じらそーれのはしやすめ せこんど!
※頭をからっぽにしたうえでお読みください。
「ふう、仕事もひと段落着きましたし、暇ですねえ」
とりあえずカルマファミリー秘蔵の風呂に入ってみたはいいものの。
疲れた体を、湯舟に沈める。湯気にぼんやり手を伸ばす。自分が求めているのは非日常。スリリングでないと意味がない。
(陽さんは元気だろうか)
きっと今頃ーーふふ、なんでもありません⭐︎
それにしても、ゆっくりと湯舟に浸かっているだけでは生産性がないので、聖田はまず、今この瞬間に意味を持たせようと考えた。
「よおし……マジカル陽さん!」
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来客もないので、今日はもう早めに入ってしまおうと風呂に出向いた駿河だが、思いもよらない先客に唖然とした。駿河にとっての因縁の宿敵である新人ーー聖田の後ろ姿があったのだ。
それだけでは飽き足らず、いい年した大人が、マジカルなんたらをやっているではないか。去る日の件といい今日といい、相変わらず何を考えているのかよく分からない男である。
このまま鉢合わせるのも気まずいので、仕方なく風呂の時間をずらそうとした。が、嫌でも耳に入ってくるゲームの内容に足を止める。
「ーー陽さんと言ったら天使!」
「天使と言ったら綺麗!」
「綺麗と言ったら陽さん!」
「陽さんと言ったら……ぼーく♡」
堂々巡り。ゲーム内容が破綻しているとか、これを全て一人でやっているとかーーそんなことはもはや気にならないくらいに気味が悪い。
扉の向こうから、くすくすと笑い声が聞こえてくる。まるでこちらにわざと聞かせるように。駿河は正直戦慄した。
(何も見なかったことにしよう……)
心を無にした駿河は、何事もなかったかのように大浴場を後にしたのだった。
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「くしゅんっ!」
山の中。陽は身震いした。経験上、山の天気は急変しやすい。風邪を引かないよう、手を擦り合わせてみた。
(スギ花粉かな……?)
とにかく今は、自分に出来ることを精一杯やろう。陽の身震いはやがて、武者震いに変わっていった。
久方ぶりの朧さんでした。次回へ続く!