予想外のメンバーでいざ
アルフラインはなるべくルーシェを危険から遠ざけようとする。
そのくせ彼が背負っているものの肩代わりは、全くさせてくれなかった。
それはルーシェを甘やかして護ろうとする堅固な優しい檻のようで。
大切にされていると幸せを感じる一方で、歯痒さが募っていく。
だけど今回は同行を認めてくれていた。
それだけでも頑張れると、舞踏会の特訓を乗り切って。
そうして迎えた出発の日。ターンメルダへ向かうのは意外な面子だった。
「ヴァオスさんを私の護衛に?」
「レナインを連れて行く代わりに、サイフォスはメザホルンに残さないと公務が回らない。……それだと君の護衛がね」
ヴァオス・アズ・リヴァイヤ。なんと生粋の人魚で、2ヶ月ほど前から客人として城で暮らしていた。
深緑の瞳に穏やかさを湛え、まっすぐな藍色の髪を後ろ一本で束ねている。
「姉者の時のような事を繰り返さないため、そなたは護ると決めた」
「護って貰うような、そんな大それた働きは出来ないかもしれませんが頑張ります」
ルーシェの母親もまた人魚だった。
もう故人なのは間違いなく、ルーシェが首につけているチョーカーは形見だった。
ヴァオスはその母親と親しい間柄で、ルーシェを訪ねてきたらしいがはっきり覚えていないのだ。本人からも何故かあまり詳しくは教えて貰えないが、アルフラインもその話には触れたがらなかった。
額を隠している両側に分けた前髪も含め、本来は明るい空色の髪は、アルフラインが耳に付けている宝石と同じ人魚の涙を付ける事で調整しているらしい。
胸に付けているハイビスカスの紋章はシンダルムに長く滞在するに当たり、新しく創られたものだった。
「ルーシェ、君はちゃんと夫人としての役割りは果たしている。だから危険な真似はしないで欲しい。彼女を護ってくれヴァオス」
「もう失うのは懲りている。………承知した」
「ありがとうございます」
普段は物静かな人物だが、剣の腕は近衛隊長のサイフォスのお墨付きだ。護衛に付いて貰えるなら頼もしい存在だった。
招待されているアルフラインにルーシェ。アルフラインの左腕で文官であるレナイン。護衛のヴァオスにルーシェ付きのメイドのエリー。
その他にも必要な面々が幾つかの馬車に分かれて、ターンメルダまでの旅路は出発したのだった。
ヴァオスさんがパーティにインしました。
サイフォスはしばらくお留守番です。




