予感
今夜は雪だ、と
ブラウン管の向こうで
見知らぬひとが告げた
カーテンを開けてみると 既にそこには灰色の空
泣き出しそうな風の震え
微かな電線の揺れ
それは
雪が降る前の
ざわめき…。
窓ガラス越しの眼下
街に人は溢れて
だけど皆無口で
襟を立てたまま
通り過ぎてゆく
足音すら立てずに…。
あなたが居ないのに
どうしたら
雪を迎えられるの?
こんな寂しい場所で…
あなたがいなくなって
もう季節が一巡りした
今ごろ誰と居ますか
雪のニュースに
子供みたいにはしゃいでますか
このコンクリートの街で
まだ暮らしてますか
…「友達になろう」って言ったのに
何の連絡もくれないから きっと
あれは嘘だったんだね
優しい嘘
だけどね
嘘なんか要らないよ
キッパリけじめはつけたかったの
まだ信じてるよ
あなたが友達だって
恋人には戻れなくても
友達だって
だからバルコニーの
あなたが植えた
パセリの苗にも
水をやって
プランターも替えて
待っているの
また笑いあえる日を…。
───今夜は雪だ、と
ブラウン管の向こうで
見知らぬひとが告げた
雪はまだ
空にぶらさがっていて
今にも泣きだしそうに
あたしを見てる…。




