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½人魚は¼人狼で王子の恋の罠に捕まりました  作者: まきゆ
共に生きようって誓ったのに隠し事はなしです。 辛い時こそ一緒にいたいんですよ?
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姉から届いた招待状

婚姻後から始まります

シンダルム王国。メザホルン領。


それは王国の南方に位置して、東はソダージュ共和国の国境に沿って大河が流れ、その上流に当たる北方はこの世界最大の湖が塞ぐ。

西側は人狼の領域(カルマヤノーラ)まで険しい山脈が連なり、南は海が広がる。


難攻不落な地形から陸の要塞と呼ばれるが、領土は内陸の酪農と海沿いの漁業が盛んであり、穏やかな気候から住む人もまた温厚な者が集まっていた。


そのメザホルン領主でシンダルム王国第7王子アルフライン・ハーク・ルギナスが妃を娶ってから幾ばくも過ぎておらず、城下町は活気付いて賑わっている。


ただ、城内は先日届けられた一通の手紙によって、城下町とは異なる雰囲気に包まれていた。

「舞踏会の特訓(レッスン)を毎日ですかっ。 頑張ります!!」

私こと、ルーシェ・カユン・ルギナスはそう張り切って水色の瞳を輝かせた。


緩やかな波を描く藍色の髪を腰まで伸ばし、胸にはアルフラインの妻である印として、彼と対の百合の紋章を付けている。

やや童顔なのは仕方がないと諦めているが、可愛いと言われる方が多かった。


メザホルン領主夫人で間違いないはずだが、寝室と執務室を行き来する他には庭園へ足を伸ばすくらいで、ほとんど夫人としての役割りを果たせていない。

そのため手紙の内容はルーシェにとっては渡りに舟だった。


メザホルンでアルフラインに次ぐ権力者のレナイン・ウォーカー執務長官もすこぶるやる気だ。

お願い致しますと言う言葉と共に伝えられたスケジュールは、分刻みで予定が立てられていた。


「レナイン……詰めすぎだ。これではルーシェが休む暇もない」

何故か振られた本人よりも先に難色を示したのは、ルーシェの夫であるアルフラインだ。


琥珀色の瞳を宿す容貌は怖いくらいに整っていて、それを隠すかのように左サイドへシルバーブロンズの髪が伸びている。

髪に半分隠れた左耳に水色のピアスを、右耳には涙型の水色の宝石がついた耳飾りをしていた。

胸にはルーシェと対の百合を紋章を飾っている。


「アルフライン様がルーシェ様とお会いする時間を減らして頂ければ問題ない範囲です」

対して、事務的な会話に終始しているレナインはその清廉潔白な印象のままに、柔らかな色素の薄い髪を後ろで縛っていた。眼鏡の奥のアイスブルーの瞳も含め、清白に徹している。胸を飾る気高いエーデルワイスの紋章に遜色ない人物だった。


「今までどれだけの招待をお断りしたか。夫人はいつまでも手元に隠して置ける存在ではありません」

「…………ルーシェの事はお前でも口を挟むのは許さないよ」

「差し出がましい真似を致しました。……ですが時間があまり残されていないのはご理解いただけませんと」

言い合いになるのは珍しい2人の間に、剣呑な雰囲気と沈黙が漂う。やがてレナインはアルフラインと対峙するのを諦めて、ルーシェに向き直った。


「その間ルーシェ様にはご負担をかけますがよろしくお願いします」

「レナイン様、もちろんです。……アルフライン様、心配しないでも私なら大丈夫ですよ!!」

張り切って返すとアルフラインはしばらくレナインに鋭い眼差しを向けていたが、諦めたように首を横に振った。


「ルーシェ……君が煎れた紅茶が飲みたい。頼めるかな?」

不器用なルーシェだが、練習したところレモンティーは作れるようになっていた。彼が好んでいるそれを差し出すと1口飲んで、苛立ちを紛らわせるようにゆっくりと吐息を吐き出す。

その仕種は何か張り詰めたものがあった。


「あのお手紙、何かあるんですか?」

「……杞憂で済むならいいんだけどね。……具体的に何か分かっている訳じゃない」

そう繕って微笑むものの、どこか困ったような顔をしている。


そんなにアルフラインを困惑させるような内容なのだろうか。

手紙は至って平凡な招待状だった。


妹のリム・ハーク・ルギナス姫の12歳の誕生会を開催するから、是非夫婦で参加して欲しいという。


送り主はアルフラインの姉のテレサ・ハーク・バルバラッサで、2週間後にターンメルダで開かれる誕生会のための準備が、メザホルン城では慌しく進められていた。



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