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½人魚は¼人狼で王子の恋の罠に捕まりました  作者: まきゆ
邂逅を果たした王子様が甘ったるく溺愛してきますが、私は本物人魚の身代わり婚約者みたいです。それでも貴方に恋をしてしまったのを後悔はしていません
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嵐の海で

溺愛物を読んでいて、無性に書きたくなった物語です。

よろしくお願いします

突然ですが絶体絶命(ピンチ)です。

轟く雷鳴。荒れ狂う波。普通の人間ならとっくに海へ投げ出されている。


私こと、ルーシェ・カユンが独りで乗っている船は魚釣り用の小型漁船なのだ。暴風に耐える装甲はなく、おまけに夜も更けたせいか、辺りは真っ暗闇だ。


「嵐の海ってこんなに大変なんだ」

常日頃から、ルーシェの父親が3人の息子にしているお説教が聴こえてきそうだ。


「漁師たるものどんな時でも気を抜いちゃいかん! だったかしら。…確かに大事ね。お父様」


方位磁針を海に落としてしまったため、既に右も左も分からなくなってしまった。

せめて月明かりがあれば、色んな意味で随分と違っていたのだが、嵐を巻き起こしている雲は暗く厚い。


「はぁ。この力があって良かったって思う時もあるんだなぁ」

海面を叩きつける勢いの大粒の雨は、不自然なまでにルーシェが乗る船を避けて海に降り注いでいる。


「また、髪を切らなくちゃ……」

夕方には肩までだった髪は、真夜中になる頃には腰まで伸びてきていた。

柔らかいウェーブを描く美しい髪はアクアブルーに染まっている。日頃は深い藍色をしている髪は、この力を使ったり月明かりを長く浴びると、瞳と同じアクアブルーに染まっていく。しかも力を使うほどに伸びてくるのだ。


水や海に住む生き物を操る力を産まれながら持っていたルーシェは、そのせいで漁師を生業にしている父親に海に連れて行って貰えなかった。

父親曰く、この力は人魚(マーメイド)に好かれるので攫われてしまうそうだ。


「あぁあ、大きなお魚を捕まえて、せっかくお父様に認めて貰う計画がぁ……なぁ」

3人の兄のように漁師の腕があれば、街1番の金持ちだが、あのいけ好かないボンボン息子との縁談は考え直してくれるかもしれない。

と、半ば家出気味に兄の服を勝手に持ち出して、なんなら家の船も無断拝借して来たというのに。

釣果を認めて貰うどころか無事に戻れるか解らない始末に肩を落とす。ルーシェの力では暴風を弱めることは出来ず、帆を畳んでいても何処まで流されているのか見当もつかない。


「これからどうしよう……」

無意識に首にはまったチョーカーに触れる。考え事をする時の癖だった。

心細さに震えながらあどけなさを残す細身の体躯を包むダボダボのツナギ服は、これっぽっちも似合っていない。

それでも雨に濡れたくらいでは品を失わない母親譲りの美貌は、神秘的な美しさを秘めていた。

「とりあえずこんな力もあるんだし、海で死んじゃったりはしないよね。多分………」


まだ恋もしていない。やってみたい事が海原の先に目いっぱい広がっているというのに。


とは言え解決策もなく、吹き荒れる風に任せて漂流していると、波の間から僅かに灯りが瞬いた。


「明かり?! っこれで助かるかも」

差した光に縋る想いで、ルーシェが念じると船は自動で針路を定める。

チカッチカッとたまに波間に消えては光るだけだった灯りが徐々に大きく像を創っていく。


「……うっわぁ。立派な船」

近づいて見上げてみれば、それは豪華な宝飾がされた客船で、海に浮かぶ宝石箱のようだった。


だがしかし。こちらも嵐なら、あちらも嵐。


むしろ巨体のせいか波を諸に受けていて、今にも転覆しそうな勢いで揺れていた。

とてもルーシェを助ける余裕など無さそうだ。


(乗ったら気持ち悪くなりそう)


何時ひっくり返ってもおかしくない船体を青ざめながら眺めていると、一際大きな波が船首を襲った。


硝子が割れる派手な音と共に破壊された欠片が散らばる。

その最中、人らしき影が海に放り出された。


「あれって……。人が……落ちた? よね?…………たっ、大変!!」

助けなきゃと、客船の淡い灯を頼りに近くまで小船を寄せて、迷いなく海に飛び込む。


ルーシェでなきゃ絶対溺れている。否、ルーシェでさえ溺れかけながら、荒波に飲み込まれた身体を掴む。相手が縋るように掴み返してきたので、安心させるように微笑み返す。

「もう大丈夫だから!」


力強く励ましながら、暗さや水を吸った身体の重みに負けず何とか船に引き上げた。

その間に気を失ったのか返事はなく、ぐったりとしている身体を横にする。

胸に耳を当てると心拍が返ってきて、ほっと息を吐いた。


「良かった。だけど尚更これからどうしよう…」

客船は先程の大波で動力にも支障をきたしたのか、息も絶え絶えな様で灯りも消えかけていた。沈んでいないのが奇跡に近い。


「船に戻すにしても、あんな状態じゃ難しいな…」

このままでは客船も含めて遭難してしまう。途方に暮れていると、最後の力を振り絞るように鈍い音を上げながら客船が大きく方向を反転して動き始めた。

「この人を放っておく訳にもいかないし……付いて行くしか……ないか…………」


何処に向かっているかも分からないけれど、今より悪くはならないだろうと、ルーシェは腹を括って小船を動かした。

とりあえず書き貯めている分だけは毎日。あとは……頑張りたいです

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