Rhapsody in blue for love with you ~君と奏でる愛のための憂鬱な狂想曲~ 2曲目
書き始めて1ヶ月くらい経ちました。
ブックマークや評価ありがとうございます。
嵐の濁流はアルフラインを飲み込み、簡単にその命を奪おうとしていた。
水中で霞んでいく意識が途切れる前に、どぼんとすぐ脇で飛び込む音を聞く。
(……追って来たのか? 助かる筈がないのに愚かな事を……)
最初はレナインだと思っていたが、すぐに違うと気づく。
長い髪を嵐の海に揺らしながら近づいてくるのは、もっと小柄な女の子だった。
(こんなところにどうして?)
荒れ狂う海を泳ぐなど到底不可能だ。だが彼女の周りだけは水流が凪いでいた。
アルフラインを掴むと強引に海面まで引き上げて、大きく息を吸う。
月明かりもなく船の灯りも乏しかったが、アルフラインは人狼の血もあって夜目が効く。
可愛いらしい凛とした顔立ちは、赤い視界の中でも際立って美しかった。
「こっこれ、おっ溺れるかもっ」
水を掻いている腕は華奢で、とても嵐の海を長く泳ぎ続けられそうではなかった。
(溺れそうになってまで、助けに来なくたって良かったのに……震えているじゃないか)
寒さからか、海への恐怖か、腕越しでも震えているのが伝わる。
(どうせ投げ出した命だ。捨ててくれたって構わないのに。ほら、君が溺れてしまうよ…………)
それでも必死にアルフラインを引っ張ろうとするので、仕方なく抱き返す。
冷たい水の中で触れる温もりが、心に染み込んで熱を与えてくる。
「助けるよ!! 大丈夫だから」
不安がっているとでも思ったのだろう。
こちらを安心させるためだけに微笑む顔がとても綺麗で。
もっとはっきり見てみたくなった。
(あぁ、美しい水色なんだな……)
この僅かな間でも笑ったり不安がったりしている表情豊かな瞳も、水に濡れてもしなやかな長い髪も。澄んだ水の蒼をしていた。
気がつけば世界に色が戻っていた。
それ以外もじわじわと、彼女から拡がっていくように鮮やかさを取り戻していく。
(マレンカレンでは天界への迎えは人魚が来るのか……)
そんな現実感のない考えが脳裏を過ぎる。
(……ずっと一緒にいてくれたらよいのに)
そうしたら、この死んだような世界も変わるだろうか。
夢を見ているかのような、そんな感覚の中で子供のように希求した。
温かな熱に意識が溶けて、いつの間にか気を失っていた。




