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あの、わたし事務なんですけど  作者: Tongariboy
第3部 伝承の勇者 3−1.変わりゆく時代

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111. 光と闇

「こんな魔境来るんじゃなかった。人間の住むところじゃないだろ。もしかしてここにいる連中は全員が悪魔なんじゃ。どうすればいい、早く帰りたい、でも外には悪魔が。ああ、怖い。外に出るのが怖い。それに」

「光よ!」

「さっきからなんなんだ。騒がしいし、ピカピカチカチカと目障りだ。煩わしいことを。僕への嫌がらせか?」



「すみません、ゴストさん。お加減はいかがですか?」

「誰だ?ドア越しだと分かりづらいけどこの声、もしかしてジョーって人か。放っておいてくれればいいのに」

「お薬ここに置いておきます。あと食事も」

「あの!その、せっかくだけど大丈夫だから。気にしないでくれていい」

「本当に大丈夫ですか?体調がすぐれないと聞きましたが」

「大丈夫」

「そうですか」

「わざわざすみません」

「何か必要なものがあれば言ってください」

「わかった。この人は、悪魔じゃないのかも。でも、他の連中は。う、また光ってる、一体なんなんだよ」


「ちょっと待って、ジョー、さん」

「はい」

「さっきから外が騒がしいようだけど、何かあったんですか?」

「外ですか?ああ、騎士が魔法を使っているんですよ。光の騎士、たしか名物騎士だったような?」

「騎士、だと。なんで騎士がここにいるんだ?戦士とはあまり仲良くないっていうのはたまに聞くけど」

「すみません、そこまでわからなくて、ごめんなさい」

「そんな、いや、別に。わかった、もう大丈夫」

「はい、では失礼します。早く良くなるよう祈っています。この村で楽しく過ごしていただけたら嬉しいですので」



「騎士め。やっぱり大っキライだ。周りの迷惑なんて考えもしない。許せん。それに、何やっているんだ僕は。あの人は人間だろ。他の人だって。よし、ここに来た目的を思い出せ。魔法を使えるようになってやるんだ!まずは、まずはこの部屋から出よう。よし、出るぞ。いつまでも騎士の好きにさせてたまるか!」


「よし、出るんだ僕。ド、ドアの先に悪魔はいない、いないんだ。大丈夫大丈夫、のはず。こ、怖い。そうだ、ドアの隙間から確認してみよう。外で見張っていて開けたら目が合うとかないよな?うう、ここは恐怖の館だ」


「ほっ、よしよし誰もいない。いないよな?大丈夫だよな?ふぅー、うん誰もいないぞ。まずは一歩。ふぅ、この一歩はただの一歩でも僕にとっては、うん?これは、ジョーさんが置いていった薬、と手紙だ。腹痛に効きくお薬です。腹痛?よくわからんけど本当に心配してくれてたんだな。気づかいなんて普段されないからすぐに思いつかなかった。はぁ、騎士も騒がしいし、バカやってないでお礼言いに行こう」



「リーメ殿、言葉を紡いでもどうにも効果を感じません」

「あらまあ、困りましたねぇ。ピックァリィンさんは元々それなりに魔法お使いになりますから、それを伸ばす方法となると。ごめんなさい、まだ私にはそのための知恵がありません」

「そうですか。ここならばもしやと思ったのですが」

「ご期待に添えず」

「いや、お気になされるな。これも全て私の未熟さ故」

「すでに使える人の力を更に高める方法。今後の研究課題の1つですね」


「そうだわ!誰も出来なかったのですっかり忘れていましたが、1つ別の方法があります」

「おお、是非ご教授いただきたい」

「ですが言葉よりも難易度は高いものです」

「お願いします」

「絵を描くのです」

「絵?」

「はい。要はイメージを描くことさえ出来ればいいのです。言葉なり、図形なり」

「なるほど」

「ではやってみましょう」


「リーメ殿。どのように描けばいいのです?」

「起こしたい現象を絵で描いてみてください」

「ふむ。では光の槍を作ってみようかと。何で描いたらいいですかな」

「地面でもいいですし、紙をお持ちしましょうか」

「いつでも出来る地面にしましょう。イメージ。よし、ここをこうしてっと。あ!しまった、うーん。間違えると修正が難しい」

「やはり紙をお持ちしますね」

「うーむ。いや、待たれよ。絵さえ描けていれば何でもよいのですな?」

「はい、構いませんが」

「わかりました」

「どうされるおつもりで」

「私の得意なもので描けばいいのですよ。この光で」


「ピックァリィンさん、絵がとてもお上手なのですね」

「たしなみです。実力では周りの騎士には差を広げられてしまいまして。そんな時、気晴らしにいつも絵を描いていたのです」

「そうでしたの。とても素晴らしい趣味ですね」

「それほどのものではありませんから」

「いえいえ、これは本当に見事ですよ。ただこれは円を描いた抽象性の高い図形に見えます。槍の形ではないようですが、いかがです?イメージしたものは描けていますか」

「はい」

「ではその絵にイメージと魔力を込めて」

「イメージ、魔力」

「そうです。その調子」

「光よ、集え、集え、集え!」


「それにしてもこの絵、とても素敵だわ。外から中心に向けて渦を巻くような流れを描いている。その模様も中心に向かうほど細やかで繊細な、これはもはや芸術よ」

「はぁぁぁぁ!光よ集え!」

「円の中心が盛り上がって槍が形作られて、すごい、すごい魔法よ!いわば魔法を形成する陣だわ」

「我が敵を貫けっ!光の槍、ルミナスランス!」

「お見事よ、ピカさん、お見事よ!」

「おお、おおお!ハモン殿のように光を槍に出来た!やりましたよリーメ殿!ああ、私はいまサイッコーに輝いてるぅ!」


「あれは魔法陣と名付けましょう、抽象度を高めることでイメージをより具体的に絵に表すことができ且つ円という枠を作ったことでどこまで描くのかを明確にする、そうだわ、円の大きさで魔法の規模もイメージできるかもしれないわね。待ってリーメ、ということは本来のポテンシャルを引き出せていない人はもっといる可能性がありますね、であればもっと大勢を呼んで皆さんに合った方法で魔法を行使していただきそして、ああ、だめだわ、行使するために必要な教える講師が足りないわ」

「リーメ殿」

「ですが王子や魔法大臣に掛け合って、いえ、まずはトラドさんを押さえてしまえばいいのよ、そうよリーメ、これはチャンスよ!トラドさんの弱みなんていくらでも」

「あのー、リーメ殿」

「ジョーやセツカさんから情報を引き出して」

「リーメどのー」

「え?ああピカさんどうされました?」

「その略し方はちょっと。ではなくて熱中しているところ申し訳ないのですが、この槍、どうやって消したらいいのでしょうか?」

「消す?そんなもったいない」

「いや結構消耗が激しくて、任意に出し入れできないと辛いのです」

「そうですか。そうですね、危険なものですから消さないといけませんね。ですがピカさん、いっそずっと持ち続けてはいかがでしょうか?そうよ、そうすれば」

「ストップ!リーメ殿は研究のことになると周りが見えないタイプとお見受けする。ちょっと冷静になられよ」

「ごめんなさい。あなたの仰る通りね。私としたことが、失礼しました」

「いえいえ。夢中になったら客観的に自分を見つめるようになさるのがよいかと。自分がどにように周りに見られているのかを知るのは大事なことでしょう」

「お恥ずかしい限りです」



「周りが見えていないとはよく言えたものですね。そう思いませんかシユ」

「落ち着いてブル、剣抜いちゃだめだから」

「自分のことを棚上げしているあのポンコツ騎士を成敗します。離して、離してください!」

「ブルがこんなに怒る姿って珍しいからこのままにしてみたいけど、うーん、でも騎士に手を出すのはちょっとなぁ」

「ぐぬぅー、あんな身勝手な騎士を放置しておけますかー!」

「もう騎士じゃないんだから気にしなきゃいいのに。真面目ねぇー」



「ジョー、さん」

「あ!ゴストさん、もうお体はよろしいのですか?」

「心配かけました」

「大事にならずに良かったです」

「はい」

「あ、ゴストさんだっけ?よかったー、出てこれたんだ」

「お、お前は。悪魔め、僕は負けないぞ」

「やっぱもうちょっと寝てたほうがいいんじゃないの」

「もー、セツカ先輩。ちょっと黙っててください」

「だまっ、うう、わかりました」


「ゴストさんは今日どうされますか?」

「出来れば魔法の練習を、あ、でもそいつに教わるのは無しだ」

「ふーんだ、頼まれたって教えてやるもんか」

「ふふっ、仲良いですね。じゃあセツカ先輩はリーメ先生を呼んできてください」

「はーい。ちょっくら行ってきますかー」



「あらあらゴストさん、よかったわ」

「今日もお願いします」

「ええ。先日のことはこちらの配慮が足らず申し訳なかったわ」

「なんとうか、ここはおそろ、いやその、中々個性的なところですね」

「ふふふ、普通に考えたらやはり常識から外れた人達が集まっていますからね」

「そ、そうですか」

「さて、そんなことより魔法です」

「はいお願いします。あれをそんなことで片付けるのか、さすがこの村の住人」


「風の魔法でしたね」

「前回やってもまったく使えなくて」

「そうですねぇ、ではジョーと同じ要領でやってみましょうか」

「ジョーさんと?」

「はい」

「私は小人さんと一緒に魔法を使ったんですよ」

「小人と一緒?」

「あら困ったわね、媒体になるものがないわ」

「ないとダメなのか?」

「うーん、まぁ一度やってみましょう」



「ではゴストさん、力を抜いて」

「わかった」

「目を閉じて。心を静かに。今あなたは暗い部屋にいます。そこは落ち着いた静かな部屋で風もありません。耳を済ましているとある音に気が付きます。聞こえますか?ささやかな音です。集中して聞いてください。何かが流れる音、それは風の音です。どこかから風が流れ込んでいるのです。あなたは出どころを探り風の流れ出る方へと向かいます。するとあなたの目の前に丸い何かが現れるではありませんか。あなたは正体を知るためじっと見据えます。それは風が集まって作られた風の玉です。あなたはその玉に両手を伸ばします。風の玉はあなたの手におさまり優しくあなたに風を送るのです。ゆらりゆらりとただようその風をあなたは前に押し出します。風はあなたに従います。さあ、目を開けて。風を導くのです」


「う、うう」

「あら、ゴストさん?」

「先生、どうなっているんです?」

「これは、催眠が効きすぎているのかも」

「大丈夫なんですか」

「いえ、わかりませんが、もしかするとまずいかもしれません」



「なんだここは。僕はどこにいるんだ。あれは、父さんと母さん。けど僕に気づかないか。そうだよな、あの人達が興味を持つわけなんてない。フン、あっちは学校の。先生も周りの奴らも僕なんていないと思ってるだろ、いや思ってさえいないのか。皆からすれば僕はいないんだ、どこにも。暗闇だ。皆と僕の間にはいつも見えない暗闇がある。いつも僕を覆い隠す。これが、これさえなければ僕だって!なんでなんだ、なんでいつもいつも、こんなものなければ。僕だって、もしかしたら」



「先生、どうしたら」

「催眠は解けているはず。彼は今、純粋に夢を見ているのかもしれません」

「起こせないんですか?」

「そうですね、何か目が覚めるようなものを持ってきます」

「お願いします先生。ゴストさん、起きて、起きてください」

「うう、僕だって。これさえなければ、僕だって皆と」



「うーん、あれ」

「ゴストさん!よかった、目が覚めたんですね」

「うん?なんか夢を見てたような」

「ええ、あなたは夢を見ていたのです。いかがでしたか?」

「いかがって、悪夢だったかな?」

「風は感じましたか?」

「風?ああ、そういえばそうだっけ。えーっと、いや、なんかわからないな」

「そうですか、ではとりあえずこのお茶を飲んでください。心が落ち着きますよ」

「んー、でも気分は落ち着いてるかな」

「あら、それは良好です。ささ、冷めないうちにどうぞ召し上がれ」

「まあいいか。いただきます」


「あの、ゴストさん」

「はい、え?なんでジョーさんは涙目なんです?」

「なんでもありません。ただうなされているのを聞いて、きっと辛い思いをされてきたんだと」

「別に、誰にでもあることだよ。美味しいな、このお茶」

「ふふっ、それ私が淹れたんですよ」

「へー」


「あの、魔法は使えそうですか」

「ダメかな。風なんて感じない。でもなんかちょっと変な感じはする」

「変な感じですか?」

「あら、どんな感覚か教えてくださらない?」

「うーん、身体を流れる何かがあるようなないような」

「ゴストさん、それを手の先に集めるようなイメージで、そうですね、そのイメージを表す言葉とともに手に先に集めてみてください」

「言葉と?そうだなぁ」

「風にこだわらず好きなものでいいですので」

「好きなものねぇ、僕の好きなもの」

「集中して」

「ふぅー。静かな場所、暗く沈んだもの、そして僕にまとわりつくこれは」

「これは?」

「僕自身ともいえるこれは、暗闇」


「あ!」

「あらまあ」

「ん?うわっ、なにこれ」

「暗闇を作り出す魔法ですね」

「僕が、作ったのか?」

「ええそうですよ、あなたが魔法を使っているのです!しかし暗闇をだす魔法を使う方は始めて見ました」

「暗闇か。フッ、僕らしくていいじゃないか」


「やりましたね!ゴストさん!」

「そ、そうですね。ち、ちかい」

「もう、もっと喜んでもいいのに。私なんて光が灯った時には本当に嬉しかったんですよ」

「嬉しいんだけど、感情を強く表すのって苦手なんだ。とりあえず出来たみたいだし、よかった、のかな。リーメ、先生。どうもです」

「いえいえ、私はきっかけを与えたに過ぎませんから、それはあなたの力ですよ」

「僕の力か。あ、消えちゃった。あの、もっと上手く使えるようにしたい」

「ええ練習しましょう」

「よろしく、です」

「ジョーも時間があれば一緒に練習してみてはいかがですか?」

「そうですね、私ももっと魔力を上手に扱えるようにしたいのですし。ゴストさん、よければ一緒に練習しませんか?」

「一緒に、あ、ああはい。よろしく、です。おかしい、まだ頭がぼーっとする。そうだきっとあの悪魔の料理のせいだ、そうだそうだ」

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