アメリカ合衆国憲法[2] 第1条:第1節から第5節
第一条 〔立法府〕
第一節 この憲法によって付与されるすべての立法権は、合衆国連邦議会に帰属する。連邦議会は上院と下院で構成される。
第二節 (一)下院は、各州の人民が二年ごとに選出する議員で組織される。各州の選挙人は、州議会で議員数の多い一院の選挙人に必要な資格を備えていなければならない。
(二)何人も、二十五歳に達していない者、七年以上合衆国市民でない者、また選挙された時にその選出州の住民でない者は、下院議員となることができない。
(三)〈下院議員および直接税は、この連邦に加入する各州の人口に比例して、各州の間で配分される。各州の人口は、年期契約奉公人を含み課税されないインディアンを除外した自由人の総数に、自由人以外のすべての人数の五分の三を加えたものとする〉。実際の人口の算定は、合衆国連邦議会の最初の集会から三年以内に、そしてそれ以後十年ごとに、議会が法律で定める方法に従って行う。下院議員の定数は、人口三万人に対し一人の割合を超えてはならない。ただし、各州は少なくとも一人の下院議員を持つものとする。上述の算定が行われるまでは、ニューハンプシャー州は三名、マサチューセッツ州は八名、口―ド・アイランド州およびプロビデンス定住地は一名、コネチカット州は五名、ニューヨーク州は六名、ニュージャージー州は四名、ペンシルベニア州は八名、デラウェア州は一名、メリーランド州は六名、バージニア州は十名、ノースカロライナ州は五名、サウスカロライナ州は五名、ジョージア州は三名、それぞれ選出する権利を有する。〔〈 〉内は修正第十四条第二節で改正〕
(四)いずれの州においても、その選出下院議員に欠員が生じた場合、その州の行政府はそれを補充するため選挙施行の命令を発しなければならない。
(五)下院は、その議長および他の役員を選任し、また弾劾の権限を専有する。
第三節 (一)合衆国上院は、各州が二名ずつ選出する上院議員で組織される。〈その選出は州議会が行い〉、その任期は六年とする。各上院議員は、一票の投票権を有する。〔〈 〉内は修正第十七条で改正〕
(二)第一回選挙の結果に基づいて、上院議員が集会した時、直ちにこれをできるだけ均等な三部に分ける。第一部の議員は二年目の終わりに、第二部の議員は四年目の終わりに、第三部の議員は六年目の終わりに、それぞれ議席を失うものとする。これにより、議員の三分の一が二年ごとに改選されるようになる。〈もし、いずれの州においても、州議会の休会中に、辞職その他の理由で欠員を生じた場合には、州の行政府は、州議会が次の開会時に補充を行うまでの問、臨時の任命をすることができる〉。〔〈 〉内は修正第十七条第二節で改正〕
(三)何人も、三十歳に達しない者、九年以上合衆国市民でない者、また選挙された時にその選出州の住民でない者は、上院議員となることができない。
(四)合衆国の副大統領は、上院の議長となる。ただし、可否同数の場合を除き、表決には加わらない。
(五)上院は、議長を除く上院の他の役員を選任し、また副大統領が欠席するかあるいは合衆国大統領の職務を行う場合には、臨時議長を選任する。
(六)上院はすべての弾劾を審判する権限を専有する。この目的のために開会される場合には、議員は宣誓あるいは確約しなければならない。合衆国大統領が審判される場合には、最高裁判所長官が議長となる。何人といえども、出席議員の三分の二の同意がなければ、有罪の判決を受けることはない。
(七)弾劾事件の判決は、免官、および合衆国政府の下に名誉、信任または報酬を伴う官職に就任、在職する資格を剥奪すること以上に及んではならない。ただし、有罪の判決を受けた者でも、なお法律の規定に従って、起訴、審理、判決、処罰を受けることを免れない。
第四節 (一)上院議員および下院議員の選挙を行う日時、場所および方法は、各州において州議会が定める。しかし、連邦議会はいつでも、法律でその規則を制定あるいは変更することができる。ただし、上院議員の選挙を行う場所に関してはこの限りでない。
(二)連邦議会は、少なくとも毎年一回集会する。その集会は、法律で別の日を定めない限り、〈十二月の第一月曜日とする〉。〔〈 〉内は修正第二十条第二節で改正〕
第五節 (一)各議院は、その議員の選挙、選挙結果の報告および資格について判定を行う。各議院の議員の過半数をもって、議事を行うに必要な定足数とする。定足数に満たない場合は、その当日に休会し、また各議院の定める方法や制裁をもって、欠席議員の出席を強制することができる。
(二)各議院はそれぞれ、議事規則を定め、院内の秩序を乱した議員を懲罰し、また三分の二の同意によって議員を除名することができる。
(三)各議院はそれぞれ、議事録を作成し、各議院が秘密を要すると判断する事項を除いて、随時これを公表する。各議院の議員の賛否は、いかなる議題であれ、出席議員の五分の一の請求がある時は、これを議事録に記載しなければならない。
(四)連邦議会の会期中、いずれの議院も他の議院の同意がなければ、三日以上休会し、またはその議場を両議院の開会中の場所以外へ移してはならない。
伊野上と桃子が、図書館で話し合っている。
「アメリカ合衆国憲法は、みてのとおり、日本国憲法で章になっている部分が条、条が号っていったように、ちょっとずつ違っているんだ」
[作者注:以下、憲法について語る時は、国名のみとします]
「それで、第1条には、何が書かれているの?」
「日本の場合、第4章に書かれていることだね。でも、アメリカでは、日本の国会法に書かれているようなものでも憲法に書かれていたりするからね。例えば、第3節の3に書かれている『何人も、三十歳に達しない者、九年以上合衆国市民でない者、また選挙された時にその選出州の住民でない者は、上院議員となることができない。』ということなんだ。日本では、満30歳で日本国民であると言うことが、参議院選挙の立候補者に必要だね。ただ上半分には、日本との共通点も多いんだ」
「どういうこと」
伊野上は、条文を指でなぞって示しながら桃子に話す。
「たとえば、上院と下院に分かれているという点。上院が日本で言う参議院で、下院が衆議院って言う感じだね。それに、毎年一回は議会を開くって言うことだね。ただし、時期を定めない時には必ず12月の第1月曜日とするって言う規定は、日本にはないけど」
「そもそも、日付の指定なんて無いじゃない」
「そうだね。上院の議長は副大統領が兼任するって言う規定もないし、そもそも、副大統領のような地位が、日本には書かれてないけどね」
「たしか、副首相って言うのが居るんだったね」
「そうだよ。大統領に対する副大統領と同じような感じの地位なんだけど、いてもいなくても法的には問題じゃないんだ」
「弾劾が出来るって言うのは、アメリカだと上院だけなのかな」
「下院では、下院内のことについての弾劾の権限が、上院では、全ての弾劾の権限が付与されていることになってるね。判例とかを調べていけば、より深く分かると思うよ」
「へー」
伊野上が指しているところをじっと見ながら、桃子はおもしろそうにしていた。
「じゃあ、第1条の後半行ってみるよ」
「いいよ」