪しましょう。申し訳ない」

「うむ。君とてよもや出来るとは思っておるまい。最上の者でなくとも光の君に抗えるであろうからな」


「立場上大きな声で言うことは出来ないのだが」

「うむ?何であるか?」

「実は私はあなたのファンでして!」

「大きな声で言っておるな」

「あらまあ」

「自由自在、変幻自在に巧みに魔法を操る勇姿を思い描いては憧れておりました。此度この村に参ったのも叶うならそのお姿を一目収めようと馳せ参じた次第!」

「う、うむ。この勢いはガチであるな」

「よかったですねぇ」

「ではしかと目に焼き付けよ。吾輩の器用な魔法の技を!おお、なんか久々に熱くなる!」

「でもそれはまたにしてくださいね」

「む、そうであるか。無念」

「最上の実力を見ることができると期待したのですが、真残念です」


「最上であるか」

「はい。近衛に匹敵する者といえば最上の者のみ。中でも三魔烏は伝説です」

「うむうむ」

「最上の者は三魔以外にもいるのですか?噂では三魔烏を超える者もいるとも」

「然り。西のトノ、我ら三魔は周知のこと。他にもいるが、そうであるな。三魔を超えるとなると、頂点か、災厄の者であるな」


「災厄の者だと!知っているのか大山羊」

「うむ?村長の君。いたのか」

「今来た。それより、そいつはあの頑丈なポールを再起不能にした奴だ。騎士も長年追っている化け物だぞ。ピックァリィン、お前も知ってるだろ」

「はい、存じております。魔王以上に危険視された存在」

「大山羊、知っていることがあるなら教えてくれ」

「うむ。名前くらいだがな。名はディザス、確か悪魔である。うむ、デモロ君の知り合いだった気がするのである」



「はーはっはっはっはっは。戦士諸君、今日も僕に挑みに来るがいい!」

「ふん、魔王よ。そう容易くやれると思うなよ!お前の技はもう俺達には通用しない!」

「そうだ!レベルの上がった俺達にお前の力など、もうどうってことはないんだよ!」

「ほう。言うじゃないか。この僕の力を甘く見ているようだな」

「ははは!甘い甘い!この程度のモノ、いくつもの屍を越えてきた俺達なら乗り越えられるのさ!」

「なるほど、ならばこれならどうだ!セツカ仕様、超激甘、ゴーヤチャンプルだ!」

「うっ」

「あ、あまっ!」

「ゴーヤの苦みと、このトウキビの甘さがなぜか上手く絡み合い何でか異常なほどに甘みを引き出している!」

「ゴーヤが、ゴーヤが激甘だ!」

「甘さが幸せで魂が抜けそうだ!」

「もう、だめ、だ」

「あ、甘くみすぎていた」

「魔王、恐るべし」

「あはははは!」


「またやってる。何言ってるんだあいつら。というかあれを食べて苦しいで済むくらいでなんて、この村の人間はやっぱりおかしい。僕は死んだのに」

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