大雨と発熱と
ベタな展開のためにpart3
雨に打たれて熱と看病はセットだと思います。
後は教えて、レナイン先生!
翌日の朝、アルフラインは食事を摂りに来なかった。
「発熱ですか……」
案の定である。昨晩から様子はおかしかった。
アルフラインの状態をレナインから知らされて、講義が始まる前から既に気も漫ろだ。
「……今日は早めに終わりに致しましょう」
遂にはそう切り出されてしまうが、レナインにも理由があった。
「私も雨の対応に追われて、時間がありません。川の水位を下げ、水路を維持するのに魔導具を多く使うため、指揮を取らないといけません」
昨日からの大雨があがるのは夕方くらいだろう。振り続いた雨はかなりの量になっている。
アルフラインが寝込んでいる今は、レナインが全てを取り仕切る必要があった。
「アルフライン様の側についていて頂けますか。この分だと夜半には魔導鐘の魔力も尽きそうなので、燭台を準備しておいてください」
眼鏡を指で持ち上げる普段通りの仕草にも、何処か余裕がない。
結局、講義を打ち切って、なるべく物音を立てないように王子の寝室へ入る。
水差しと水を張った桶。燭台も用意して、寝台の隣に椅子を引いてきた。
アルフラインの額に絞った布を当てる。
「ルー……シェ…………?」
横になってはいても意識はあるのか、すぐに名を呼ばれた。
「…………無茶をするから、熱が出るんです」
「……うん。反省はしてる……これ……ひんやりして……気持ち……いい」
喋るのは少し辛そうだ。喉も乾いているのだろう。
「はい。お水も飲んで。他に欲しいものはありますか?」
「……何にも……いらない。君が……居てくれる…………?」
「…………熱がさがるまでは此処に」
ルーシェの言葉に安心したのか、アルフラインはしばらく黙って横になっていた。
ゴォーォ。コォーォ――
どこか力なくお昼を告げる鐘の音が鳴った。
「……音が……足りないな。……魔導鐘に魔力を込めないと」
それを聴いて、起き上がろうするのを慌てて留める。
「体調が回復するまでは駄目です!! ……レナイン様が魔導師様を手配されているから大丈夫ですよ」
ゆっくり休んで欲しくて、咄嗟に嘘をついてしまう
王都の方には優秀な魔導師や魔力の強い貴族もいるが、急に手配するのは難しいとレナインは言っていた。
「…………そう」
何とか納得したのか、また身体を横に倒して目を瞑る。
「……大丈夫です。休んでください」
そう囁いて、アルフラインの身体に手を当てていると、疲れもあるのか眠ってしまったようだった。




