藍色と水色の狭間で ほろ酔いの戯れ
R15はキスまでならokだと思ってるんですがあってますでしょうか?
とりあえずそういった感じの話です。苦手な方はご注意ください。
昼間とは雰囲気を一転させた景色は、海岸線に街灯りが光り、その先には夜を吸って真っ黒な海が広がっていた。
さざ波の音は聞こえないが、微かに磯の香りが夜風に混ざっている。
波が呼んでいるようだ。昔からルーシェは海に呼ばれている感覚があった
「……紋章を胸に飾っていたら、浜辺に行ってもかまわないですか?」
ネグリジェの時は外しているが、百合の紋章を付けていれば捕まる事はないはずだ。
「どうして?」
あまり肯定的ではない口調だった。外出禁止は継続されたままなのだろうか。
「好きなんです。ただお父様はお前は海に攫われてしまうからってあまり連れて行ってくれなくて」
「浜辺ねぇ。あっ、そういえば良い場所があったな。今度、共に出掛けよう」
「本当ですか!?」
一緒に海へ行けるなんて嬉しいと、表情を明るくする。
「ただし1人で行くのは認められないよ」
「わかりました。楽しみに待ってます!!」
素直に喜んでいるルーシェにアルフラインも微笑みかけてくる。
「ようやく…………笑ってくれた」
「えっ?」
「ずっと強ばった顔をしていたから、騙して百合の紋章を受け取らせたのを怒っているのかと思ってた」
「……っ。びっくりはしましたけど、怒ってはないです」
どうやら露骨に態度に現われていたらしい。もっと慣れていかなければと自分を戒める。
「ここは街灯りの他にも星が見渡せるんだ。月のない晩はずっと独りで眺めていたのだけれど……これからは君が隣に居てくれる」
アルフラインは星が好きなようで、ルーシェの横で指さしては星の説明をしてくれる。
その度に持っている果実酒が溢れそうだった。
「あの…………酔ってますか?」
「そうだね……少し。君が俺の紋章を受け取ってくれたから、浮かれているんだ」
「浮かっ?……楽しい気分になれるなら、今度私も飲んでみたい……です」
惚気ける台詞に果実酒を飲み下しているアルフラインより、ルーシェの方が赤く染まる。
白いネグリジェから色付いたうなじが覗いて、煽情的なほどだった。
「……今日は手を出すつもりはなかったんだけど。可愛いなぁ。これ持ってて」
些か強引に果実酒が入っているグラスを渡され、慌てて両手で掴む。
何をと問い返すより前に唇が重ねられた。
お酒の味が口腔に拡がって身体が火照る。
「ネグリジェ姿っていうのは目に毒だね」
「……なっ……に」
戦慄くあまりグラスを落としそうなくらい動揺しているルーシェに対して、悪戯を仕掛けた本人は飄々としたものだ。
「……無理に抱いたりはしないよ。けど意識はして欲しいな。じゃないと悪い狼に食べられてしまうよ?」
くいっと濡れるルーシェの唇を指で拭って、アルフラインはそのまま風に戦いでいる藍色の髪を梳いてくる。
「……伸びたんだね。もう君を男と間違える輩はいないんじゃないかな」
髪は耳に掛けられるくらいにはなっていた。
手は止まず、ルーシェを撫で続けている。
「あれはサイフォスが女っ気のないのもいけないのだけどね。そういえばなんで男物の服を着てたの?」
「あっあれは兄様ので。無理やり縁談させられるのが嫌で家出の途中で…………」
ぴくっと触れていた手が反応する。
「結婚させられそうだったんだ。……良かった。ルーシェがまだ誰かのものになる前で」
尚更優しくなった手つきが、火照る身体を安心させるようにゆっくり冷やしていく。
「…………私は……誰のものでもありませんよ?」
「……そう。でも唇は俺が貰ってしまったから、もう誰にもあげないで?」
大事なものをそっと包み込むかの様な触り方に、大切にされているのが伝わって嬉しくなる。
「ミサンガの色合いも良いけれど、この色も綺麗だな」
「っ……」
だけどその分、悲しくなるのも一瞬で。
何気ない一言だからこそ、胸に刺さる。
寝る前だからか腕にミサンガは巻いていない。それでもアルフラインからその存在がなくなる時はないのだろう。
比べられるのは覚悟しなければならない。
いつもよりも仄かに赤い頬を夜風に当て、気持ち良さそうにしているアルフラインの横にいるために。
たとえ心に雨が降っていても、側にいると決めたのだから。




