陽の明かりの祝音
ルーシェの髪はプリ〇ュアの変身シーンみたいな?
(良く眠ってるし……今なら……)
穏やかな寝息を立てているアルフラインを寝室に残して、ルーシェが向かったのは城の中心だった。
最上階から続く螺旋階段は魔導鐘へと繋がっている。鐘の前には数人が乗れそうな広さの台が供えられていた。
「魔力の蓄積量を示す針って……あぁ、あれなのかな?」
鐘の上の方に取り付けられている針が示している残量は極わずかだった。
「祭壇で祈りを込めて魔力を捧げるんだっけ?」
本に書いてあった内容を思い出しながら祭壇にあがる。
「アルフライン様の代わりに少しでも魔力の供給が出来ればいいなぁ」
髪を編んだミサンガに魔力があるなら、本人にも反応があるのかもしれないと思い立って、ルーシェはこの場所にいた。
「……………………って? …………祈るって??? こんな感じ?」
手を結んで目を瞑る。
しゅるんと髪がアクアブルーに染まり、身体の芯が熱くなった。
祭壇の床が淡く光り、魔導鐘も輝いていたのは、そんなに長い間ではない。
魔力の蓄積量を示す針が零の近くから反対に振り切れた。
「えっと…………これで大丈夫? なのかな?」
拍子抜けすぎて、やり方が間違っているのかと不安になる。髪の色がアクアブルーにはなってしまうので、誰かに相談するのは難しそうだった。
「次に鳴る時になれば判るよね?」
先程鳴り終わった夕刻を告げる鐘は、ほとんど聞こえないくらい弱々しかった。
染まった時に切れば、そのままの色が残る不思議な髪は、徐々に藍色に戻ってきている。
完全に藍色になってから、何事もなかったかのようにアルフラインの側で看病を続けた。
気付かぬ間に夜になり、雨はやんでいた。
――ふかふかのお菓子の上に寝転んでいたら、空から綿菓子が降ってきた。
まんまるお月様がパンケーキになって、食べたらほっぺたが落っこちるくらい甘かった。
――ォーン。ゴォーン
(……遠くで何か鳴ってる。……鐘? …………鐘!?)
はっとして目を開ける。
いつの間にか寝台の横で眠ってしまっていたらしい。知らぬ間に毛布が掛けられている。
「おはよう。ルーシェ」
「……おはよ……ございます。……あの……何をしてるんです?」
「何って? 君が幸せそうに寝ているから、ずっと眺めていた」
驚くほど近くに、寝台で膝をついて座っているアルフラインの顔があった。
艶がある笑顔はいつも通りに戻っていて、状況も忘れて見惚れてしまう。
「ここ、寝癖がついてる。可愛いなぁ」
頭を撫でるように髪を梳かれる。それは夢の中のふわふわした感覚に似ていた。
「とっ。とにかく!! 元気になったみたいで……。魔導鐘も鳴ってるみたいで良かった」
「うん。そうだね。……朝の鐘の音はちゃんと鳴ってたよ。準備をして朝食を食べに行こう」
「はい!!」
元気に返事を返して。すっかり晴れた朝の日が、眩しいくらいに2人を照らしていた。




