婚約破棄を予知したので、腐りきった祖国なんか捨てて、他国で幸せになってやる5
カオリのライバルが現れる話です。
「お~い、遊びに来てやったぜ」
「今すぐ自室に戻りなさい」
また馬鹿聖女が遊びに来た。
何が『遊びに来てやったぜ』なのよ。
迷惑だから、さっさと帰って欲しい。
彼女の名前はミコト、私が自ら認定した聖女だ。
しかし彼女を聖女に認定した事を後悔している。
大聖女の私より偉そうだし、口調も男性みたいだし、直ぐに暴力沙汰を起こす。
本当は聖女の資格を剥奪したいのだが、彼女は次期大聖女候補なので、簡単には剥奪出来ない。
本当に鬱陶しくて、忌々しい。
「そんなに邪険にするなよ。俺とアテナの仲じゃないかよ。それよりもお茶とお菓子は出ないのか」
「誰がそんな物を出しますか」
そして図々しい。
このままではストレスが溜まって、胃潰瘍になってしまう。
早く何とかしなければ、マジてヤバい。
「北方の大陸での布教活動を命じれば、良いんじゃないの」
「名案よ。ありがとう」
友人の王女が名案を教えてくれたので、実行する事にした。
「貴女に北方の大陸での布教活動を命じます」
「断る」
「拒否は認めません」
【探知転移】
「何をしやがる」
早速ミコトを以前に訪れた事がある北方の大陸に転移させた。
「さようなら。戻って来ないでね」
「畜生。覚えてやがれ」
ミコトは捨て台詞を吐いて、姿を消した。
「畜生。アテナの奴」
突然若い女性が現れた。
「「「ミコト?」」」
どうしてこの女がこの大陸にいるんだ。
よりにもよって厄介な女が現れたわね。
とても不味いです。
俺達が南方の大陸を追放された元凶の女が現れた。
【回想開始】
「俺に喧嘩売るなんて、百年は早い」
「もう止やめてくれ」
「許してくれ」
「頼む」
「止めてくれだと。許してくれだと。頼むだと。止めて下さいだろう。許して下さいだろう。頼みますだろう」
「止めて下さい」
「許して下さい」
「頼みます」
「駄目だ」
ミコトが三人の男達との喧嘩に勝ち、執拗に暴行を続けていた。
「そのくらいにしておけ」
「もう許してあげなよ」
「本当に死んでしまいますよ」
アオイ達がミコトを止めた。
「うるさい。外野は引っ込んでいろ。それとも今度はお前達が相手をしてくれるのかよ」
「別にそういう訳ではない」
「これ以上見ていられなかっただけよ」
「そうです」
「正義の味方気取りかよ。虫酸が走る」
「何だと」
「言ってくれるじゃない」
「仕方ありません」
アオイの瞳と髪が青に変化した。
アカネの瞳と髪が真紅に変化した。
ミドリの瞳と髪が深緑に変化した。
「お前達、凶戦士かよ。面白いじゃねえか」
「先ずは俺が相手だ」
「雑魚を一々相手するのは面倒だから、三人纏めて掛かってきな」
「舐めるな」
「調子に乗らないでよ」
「後悔しますよ」
「そんな程度かよ。口程にもねえな」
驚いた事にミコトは三人を軽く圧倒していた。
「そんな馬鹿な」
「私達が圧倒されるなんて、あり得ない」
「信じられません」
「これで終わりだ」
「うわぁ」
「きゃあ」
「きゃああ」
遂に三人は敗北してしまった。
「お前達三人を大陸から追放する」
何故か三人の方が悪いと判断されて、南方の大陸を追放されてしまった。
【回想終了】
「誰かと思ったら、アオイとアカネとミドリの三馬鹿じゃねえか」
「「「ムカつく」」」
相変わらず性格が悪い女だ。
本当に嫌な女ね。
最低最悪な女です。
「やる気かよ。凶戦士ども」
「「「凶戦士?」」」
「てめえ」
「よくもバラしてくれたわね」
「許せません」
「秘密だったのかよ。そいつは悪かったな」
三人の瞳と髪が変化した。
「あの時の借りを返すぜ」
「今度は負けないわよ」
「覚悟して下さい」
「返り討ちにしてやるぜ」
リベンジが始まった。
「少しは強くなったじゃねえか」
「伊達に冒険者はしていない」
「そうかよ。それじゃ少しだけ本気を出してやるよ」
【身体強化】
ミコトが身体強化のスキルを自分に掛けた。
【身体弱化】
そしてアオイ達に身体弱化のスキルを掛けた。
「また負けるのかよ」
「どうしてなのよ」
「悔しいです」
「立てよ。このくらいじゃ終わらせないぜ。此処にはうるさい奴は居ないからよ」
「待ちなさい。今度は私が相手になってあげるわ」
更に暴行しようとした時にカオリが乱入した。
「外野は引っ込んでいろ」
「私が怖いの」
「何だと」
ミコトを挑発して、新たな乱闘が始まった。
【身体弱化】
カオリに身体弱化のスキルを掛けたが、効果が無かった。
【身体強化】
カオリも身体強化のスキルを自分に掛けた。
【身体弱化】
更にミコトに身体弱化のスキルを掛けた。
「俺以外に身体強化と身体弱化を使える奴が居るなんて、そんな馬鹿な事があるか」
カオリも身体強化と身体弱化が使える事に驚愕した。
「俺が負けるなんて、あり得ない」
今度はカオリが勝利した。
「さてとお仕置きの時間よ」
「何をしやがる。止めろ」
カオリはミコトの所持金を奪い、下着を除いた衣服を剥ぎ取り、ミコトを大きな木に吊した。
流石に全裸にはせずに、衣服も燃やさなかった。
「暫く下着姿で反省しなさい」
『おい、所持金を奪うなと忠告しただろう。仲間にドン引きされるぞ』
アサンの念話が届いたが、当然無視した。
「「「「「・・・・・・」」」」」
ルコ達は呆然として、立ち尽くしていた。
本当にドン引きされてしまったみたい。
「この女は反省の為に放置します」
「「「「「・・・・・・」」」」」
まだ呆けたままだった。
「仕方ありません」
【探知転移】
五人を宿の前まで転移させた。
「貴女に反省を促すテーマソングを贈るわ」
「そんなもん要るか」
ミコトの言葉を無視して、カオリはテーマソングを歌い始めた。
「それでは失礼します」
【転移】
ミコトに別れの挨拶をして、カオリも転移した。
「畜生。覚えてやがれ。クソ女」
ミコトの絶叫が虚しく響き渡った。
「待ちなよ」
「此処から」
「やかましい。黙れ」
「「「「「ぎゃあああ」」」」」
盗難らしい五人組が現れたが、速攻で半殺しにした。
あのクソ女に所持金を奪われて、困っていたんだ。
丁度良いから、コイツらを下僕にしてやるぜ。
「おい、お前達に選択肢を与えてやる。此処で死ぬか。それとも俺の下僕になるか選べ」
「ふざけるな」
「誰が下僕になるか」
「拒否する」
「断る」
「絶対に嫌だ」
「ふ~ん、此処で死にたい訳だな」
「「「「「喜んで下僕になります」」」」」
「良い返事だ。俺はミコト。お前達の名前を言え」
「ポンです」
「チーです」
「カンです」
「リーチです」
「ロンです」
「お前達は麻雀かよ」
【回復】
取り敢えず五人の怪我を治してやった。
「何でこんな事になったのよ」
お父様の悪事が露見して、お父様は処刑され、公爵家は取り潰され、私は厳格な修道院送りになってしまった。
私は馬車に乗せられて、修道院に送られる最中だ。
「修道院なんか冗談じゃない。絶対に逃亡してみせる」
深夜に逃亡しようとしたが、失敗してしまった。
「離しなさい」
「暴れるな」
「少し教育が必要だな」
「い、嫌よ。止めなさい」
兵士達が私をイヤらしい視線で見つめて、不埒な真似をしてきた。
「誰か助けて」
「誰も来やしねえよ」
「観念しな」
「下衆ども、その汚い手を離しな」
制止の声がして、そちらを向くと、一人の女性と五人の男達が居た。
「何だ。お前達は」
「邪魔をするな」
「面倒だな。始末するか」
【絶対零度】
「「ぎゃあああ」」
兵士達の身体が瞬時に凍り付いた。
「ありがとうございます」
「お前はクソ女」
「痴女」
「変態女」
「外道女」
「強奪女」
「追い剥ぎ女」
「え、何ですか」
六人全員が私を見て、驚愕した。
「「「「「「惚けるな。忘れたとは言わせないぞ」」」」」」
「・・・・・・あの、貴女達とは初対面ですが」
「そういえば髪型が違うな。お前の名前はカオリか」
「違います。私の名前はイオリです。カオリは私の忌々しい双子の姉です」
「忌々しい?双子の姉なのにか」
「そうです。あんな忌々しい女なんか、姉なんて思っていません」
私は姉との経緯を話した。
「面白い。お前、俺達と一緒に来い」
「・・・・・・分かりました」
女性から一緒に来いと誘われたので、承諾した。
「私はミコトだ」
「ポンだ」
「チーだ」
「カンだ」
「リーチだ」
「ロンだ」
こうしてミコト達と一緒に行動する事になった。
「お前達の処罰が聖国大神殿での強制労働に決定した」
「父上、お考え直し下さい」
「強制労働なんて、絶対に嫌です」
「黙れ。これは既に決定した事だ。今すぐ大神殿に送る」
ホマとラセツの処罰が強制労働に決定し、二人は馬車に乗せられて、大神殿に送られる事になった。
「お前達、馬車を置いて、さっさと消えな」
「ふざけるな」
「お前達、盗賊だな」
「やかましい。黙れ。鬱陶しい」
【絶対零度】
「「ぎゃああああああ」」
鬱陶しいので、兵士達を凍らせてやった。
「これで二台目の馬車が手に入ったぜ」
「姉御、中に二人居ました」
「引きずり出しな」
「へい」
「お前はカオリ」
「どうしてアンタがこんな場所に居るのよ」
二人の男女がイオリを見て、カオリと叫んだ。
「お前のせいだ」
「そうよ。疫病神」
「私はカオリではありません。カオリは私の忌々しい姉です」
私は二人にカオリとの経緯を話した。
二人もカオリとの因縁を話してくれた。
「お前達も一緒に来い」
私達はお互いに名乗り、同行する事になった。