Rhapsody in blue for love with you ~君と奏でる愛のための憂鬱な狂想曲~ 4曲目
ようやく邂逅のところまで。
待っている最中に水色の髪を編んでミサンガにすると、あの子の温もりに護られているような心地になる。
しばらくしてアルフラインが座っている広間に、小船の近くで倒れていた人物が連れて来られた。
(…………サイフォスの奴っ!!)
頭をあげた顔は忘れられない。海で見た女の子だった。
髪は短くなっていて色まで違っていたが、間違えるはずもない。
一夜の幻か夢だと諦めかけた、見惚れた存在が目の前に立っている。
その喜びを表現する言葉をアルフラインは知らなかった。
(どこら辺が野郎なのかな……)
男物の服を着ていても明らかに身体付きは女性で。何よりアルフラインの命の恩人だ。
それを牢獄に放り込むなど眩暈がした。
(まぁ留めておいてくれていたのは好判断だったけど……)
自由なままメザホルンを去られていたら、こうして再び出会うのは難しかったのだから。
胸が踊って仕方がなかった。
「…………男だって聞いていたんだけど。君、女の子だよね?」
そう訊ねると間違えられた羞恥からか赤く頬が染まる。その頬に触れてみたいという欲求に従って距離を詰めた。
こんなに自分の欲に対して忠実に行動したのはいつ以来だろう。産まれて初めてかもしれなかった。
腕に抱くと更に赤くなるところも、チョーカーを返して欲しくて必死になるところも可愛い。
滅多に感情のまま行動しないせいか、取り繕うように不遜な態度になってしまう。
ひと目で好きになったと伝えても全く信用されなかった。
(本心なんだけどなぁ)
浮かれているせいか、締りのない顔になっているのが悪いのかもしれなかった。
ミサンガを目にして顔色を変えたのに、嵐の海でアルフラインを助けていないと嘯く女の子はルーシェと名乗った。
ソダージュ共和国に帰りたいという願いを聞き入れる素振りはする。
けれども叶えるつもりは更々なかった。




