プロローグ
2章スタートしました。
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「はぁ。ろくな情報がないねぇ」
かつては賑わっていた関所脇の掲示板を流しみて、男は呆れたように呟いた。
「なになに。病気の父のため、家出した妹を探してます……ねぇ。わざわざ隣の国まで報せを貼るなんぞ、酔狂なこった」
見つかるものなのかと首を捻ったが、まともな貼り紙はそれと自警団の募集だけしかない。
後は安い賃金で人を探している募集と、高い価格で劣化品を売り付けている広告しかなかった。
大っぴらに掲示板では取り引きされていないが、奴隷の売買も裏では行われているという噂もあった。
「随分、腐ってるな…………」
ソダージュ共和国がシンダルム王国の関所街であるターンメルダの、一方的にあげた通行料に反発して国交を閉ざして数年。
交易で栄えた街の面影は消えつつあった。
「ここの領主がそのうちシンダルムの国王になる奴だっけ?」
二手に別れて争っているが、優勢なのは現正后派の第2王子でターンメルダの領主だったはずだ。
徴収した高い通行料に加えて、住民に重い税を掛けて貯蓄も巻き上げているらしい。
貴族達だけは贅沢三昧で暮らしているという悪評は国を超えても聞こえてくる。
そんな周りの評判など意に介さず、年老いた王に代わり権力を握った第2王妃の正后は第1王妃の子の皇太子を排して、自分の息子を王に据えようとしていた。
「やっぱり適当に女を選ぶと後が大変だねぇ。俺も嫁を貰う時には注意しないとな」
そんな気は更々ないくせに、男はにやっと豪快に笑った。
彼の赤褐色の目はあまりシンダルムでは見かけない色合いだった。
頭へ巻いたターバンに隠れたくせっ毛の髪も赤褐色で、その小麦粉の肌にしっくりくるものだ。
壮年を過ぎて衰えるどころか増すばかりの覇気を、極力抑えこむように地味な服を着ている。
それでも上背があり鍛えられた身体は十分目立っていたが、行動を制限されるほどではない。
ここでは誰しもが余所者に構っている余裕さえなくしているようだった。
「ここは俺が貰ってもいい場所かもな」
子供が新しい玩具を手に入れた時のような無邪気さで、口に出されるフレーズは穏やかではない。
「さて、俺の嫁候補っていうお姫様の情報でも集めに行きますか」
自分を餌にして、内戦でも始めようとするシンダルムの情勢が面白くて仕方ないのだ。
他国で流れる血など彼にはさっぱりどうでも良かった。
口笛でも吹き出しそうな軽やか足取りで、男は街中を目指して消えた。
さてこの人は誰でしょう。




