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別れ

あの夜のことは


きっと永遠に忘れない…





────その思いが

私のまごころを変えた


私はもう

待つだけの少女じゃいられなかった



自分の居場所を見つけられたから



あなたが私を訪ねてきた

その日…







あなたがやってきたのは

遊園地に行った10日後だった


どうして今更戻ってきたのか



私にはどうしてもわからなかった



だけど

あなたは嬉しそうだった




ベランダに残された

小さなパセリの苗を見たから




私の心が

まだあなたに向いていることを知ったから



でも

私は苦しくてたまらなかった



どうして戻ってきたの?


そんな思いに突き上げられた



少し前までは

あなたに戻ってほしくて たまらなかったのに




私は薄情だった


そして

あなたも薄情だった




お互い


自分の都合で心を揺らしあっていた




私は気が気じゃなかった




いつアリストテレスがやってくるかわからないのに



あなたが私の部屋にいることが知れたら



きっと彼はショックを受けるから




私はパセリの幼い葉を摘んだ



ぽろぽろ泣きながら摘んだ



そして

呆然としているあなたに


最後の贈り物をした




あなたの大好物



パセリの効いた

ジェノベーゼを…






あなたは少し笑って

それを食べてくれた



おいしいよ、って言ってくれた




私は何も言えずに

立ち尽くすばかりだった




あなたが手を振って

部屋を出ていく



その後ろ姿を




泣きながら見送った…




無惨な

パセリの苗と共に。



恋は


始まりながら

終わってゆく




今日も


誰かのベランダで

パセリが見つめている







小さな作品ですが、読んで下さった皆様に感謝しております。本当にありがとうございました。

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