突然の拘束
「あった!! うん。これがぴったり」
市場で贈り物を探す事、6件目。ようやく目的の商品を見つけたルーシェは包装して貰った包をポシェットに入れて店の外に出た。
「皆さん!! ありましたよ!! ……あれ、いない?」
そういえば途中から付いて来なくなった気がする。どこかではぐれたのだろうか。
市場を巡っている間は陰が薄すぎて忘れていた。
「うーん。バルバラッサ邸まで独りで帰れるかな?」
土地勘が危うかったが、すれ違う人に聞いて行けば何とかなるはずだと歩き出す。
しかし人気のない小路に入ってすぐ、柄の悪い男に羽交い締めにされ、背中へ硬い金属の様なものが充てられた。
「よう。べっぴんさん。命が惜しかったら下手な抵抗はしないこった。黙って歩きな」
両手を後ろで束ねられ、行く先を促される度に腕へ痛みが走る。
指示通りに進んで行くと、街外れにある物置き小屋がみえた。周りには何人か見張りが立っている。その中に手足を縛られ、口には布を噛まされてから押し込まれた。
「明日の朝にゃソダージュへ立つ荷馬車がくる。それまで大人しくしとけよ。あんた美人だから高値で売り付けてやるぜ。こっちはあんたの姉って奴らに前金は払ってんだ。稼がせて貰う」
ルーシェに姉はいなかったが、男の口ぶりではこのままだとソダージュに連れて行かれるらしい。
そこには同じように口を封じられ手足を縛られた者が数名、捕まっているが、皆諦めたように静かだった。中にも見張りが立っていて睨みを効かせているからだろうか。
(今日中にバルバラッサ邸へ戻れるかなぁ……)
そんな呑気な事態ではないのだか、怖いというより困ったというのがルーシェの心境だった。
(アルフライン様に心配されちゃうな)
帰らなければ、おそらく探してくれるだろう。
目が合った時点で、陰で役に立つ思惑は失敗しているのだ。探す手間まで掛けてしまっては完全に足でまといだ。
身動きの取れない状態は、考え事ばかりをしてしまって良くない。どんどん暗い思考にはまっていく。
折角贈り物も買ったのに渡せぬまま終わってしまうかもしれないなと、ルーシェはその小柄な身体を丸めた。
ベタな展開な感じです。




