アメリカ合衆国憲法[12] 第9条
第9条[連邦立法権の制限]
[第1項]連邦議会は、1808年より前においては、現に存する州のいずれかがその州に受け入れることを適当と認める人びとの移住または輸入を、禁止することはできない。但し、その輸入に対して、1人につき10ドルを超えない租税または関税を課すことができる。
[第2項]人身保護令状の特権は、反乱または侵略に際し公共の安全上必要とされる場合を除いて、停止されてはならない。
[第3項]私権剥奪法または事後法を制定してはならない。
[第4項]【人頭税その他の直接税は、この憲法に規定した人口調査または算定にもとづく割合によらなければ、これを賦課してはならない。】[修正第16条で改正]
[第5項]各州から輸出される物品に対して、租税または関税を賦課してはならない。
[第6項]通商または徴税に関するいかなる規制によっても、1州の港湾に対して他州の港湾よりも有利な地位を与えてはならない。1州に入港またはこれより出港する船舶に対して、他州に入港すること、または他州において出入港手続きをすることもしくは関税の支払いをすることを強制してはならない。
[第7項]国庫からの支出は、法律で定める歳出予算によってのみ、これを行わなければならない。いっさいの公金の収支に関する正式の決算は、随時公表しなければならない。
[第8項]合衆国は、貴族の称号を授与してはならない。合衆国から報酬または信任を受けて官職にある者は、連邦議会の同意なしに、国王、公侯または他の国から、いかなる種類の贈与、俸給、官職または称号をも受けてはならない。
桃子が、伊野上に聞く。
「人身保護令状?」
「『裁判所が身柄を拘束されている者の申し立てでその拘束が違法かどうか審査する令状』のことだよ」
「じゃあ、私権剥奪法っていうのは?」
「『反逆の罪などを犯したとして裁判手続によらずに市民の権利を奪う議会立法』という法律のことだね」
「…つまり、ここでは、税金を課したり、予算を作ったり、貴族を作らないと言ったことを決めているのね」
「そう。アメリカは、イギリスからの税金に苦しめられてきたからね。ボストン茶会事件とかで、それが度々爆発はしたけど。最終的には独立までそのままいっちゃったんだよ。なので、予算とか税金については、かなり敏感な面があるね。それに、自由の国アメリカは、同時に平等の国アメリカでもある。そのため、特権階級となるような貴族は認められないんだ。まあ、平等と言っても、格差社会と言われて久しいけどね」
「日本じゃ、出てこない単語ばかり……」
「人身保護令状っていうのは、日本では人身保護法と言う法律によって規定されているから、そのあたりを参考にすればいいかも。市民の権利と言うのは、簡単にいえば一般的に市民であれば当然に持っている諸権利のことだね。そして、私権剥奪法と言うのは、平たく言えば、市民の権利を裁判抜きではく奪することを正当化する法律のこと。このような法律はそもそも作ることすらアメリカでは認めていないんだ。日本では、憲法第3章によって規定されているよ。ただし、明確に禁止している条文はないんだ」
「へー、それぐらいかな」
「じゃあ、次に行ってみようか。次は、第10条で州権限の制限についてだね」