思い出《しあわせ》の在り処
ベタな展開のためにpart2
タイトルにルビを使えないのが残念
夕方近くから降り始めた雨は、夕食の時刻になってもまだ降り続いていた。
珍しくアルフラインは遅れてきた。
服装は昼頃とは変わって着替えていた。
何かあったのだろうか。
席も向かい合わず隣に座る。やっぱり変だ。
「どうかされたんですか?」
「探し物をしてた。ほら……」
紋章はロケットブローチになっていて、アルフラインがそこから取り出してテーブルの上に置いたのは、葉が4つのクローバーだった。
「アルフライン様…………これ!?」
あの後、探していたのだろうか。簡単に見つかるものではないのに。
「俺はルーシェをソダージュ共和国には帰してやれない……帰したくないからね。その代わり、ここに居て君が望むもの全てを叶えたいんだ」
「っ。私はそんな……」
「君を育てた家族にはなれないけど、思い出を塗り重ねっていったら君は寂しくなくなるのかな?」
「…………ソダージュに戻るつもりは……そんな事を……望んではいません!!」
ざぁざぁと音が室内に響く程に雨は振り続いている。
その中でどのくらい探していたのだろう。体調でも崩したらどうするのか。
「……喜んで……くれると…………思ったんだけどなぁ。だけど、君は怒っている……」
ルーシェの怒気に気圧されて、アルフラインが力なく呟く。
「婚姻の誓いをお受けした時から、私に取ってアルフライン様はもう家族です!! なのにひとりで無茶をされたから悲しいんですよ!!」
少なくても、故郷より父や兄達よりもアルフラインの側にいる事を選んだのは、綺麗なドレスを着て豪華な食事を楽しむためでは無い。
「…………ルーシェは凄いね。姉と妹と…………母がいたけれど。今まで誰も……家族の真似事すら、して来なかったよ」
こっちは怒っていると言うのに、どうして微笑んでくるのか。そんなに幸せそうな顔をされたら、これ以上怒る気がしなくなってしまうからやめて欲しいのに。
「……思い出を作るなら一緒がいいです。次は許さないですよ! いいですか!?」
肩を竦めただけでアルフラインは返事はしなかった。
その代わりテーブルに並んだ皿に目を向ける。
「ほら、料理が冷めてしまうよ。いただこう? 料理長のポップが気合いを入れて作っているんでしょう? 」
そう勧めた本人は1口2口食べただけで、黙って四葉のクローバーを見ていた。
「君を怒らせてしまったから、これは要らないものだったなぁ……」
しゅんとしていて、何か悪戯を叱られた子供のようだ。
「……押し花にして、後で対の紋章に大切に入れておきます」
アルフラインが不思議そうな顔をしてルーシェに向き直った。
「なんの役にも立たない……魔力も含んでいなかった。しかも君を怒らせたのに?」
「四葉のクローバーを持っていると幸福が訪れるんですって。これはアルフライン様が贈ってくれた思い出ですから……誰にも差し上げません」
そう笑い返すと、珍しくアルフラインは耳まで真っ赤にして露骨に目を逸らしていた。




