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水妖使いの鳶 ─淡川奇譚編─  作者: 愛川鯛馬
1/1

発端

初投稿です。今年の夏も暑い!!

ということで夏に因んだ作品を連載します。是非お楽しみください。


ここ囲林村での生活に、僕は飽き飽きしていた。本当に退屈だ。

みんなでひたすら村を駆け回り、遊びつくした鬼ごっこ。どこにいるかな~?と一生懸命探したかくれんぼ。だれが一番大きな虫を捕れるか競い合った虫取り。キノコ採りや紅葉狩り、イノシシ狩りを楽しんだ山登り、みんなでワーワーと騒ぎながら水を掛け合ったりした川遊び。

今思えばその遊びのどれもが、なぜこんなに僕を夢中にさせていたのか、だんだんと大人になってきた僕には解らなかった。最近はやりたいことがなんにもない。…とそんなことを最近はずっと考えている。いつも通りうちでゴロゴロしていたある日、村にある一つのオキテを思い出した。


ー村の外れにある淡川には決して近づいてはならぬ。もし誰かがいなくなったときにはそこを最優先に捜索すること。胡瓜、山菜、を必ず持っていきお供え…ー


詳しくは覚えてないが、そんな感じだった気がする。小っちゃい時から村の大人に教えられてきたオキテ。昔はそこまで深く考えずに聞いていたが、今更ながらに、何故淡川に近づいてはいけないのか、何がそこにはあるのだろうか。何か…そう思い始めた途端、その理由を確かめたい、自分の目で確かめたい、そういう気持ちが僕の心を駆り立てた。

いつもいないはずのじっちゃん(椛のじっちゃんとよく将棋を指しあっている。何が楽しいのかさっぱりだ。)が運良くうちにいた。今だと思い、じっちゃんにすがりつき、そのオキテについて聞いてみた。すると、じっちゃんは渋々ながらに語った。 


「…淡川にはアレが住み着いておる。アレは人の子を攫い自分の糧とするのだ。決して村の外れにある淡川には近づいてならぬ…」


何度も聞いたことのある台詞にうんざりしつつ、気になることが一つあった。


「アレってなに?」

「……………………………………………」


僕がそう尋ねてもじっちゃんはいつも頑なに口にしなかった。

アレとは何なのか。どんな姿をしているんだろうか。そんな好奇心が僕を覆った。

そして、今日の昼過ぎに僕は淡川に行くべく、村の奥にある雑木林へと入った。

 

バクッバクッバクッバクッバクッバクッバクッバクッ 


胸の鼓動がただひたすらに鳴り続けていた。そんなことなどお構いなしに僕がひたすら進んでいく中、辺りには蜩の声ばかりが耳をつんざく程響き渡っていた。


だんだんと日が落ち、夕暮れになってきた。時は早く過ぎていくものだなと改めて思う。そろそろ家に帰らないと駄目だと思いながらも、どうしてもアレの正体が知りたくて知りたくて仕方がなかった。今日中に見つけなければ、という謎の使命感が…。今日しか出会うことができないのではという気がした。


ガサガサガサガサ…ガサガサガサ…


「っひ!?」


突如として、生い茂る雑木林の中を何者かが走り去っていき、思わず驚いてしまった。僕はすぐに辺りを見渡したが、何もいなかった。リスか何かが通ったのだろう(でもリスにしては音があまりにもでかかったな)、そう思いつつ歩みを進めた。

暑い。暑い。体の穴という穴から汗が吹き出し、体中がベタベタになってしまった。着物が体にまとわりついている。気持ち悪くて仕方がない。夏の猛烈な暑さにとうとう嫌気がさしてきた中、しばらく進んでいくと、静かな川の流れる音が耳に入ってきた。少しではあるが、風鈴の音を聞いているときのように涼しさを感じることができた。

「よっし!!」

僕は最後に気合を入れておとのするほうへ、紅く輝く光の見えるほうへ走っていった。


ザーーーーーーーーーーーーーーーー


すると…、そこには村周辺の山で一番高い天烏山の頂上から流れる大きな川があった。

「おお~!!これが淡川かぁ!」

あまりの美しさに僕は感動した。今まで村に生活していてもそんなことはなかったのに…。

その名の通り淡い青と緑の混じりあった色をしていて。紅い夕陽が当たってとピカピカと輝いていた。どこか神秘的な雰囲気が広がっていて、さっきまでの暑苦しい空間と全く違う空気の世界だった。僕は早速ソレに近づいて行った。早く水を浴びたくて仕方がない。じっちゃんの忠告など覚えてはいなかった。


ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ


そ~っと水面に近づき、覗いてみた。本当に透き通っていてきれいな川だった。川底まですっかりと見えてしまうほどに綺麗で、見蕩れてしまった。静かに流れる淡川、見ていて身も心も清められているような気がして…

 

ぼちゃん


突然僕の横で何かが川へ飛び込んだ。咄嗟に振り向いてみても何もいなかった。さっきまで何の気配も感じなかったのだけど…。よく水中をみてみると…。


「あ!!」 


川底には黒い何かがいた。よく見てみようと、前かがみになったその時。  


ヒュウウウウウウウ…


「っいった?!」


夏とは思えないほど涼しい奇妙な風が耳に当たった。涼しいだけならありがたいのだが、何故か耳を触ってみるとドロリとした赤黒い液体が手についた。切れてるっ?どうして


ガッ、ドン


あまりにも一瞬の出来事で。何が何だかわからなかった。僕の体は急に冷たい何かに覆われて、顔、腕、体全体が痛い。数秒経った後にようやく、足に何かが引っかかって川に落ちたのだと気づいたが、もう遅かった。さっきまで見ていた川とは違い、流れがとても速く、底が深かった。なんでだ?!


「ガハッ!?…、ハッ!ハア!…」 


くそっ!!必死にもがいてももがいても全然這い上がることができない。それどころかどんどんどんどん沈んでいく…。嫌だ!!こんなところでじにたくな


ブチッ  


僕の何かが切れてしまった。顔の左側がジンジンと痛む…


(…決して村の外れにある淡川には近づいてならぬ…)


今更ながらにじっちゃんの忠告を思い出した。ようやく今まで探していたアレの影(?)を見つけたのに。昔から村に伝わるアレの正体をもう少しで知れたのにっ!…悔しくてたまらなかった。段々と息が続かなくなってきて意識が朦朧としてきた。体全身に激痛が走り、ジンジンジンジンとずーーーーっと痛くて痛くて…、段々と考えるのも動くのも嫌になって…、もう何もかもが嫌になっていって、もがくのをやめた。


「ヴぁう…、ヴぁメだ」


その時だった。


ガシッ!!


何かが僕の右腕を強く掴み、引っ張った。痛い…、こんな時に誰だよ。顔を上げると目の前にはぼんやりとではあったが、濃い緑色の何かがいた。

そこで僕の意識は消えた…。




読んでいただき本当にありがとうございます!!

更新は不定期ですが、待っていただけるとありがたいです!

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