アメリカ合衆国憲法[9] 第7条
第7条[下院先議、大統領拒否権]
[第1項]歳入の徴収を伴うすべての法律案は、さきに下院に提出しなければならない。但し、上院は、他の法律案の場合と同じく、これに対し修正案を発議し、または修正を付して同意することができる。
[第2項]下院および上院を通過したすべての法律案は、法律となるに先立ち、合衆国大統領に送付されなければならない。大統領は、承認する場合はこれに署名し、承認しない場合は、拒否理由を付してこれを発議した院に返付する。その院は、拒否理由すべてを議事録に記載し、法律案を再び審議する。再議の結果、その院が3分の2の多数でその法律案を可決したときは、法律案は大統領の拒否理由とともに他の院に送付される。他の院でも同様に再び審議し、3分の2の多数で可決したときは、法律案は法律となる。この場合にはすべて、両議院における投票は点呼表決によるものとし、法律案に対する賛成者および反対者の氏名は、各々の院の議事録に記載されるものとする。大統領が法律案の送付をうけて10日以内 (日曜日を除く)に返付しないときは、その法律案は、大統領が署名した場合と同様に法律となる。但し、連邦議会が休会に入り、法律案を返付することができない場合は、この限りでない。
[第3項]両議院の同意を要するすべての命令、決議または表決 (休会にかかわる事項を除く)は、これを合衆国大統領に送付するものとし、大統領の承認を得てその効力を生ずる。大統領が承認しないときは、法律案の場合について定める規則と制限に従い、上院および下院の3分の2の多数をもって、再び可決されなければならない。
桃子は、伊野上に聞いた。
「この条の第1項前段は、日本の第60条によく似てるね」
「『予算は、さきに衆議院に提出しなければならない』っていうことだね。但し書きは、第2項が似てるよ」
「上院が審議することができるということがアメリカで、参議院が議決しないことが日本だね。議決するためには審議する必要があるのよね」
「だから、日本ではしないことを要件にしているんだ。ただ、2項、3項の大統領に関する規定は、日本には無いけどね」
「向こうの大統領は、日本だと…」
桃子が考えている間に、伊野上が答える。
「天皇陛下+内閣総理大臣っていう感じだね。でも、そのあたりはまた別の機会に。2項は法律案を大統領が拒否する時の対応の仕方、3項は休会に関するものを除いた命令、決議、表決も法律案と同等に扱うということだね。これは衆議院と参議院だと思えば分かりやすいかも」
「なるほど、衆議院が参議院に回付した法律案を、参議院が拒否をした時も、衆議院で再可決をして法律とすることができるものね。それが大統領と上下院なのね」
「そういう感じ。じゃあ、次行こうか」
伊野上が言うと、指をスライドさせて次の条文を桃子に見せた。
「次は、第8条の『連邦議会の立法権限』についてだよ」