アメリカ合衆国憲法[13] 第10条
第10条[州権限の制限]
[第1項]州は、条約を締結し、同盟もしくは連合を形成し、船舶捕獲免許状を付与し、貨幣を鋳造し、信用証券を発行し、金貨および銀貨以外のものを債務弁済の法定手段とし、私権剥奪法、事後法もしくは契約上の債権債務関係を害する法律を制定し、または貴族の称号を授与してはならない。
[第2項]州は、その検査法を執行するために絶対に必要な場合を除き、連邦議会の同意なしに、輸入品または輸出品に対し輸入税または関税を賦課してはならない。州によって輸入品または輸出品に賦課された関税または輸入税の純収入は、合衆国国庫の用に供される。かかる法律はすべて、連邦議会の修正または規制に服する。
[第3項]州は、連邦議会の同意なしに、トン税を課し、平時に軍隊または軍艦を保持し、他州もしくは外国と協定もしくは契約を締結し、または、現に侵略を受けもしくは一刻の猶予も許さないほど危険が切迫しているときを除き、戦争行為をしてはならない。
桃子は伊野上が見せている憲法の本を見ながら、図書館ということもあり小声で話しあっていた。
「ここはアメリカ合衆国の州の権限についての話だね」
「船舶捕獲免許状は、国が認めた海賊船に与える免許状だったね。それに貨幣鋳造は500円玉とか100円玉とかを作ることでしょ。私権剥奪法についても、前出てきたね」
「そうだね。それで、ここでは、さらに禁止されているものがあるんだ。それは、州単独による条約や同盟の締結、金貨と銀貨以外を債務弁済に使えるように法律を作ったり、事後法や契約上の債務債権関係を乱すような法律を作ったり、貴族のような特権階級の称号を州として授与することだね。逆にいえば、これらは州ではなくて、別段何の規定もなければ連邦なら定めることができるということなんだ」
「他にもいろいろあるわね。必要以外の税金を課すことを禁じてたり、連邦議会による法律の必要があるとかね」
「ああ、そうなんだ。州の権限って、思ったよりも狭いんだよ。まあ、日本の都道府県よりは広いけどね」
「都道府県は条例なら制定できるけど、より拘束力の強い法律は制定できないものね。それに、貨幣鋳造権も条約締結権も、中央政府が有してるわ」
「前者は異なるけど、後者はあまり州と変わらないね。あ、一応言っておくけど、トン税というのは、外国籍の船が入港する時にかかる税金のこと」
「やっぱし、税金は中央政府が握っておきたいのね。それで、続きは?」
「次は議会から大統領へと移るよ。第11条大統領と副大統領、選任方法について」