100. 芽生え
「紳士淑女の皆々様方!さあさ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。此度皆様にお目にかかるは我が国の精鋭たる騎士による妙技の数々!」
「おかーさん、あれなーにー」
「何かしら、サーカスかな?」
「おい見ろよ、あのおねーさん美人だぞ」
「ほんとだ、けどなんでハリセン持ってるんだ?」
「はいはーい、そこの人達、見惚れてないでさっさと進むー」
「なんだこいつ」
「交通課の奴じゃね。いこーぜ」
「ぐぬー、カーバンさんの依頼じゃなきゃ絶対引き受けたくない。あ、そこの一団止まらなーい!」
「賑やかですね王子。わたしはアレの手伝いをするのですか」
「ああそうだぞニーナ。騎士団の増員をかけた大事な任務だ。精一杯フォローしてやってくれ」
「わたし1人だけ?大臣さんは」
「私は全体の監視を行います。なのでこの場はよろしく頼みますよ、ニーナ殿」
「ニーナかんばるにゃー」
「はっはっはっ。ノラトナも応援しているぞ。じゃ任せた」
「むー」
「あーぁあー、こんな時に行商する魔法少女の太ったタヌキが手伝ってくれたらなー」
「タヌキにそんな真似が出来るわけないじゃないか、ははは。ちなみに俺はスレンダボディーになりつつある。僅かだが」
「そうですとも、魔法少女がこのような場所に居合わせるなど、ほほほ。ニーナ殿は妙に鋭いですなぁ」
「ネコが行商なんてするわけないにゃ、そうにゃ、気のせいにゃ、うにゃにゃ。うー、バレてる?」
「ふーん」
「シモザさん、お疲れ様です」
「あ、カーバンさん。募集はどうですか?」
「まだ誰も来てはくれません」
「今回って騎士の募集なんですよね?兵士じゃなく」
「はい。とはいえいきなり騎士になることは出来ませんのでその素養がある者をスカウトすることが目的です」
「へー、今回来てくれるといいですね」
「そうですね。今回ダメならまた次回に期待です」
「次回ですか。じゃあその時も僕は手伝いにきますね」
「ええ、ぜひお願いします」
「ところでそのハリセンは」
「インパクトがあって良いそうです。実際、机を叩いてバシッと鳴った時の軽快さときたら癖になります」
「あはは。なんというか、あー、ステキですね」
「ありがとうございます」
「ちなみにカーバンさんはどんな人がいいんですか?あ、今のは騎士の募集に来てくれる人についてで、その」
「そうですねぇ、真面目で礼儀正しく、戦闘技術もあり、学にも通ずる。そして程よく不真面目ですね」
「程よく不真面目?まじめで礼儀正しいのにですか?」
「はい。礼節をもって接するのは表面上でいいのです。ああいえ、もちろん相手を敬うのは大切ですよ?ですが、辞めてしまう騎士の殆どは真面目すぎる故に自分を追い込んでしまいます。なので程よく息抜きできる性格がちょうどいいようです」
「それはどの職場でも同じ気がするけど。例えばナミチさんみたいなのですかねぇ」
「はい。彼女なら申し分ありません。ですが騎士になることはないでしょう」
「ですね」
「すみません業務中に。交通課に協力していただけて助かっています」
「いえいえ!街中の整理も職務の範疇ですから、お任せください!」
「ありがとうございます。今回引き受けてくださるか不安でしたが、シモザさんが手を挙げてくださったそうで感謝しております」
「はい、その、お役に立ちたくて。あ、あー、街の住人の暮らしを守るのは騎士と共通してますから僕にも何か出来ることあるんじゃないかなって」
「民のためですか、素晴らしい。騎士達にあなたを見習わせたいものです。ではお言葉に甘えさせていただいて、こちらはお願いいたします。頼りにさせてもらいますね」
「はい!僕にお任せください」
「ええ。では失礼します」
「はい。あー、いっちゃったか。はぁ、話せるのはいいけどいまいち近づけないなぁ。いっそ僕が騎士になる?はぁ、さすがにないか」
「シモザよぉい」
「あ、ドンチヨさん。来てくれたんですね」
「おーよ。ちゃんと交通整理してっかぁ」
「ええ、ちゃんとやってますよ」
「ならえーんだ。憧れの騎士団長にぃ、そりゃいいとこみせねぇーとだかんなぁ」
「い、いちいち言わなくても」
「おめぇーはよ、真面目だ。いいやつなんよ、なぁ?だからおれぁ気に入ってんだって」
「どもっす。あ、あそこ割り込みしてる。はぁ、面倒だなぁ」
「あぁん?あんだとぉシモザァ。順番守れねぇーやつがいるってかぁ!よぉーし、そんなやつぁもちろんよぉ。ぶっころだ」
「おいぃ、てめぇーよぉ」
「は、はい」
「横入りゃぁいけねぇーだらぁ、よぉ」
「いや、先に並んでもらって」
「おめぇーが並んでたわけじゃねぇだろぉよぃ」
「ですね」
「おれぁよー、ルール破るやつがでぇっきれーなんよ」
「さ、左様にございますか」
「あーん?わかるかぁ?よぉ、よぉー!」
「ドンさんその辺にしてあげて。皆ドン引きして場が凍りついてるから」
「はぁあん!しかたねぇーなぁ、しかたぁねぇーなぁ!んなぁ!順番くれぇーよぉ、ちゃんと守ってみせんよぉ」
「はい、もちろんです、はい」
「おぉーし、わかりゃえんだがねぇ」
「はぁ、交通課の印象が悪くなっていくなぁ。カーバンさんに嫌われないといいけど。ん?向こうが眩しい。なんだろ?」
「さー、こちらにいる騎士は光の騎士、ピックァリィン。その輝きに満ちた戦技をとくとご覧にいれましょう。さ、出番ですよ」
「はっ!仰せのままに。我が愛しの民よ集え。このピックァリィンが暗き闇を退け天をも貫く光でその行く道を照らそう。我がつるぎよ!救済の光を放ち輝き照らせっ!ライトソード!」
「うわっ、ま、まぶしい」
「えーん、おかーさーん、まぶしーよー」
「見ちゃダメよ、行きましょ」
「うへー、退散しよーぜ」
「こらぁ!お客さん退かせてどうするのです!ハリセンの出番ですね」
「ぐはっ。我が救済の道は遠い」
「まったく」
「すみません、ついにきた出番で張り切ってしまいました」
「いいですか。救世主の伝説に憧れるのは構いませんが光量はおさえなさい」
「はい」
「次!ハモン君、前に!」
「御意」
「さーさー、お次は華麗なる水の剣技をご覧にいれましょう」
「おお、騎士っぽい奴が出てきた」
「騎士さんがんばってー」
「いいとこ見せろよー」
「皆さんありがとう。この声援に応えることこそ我が使命。いざ」
「皆様お待たせいたしました!それでは水芸の達人ハモンによる水の曲芸をご覧ください!」
「団長、私のは曲芸では」
「ちょぉっと待ったぁぁぁ」
「はて、どちら様でしょうか」
「とぉ!しゅたっ。すらり。我が名は天天。天をも貫くという下賤の輩を成敗しに参った!」
「天天、確か報告にあった変態ですね。捕らえましょう。ハモン君そのままお願いします」
「お任せを」
「久しいな天天。いつぞやの決着をつけよう」
「望むところ」
「清らかなる水よ、我が呼び声に応え剣を成せ。アクアソード!」
「おお!」
「なんかかっこいいぞ」
「いいぞぉすぷらっしゅー!」
「影を持たぬ日輪よ。この世の闇を焼き尽くせ!熱波収束、アツアツ光線!」
「レーザー撃ってる、すげー!」
「名前はダサいけど」
「変な人もがんばれー!」
「ふふふ、周りが喜んでいますね。やはりデモンストレーションはこういう対戦型の方が受けが良いのか。次回の参考にしましょう」
「カーバンさん、これはどうしたんですか」
「デモの最中に不審者が現れたので職務を遂行しているところですよ」
「不審者ってあの仮面の人か。うわぁ、確かに不審者であることを全身で体現してる」
「はい。完全なる不審者。捕らえ甲斐があります」
「よかったですね」
「ええ、デモにはもってこいです。ふふふ」
「あ、あはは。この人って仕事中はそれ以外考えないタイプかな。あぁ今日はもう諦めよ。はぁ」
「ところで、観客たちは逃げないんですね」
「あのなりですからイベントの一環と思っているのでしょう」
「危ないのでは」
「そうですね。確かに、わ、私はいったい。すみません少し打算が過ぎました」
「い、いえ。早く騎士を増やさないといけないですもんね」
「言い訳などできません。さてどうしたものか」
「あ、なら僕に任せてもらえますか?」
「何か策があるのですね。お願いします」
「天地に叫ぶ雷光よ、その憤怒をかの者へ振り下ろせ。怒れ稲妻!八つ当たりさんだー!」
「その心は澄み渡る湖面の如し。我が身を守護せよ、水鏡の盾!」
「そんなもので防げるとでもぉ!」
「私は騎士だ!決して負けてはならないんだぁぁぁぁ!」
「あのー、ちょっと待ってくださーい」
「いいところで邪魔しないで!」
「お下がり下さい。ここで雌雄を決せねばならないのです」
「なので、もっといい方法で勝負を決めましょう」
「いい方法で?」
「はい」
「大勢の観衆がいます。ですがこのままでは怪我人が出てもおかしくありません。皆なぜか避難しないし」
「戦いに犠牲はつきものよ」
「何を言う!民を守らずして何が戦いだ!」
「はいはいー。というわけで、さっきの続きしましょう」
「は?」
「それを止めに来たんじゃないのか?」
「まあ聞いてください」
「お2人に共通するのはビジュアルです」
「ビジュアル」
「はい。周りを見てください。ここまで激しい戦いにも関わらず皆さん盛り上がってます。なので、どっちが周りを湧かすことが出来るかを勝負するんです。いかがですか?」
「ふっ、いいわよ」
「いいでしょう、その勝負のりましょうとも」
「絶対負けないわ」
「その言葉、きっと後悔しますよ」
「ではどちらからいきますか?」
「自信がおありのようですからあなたからどうぞ」
「あら気後れしたのかしら?まあいいわ」
「では一回につき一度何か披露していただきます。皆さん!聞いての通りです!良いと思ったら拍手や声援でお応えください!では、どうぞっ!」
「うまいこと考えたかじゃねーかぃ」
「仲裁は慣れてるからね」
「はっはっ、だなぁ」
「イベントの趣旨にも合ってるし、城から何か言われるような大事にもならないでしょ」
「平和的解決。ふへぇっ、シモザおめぇよぉ、おめぇはよぉー!ほんとさいこーだぞぃ!」
「だから慣れてるだけだって。あ、始まるよ。ここでちゃんと見てないと後でこじれかねない」
「おうよ」
「天の叢雲よ、その内に秘めたる苛烈なる咆哮に奮えろ。いでよ鳴神、砕け雷鎚!ライトニングゥ、ボンバー!」
「うおっ」
「すごい迫力だ!」
「うわーん、おかーさぁん」
「はいはいこわいねーよしよし」
「か、かっこいい!」
「かみなりって間者の魔法だろ?すげー!」
「でも名前が」
「さあ、騎士よ!次はあなたの番です!」
「さすがだ天天。だが負けはしない。ではとっておきを披露しよう」
「希望をもたらす天弓よ、蒼天を覆う愁雨をを晴らし給え。剣舞、七光の煌き!ルミナスブレード!」
「見ろ、水の剣が光ってるぞ!」
「わぁ、剣の軌跡が美しいわっ」
「おかーさん、あれ虹が出てきれー」
「そうねきれいね」
「いいぞすぷらっしゅー!」
「ハモン殿、光は私の」
「皆様、ご声援ありがとうございます!」
「でもさっきの雷のほうがなぁ」
「だよなぁ、ちょっとインパクトにかけるなー」
「なっ」
「うふふ、どうやら私の勝ちのようね」
「くっ、無念」
「おーほっほっほっほっ」
「うーん」
「どぅしたん?」
「あの天天という人をどこかで見たような気がして」
「おめぇもかいぃ。おれっちも既視感あるんよ」
「だよねぇ。なんか身近な人に似てるんだけど、誰だったかなぁ」
「あとよぉ、ちょぃっとで思い出せそうなんだがなぁ」
「うーん」
「シモザさん」
「あ、すみません。勝手にしきってしまって」
「いえ。ただこの状況は確かに先ほどより安全にはなりましたが、勝負の判定基準がないのに彼らが納得するとは思えません」
「あはは、まあそうですよね」
「どうされるつもりで?」
「あー、どうしようかな、なんて」
「そうですか」
「あぁんだぁおい。シモザに文句でもあんのかよぉ。なんもしなかった団長ーさんがよぉ。おぉ?」
「ちょっとドンさんやめてください」
「いえ、おっしゃる通りです。私の対応に問題があったかもしれません」
「カーバンさんは悪くありませんよ」
「ですが」
「じゃ、じゃあ1つお願いを聞いてもらえませんか?」
「お願いですか。わかりました」
「おう。デートだなぁ」
「違うし黙ってて」
「え?なんです?」
「いえいえーなんでもないですー」
「お願いというのはあの勝負に参加してほしくて」
「私があの勝負に。中々ハードルが高いですね」
「あー、やっぱり無理ですよね。あ、それか」
「いえやりましょう。何か考えがあるのですよね」
「へ?ま、まあ無くはないかな」
「ん?無いのですか?では何のために」
「いやぁ、作戦は進行中ですが相手に知られるとまずいので伏せておきたくてぇ、なんちゃって。とりあえずお願いします!」
「わかりました。騎士に二言はありませんよ」
「シモザよぃ」
「聞かないで」
「よぉよー、結局おめぇよぉ」
「だから聞かないでって」
「ふぅむ」
「あーもーそーですよ!カーバンさんが戦ってる姿が見たかったんです!だってそうしたらじっくり見てられるしそれに」
「そんなことせずにデート誘えばいいものを」
「あからさまじゃないか」
「いやはやそうでもやらんと」
「いーの。ほら、カーバンさんの華麗な剣捌きが、あれ?」
「ふぅむ。ハリセン持ったままやんな」
「えー、なんでぇ」
「天天よ。最後は私がお相手いたします」
「次はあなたですか。騎士団長が直々に相手をしてくれるとは光栄ですね」
「私などそれほどの者ではありませんよ」
「ふん。昔からそういうところが好きになれないのよ」
「うおー!美人のおねーさんだ!」
「がんばってー」
「すてきー」
「あんな上司なら騎士にはいるのもいいよなぁ」
「だよなぁ」
「おや?これは、勝って募集を呼び掛ければ来るかもしれませんね。ふふふ」
「余裕があるみたいだけどそれも今のうちよ。我が天の怒りをとくと受けよ!」
「いいでしょう。さあ、我がハリ流の極意を刮目せよ」
「ハリ流?」
「今名付けました」
「ずいぶん適当ね」
「お気になさらず。騎士カーバン、いざ参る!」
「む!ハモン殿」
「ええ。団長、必殺技の前口上を!」
「前口上?えー、あー。我が力に応えよマイハリセン。スパンと一撃あなたの脳天揺さぶろう。轟き響け!ハリ奥義、ハリセンボン!」
「おお、ダンチョー!」
「ステキです団長!」
「なんかいい音したー!」
「痛快な音ね!」
「美人だ!」
「ステキだ!」
「ハリセンで叩いただけでなんで盛り上がってんのよ。なんかムカつくわね」
「ねぇ大臣さん」
「なんですかな」
「騎士ってみんなああなのかしら」
「ええ、皆ああですよ」
「へー」
「あれでもこの国のエリートなのですよ」
「へー、あれでねぇ」
「ほっほっほっ」
「ところでなんでここにいるんですか。全体見るとか言ってたのに」
「ほっ。何やら不穏そうでしたから」
「ずっといたじゃない」
「ほほほ」
「そういえばー、こういう時って変な格好した青い魔法少女が出てきたりするのよねー。その正体ってどんな人なんだろうかなー」
「ニーナ殿」
「ふーん。そういえば王子とノラは?」
「はて、どちらでしょうかね」
「ふっ、出店が素晴らしい品揃えだ。やはり焼き立てはたまらん」
「おーじー、また太るにゃー」
「安心しろ。ちゃんと運動する」
「それ昨日も言ってたよー?」
「ちゃんとやるさ。だが今日は食べて動くと苦しいから明日な」
「ダメプリンスにゃ」
「お、ケーキだぞ。だがダメプリンスはケーキには興味が」
「ステキプリンス、早く買いに行くにゃ」
「よかろう。ネコに優しくする俺。ふっ、ステキすぎる」
「アホにゃ」
「ハリセン、いいですね。部下や王へのツッコミに使えそうです。ちょうどいい。気に入りました」
「私の負け?」
「そのようですね。諦めなさい」
「ただのハリセンじゃない!納得行かないわね」
「あの、天天さん。あなたはどうして騎士に挑んできたんですか?」
「それは私の正義を通すためよ」
「正義って、周りを巻き込んでもいいんです?」
「それはその。いえ、よくは、ないわ。くっ。いいわ。今日は引いてあげる」
「騎士の名誉にかけて逃がしはしません!」
「カーバンさん待って下さい」
「あなたはそれでいいんですか?」
「それでいいって、なぜ君がそんなことを聞くの」
「知りたいからです。あなたはそれで満足なんですか」
「いえ」
「じゃあちゃんとやりきりましょうよ」
「出来るものならそうしたいけど」
「ですよね、よーし。あ、でも続きは別の日にしません?」
「いいわ。この流れは難しいものね」
「うん。僕もあの外野はどうにかしたい。あ、カーバンさんいつならいいですか?」
「そうですね、では次の」
「シモザさん、ありがとう」
「いえ、みんなが納得できるようにするのが一番いいと思うんです。だからいつも相手の話しを聞くようにしてて」
「そうですか」
「はい。こういう時って要望を叶えてあげるのが一番の近道ですよね」
「それが出来ないから争いに」
「案外そうでもないですよ?ちゃんと聞いてあげれば意外と解決策ってあるものです」
「あなたは忍耐強いのですね」
「あはは、まぁいつも無茶振りする先輩方に囲まれてますから。あ、そうか」
「なんです?」
「あー、いえ。きっと彼女ならわかっているはずだなって思っただけです」
「天天ですか」
「はい」
「シモザさんは平和主義なのですね」
「別にそういうわけじゃないですよ。争いがないとか平和とか特に考えてませんから。ただ面倒がないのが何よりいいじゃないですか。そう思いません?」
「ふふふ、そうね。私もそう思う。あなたは実に頼もしい人ですね」
「いやぁ、そんなことないっすよ」
「シモザァよぉい、いいとこわりぃーんだがよぉ、こっち来て整理手伝ってくれーぃ」
「あ、はーい。ドンさんすぐ行くよー。じゃあ行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい。本当に素晴らしい。出来れば騎士になってほしいものです」
「それにしてもよぉ、天天は一体誰なんかなぁ」
「さあ、誰なんでしょうね」
「ふん、何が騎士だ」
「おや、そこのあなた」
「僕か?」
「ええ。あなたにピッタリのモノがあるのですがいかがでしょう」
「僕にピッタリ?怪しい奴だ」
「まさかまさか、ただの露店商ですよ」
「ふん」
「おい、ピッタリってなんだよ」
「こちらです。無心の仮面」
「なんだそれ」
「付けると静かになりますよ」
「確かに僕は静かなところが好きだ。だがそれはいらん。怪しい」
「そーですか、残念です。これがあれば騎士にも負けない力を宿すのに」
「騎士より?何のためにそんなこと」
「勝ちたくはありませんか?」
「別に。まがいものの力なんているか」
「なるほど」
「ではこちらはどうでしょう」
「まだあるのかよ」
「ええ。暗闇の衣。これを纏うと」
「静かになる、か?」
「おお話が早い。いかがです?」
「辛気くせーな。怪しさが増してんだろ」
「これは特別何もありません。ただ衣のような闇を羽織る事ができるだけ」
「ほんとかよ」
「ええ」
「ふん」
「よこせ」
「ありがとうございます」
「いくらだ」
「これくらいでいかがです?」
「まぁいいだろう」
「ではどうぞ」
「ふーん、ほんとに何も変わらんな」
「嘘は言っていません」
「ほんとのことも、か?」
「ふふふ、先程の説明以上にも以下にもありませんよ」
「怪しい奴め。あばよ」
「ええ」
「ああそうだ。お名前を聞いてもよろしいですか?」
「僕の名前?聞いてどうする」
「またお会いする気がするので」
「お前は何ていうんだ。まず名乗れよ」
「これは失礼しました。私はデモクといいます」
「ふーん、デモクね」
「それであなたは?」
「ふん。僕はゴストだ。じゃあな」




