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½人魚は¼人狼で王子の恋の罠に捕まりました  作者: まきゆ
共に生きようって誓ったのに隠し事はなしです。 辛い時こそ一緒にいたいんですよ?
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第4王女リム

いつものチョーカーに白いブラウスとチェックのベスト。ポシェットを腰に付け、長めのスカートにブーツ。

そんな何処にでもいる街娘の服装で、ルーシェは3人の令嬢と連れ立って時計台の方に歩いていた。


馬車ではなく徒歩で、彼女達の護衛が遠巻きに控えている。

「貴族ではなくあくまで平民として買い物をして欲しいの。王族の性は名乗らず、紋章もこれに付け替えなさい」

渡されたのは忘れな草の紋章だった。他国からの旅人が一時的に付ける紋章の存在を、ルーシェはそれで初めて知った。


百合の紋章は胸元へ無くさないように閉まっている。

元々町娘としての歴の方が長いルーシェがそういう格好をすると、完全に街へ溶け込んでいた。

しかし何処にでもいるようでぱっと目を惹く容姿のため、気軽さも相まり先程から声を掛けられまくっていて中々進まない。


丁寧に断るルーシェへ令嬢達の方が切れかかっていたところだった。

「なぁお嬢さん。そのチョーカー売ってくれないか」

不意に交渉を持ち掛けられて相手に視線を向ける。


かなり上背のある壮年の男性だった。小麦粉の肌をしていて、商人というには鍛えられた身体をしている。胸には今のルーシェと同じく忘れな草の紋章をつけていた。


「なんですの貴方。私達急いでいるのですの」

周りの令嬢達がまた足を止められた事への非難の声をあげたが、男は気にせず交渉を続けてくる。


「そう言わず。1億スガエ払うからさ」

「1億スガエッ!?」

彼女達がひゅっと息を飲む。スガエは貨幣の単位だが、豪邸が買えてしまう値段だった。


「ごめんなさい。これは母の形見で売れないんです」

価格に関係なく断る利用を話すと、男は更にたたみ掛けようとしていた言葉を喉に詰まらせる。


「…………………形見。そうか……もういないのか」

そう赤褐色の瞳を、一瞬見開いてから静かに閉じた。


「……悪かったな。お嬢さん。あんた酒は飲める歳か? 詫びにいい酒があるんで安くしておくよ」

「後10日で20歳の誕生日が来るんです。なのでお酒はまだ……」

「へぇ。誕生日が近いんだな」

そうなのだ。誕生日までにはメザホルンに帰れる予定なのだが、それもあってアルフラインはルーシェを此処に連れて来るかどうかを最後まで悩んでいた。


「じゃあ、何か祝いの品でも」

営業的な笑顔を顔に貼り付けてはいるが、その瞳は何故かとても真剣そうだった。


「さぁ、もう用がないなら行きましょ。リム様のお祈りの時間が終わってしまいましてよ」

強引に引っ張られて急いでいるのを思い出し、もう一度男に断って時計台に向う。


中央の広場に辿り着いたのは、丁度リム・ハーク・ルギナス姫が時計台に登るところだった。

肩先まで伸びたシルバーブロンズの髪に琥珀色の瞳。

遠目からでもアルフラインに似ている。

だがメザホルン城に飾ってあるリリティアの肖像画の方が印象は近い。それをそのまま幼くした感じだった。


大きなリボンがついた真っ赤なドレスに、赤いショルダーバックを下げている。バックの隙間からぬいぐるみの顔が覗いていた。

彼女も魔力が高いのだろう。本来は魔力を込めるために2、3人で祈る魔導鐘の祭壇に独りで入って行く。


それにしても人が多かった。一種の儀式(セレモニー)になっているのか、観客席まで用意されている。

とは言えそんな席に座っているは皆、裕福な服装をしている貴族で。集まってリムと共に祈っている多くの者は、粗末な身なりをしていた。


(あっ。まずい……)

キョロキョロと観察をしていると、ばっちり目が合ってしまった。誰かと言えばアルフラインとだ。


彼は観客席の上座に座って、明らかに咎めるような眼差しでルーシェを見つめている。



「皆さん、もうリム様は十分拝見したので、贈り物が売っているような場所に連れて行って貰えますか?」

令嬢を大慌てで急かして、その間もずっとルーシェに固定されている視線は無視して。


(早く、リム様の贈り物を探さなきゃっ)

後ろめたさを感じながら、目的のため彼に背を向けた。



ようやく出てきました。

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