第二話
テンテンとミミミは子ウサギの兄妹。
優しいお母さんと一緒に元気いっぱい暮らしています。
ある日、二人はハラハラドキドキな冒険にでかけます!
世知辛い世の中なので、とにかく優しい世界を表現したいと思いました。
読んだ方が暖かい気もちになってくれたら幸いです。
冬童話2022に応募しました!
「それオオカミよっ!」
お母さんが叫びました。
めったに怒らないお母さんの大声に二人はびっくりぎょうてんしました。
「で、でも・・」
ミミミがなにか言いたげです。
「でも?」
お母さんがミミミをにらみつけます。
こんな目つきのお母さんを見るのも初めてです。
「や、優し・・かったよそのオオカミさん」
「優しいワケありませんっ!」
お母さんの顔つきがどんどんきつくなってきて、二人はガタガタ震えだしました。
「あなたたちのおじさんもおばさんも・・そしてお父さんもオオカミに・・」
それッきりお母さんは黙ってしまいました。
「いい?そのオオカミさんはおっかないんだから。絶対にその滝に行っちゃダメだからね」
「うん・・」
二人はそろってうなずきました。
「お願いだから約束してね。お願いね」
お母さんはなんどもなんども言いました。
目の届くところで遊ぶように──それからしばらくのあいだ二人はお母さんの言いつけをしっかり守っていました。
カタツムリを鼻にのせたり、ちょうちょを追っかけたりしていましたが、だんだんあきてきました。
特にテンテンはまたあの滝のほうに行きたくてたまりませんでした。
オオカミさんにも会いたかったし、あのキラッと光ってお空を飛んでいった光りも見たかったのです。
たぶん滝のむこうがわにあの光は落っこちたにちがいない、そう考えていました。
ミミミも優しい目をしたオオカミさんが怖いとは思えませんでした。
ある日、お母さんが巣穴に戻っていったすきを見て、二人はあの滝に向かってかけだして行ってしまいました。
「はは。もうこれでお母さんも追ってこれないぞ」
先頭をはしるテンテンはちょうしにのっています。
「そうだね」
ウサギの兄妹はウキウキして坂道を下っていきます。
お日さまもかたむいてきてうす暗くなっていましたが、フクロウさんの悲しそうな鳴き声、この日は聞こえてきません。
なによりあの優しそうなオオカミさんに会えるかもしれないと思うと、さして怖くありませんでした。
滝を落ちていく水の音が聞こえてきました。
「いないなぁ」
ミミミはさみしそうです。
「元気になったからな。遠くに行ったんじゃないかなぁ」
オオカミさんも気になるけど、あの光の玉がどこに落ちたのか──テンテンはそっちも知りたいのでした。
「困ったぁ」
ミミミがつぶやきます。
お日さまはもうお山の向こうに姿を消してしまいました。
風もずいぶん強くなってきました。木の枝が揺れゴゥゴゥ鳴っている──ミミミは心細くなってきました。
「帰ろうかぁ」
テンテンは残念そうです。
そのときでした。
〈ガサガサガサっ〉
なにかが動いてる──そんな音がしました。
〈ジャッジャッジャッ〉
だれかやってくる──二人は動けず、かたまってしまいました。
「うーん、今日はエモノなしかぁ」
見たことない生きものがあらわれました。
森の生きものは、鳥さんいがい、みんな地面を四本の足で歩いています。
でもその生きものは後ろ足の二本だけ使っていました。
長い黒い棒のようなものをもっています。
「お?こんなところに子ウサギが?!」
二本足の生きものが叫びました。
こっちを見ています。
兄妹は怖くなりました。ガタガタ震えることしかできません。
「今夜はごちそうだ」
二本足の生きものがゆっくり近づいてきました。
妹を守るんだ──でも、テンテンはピクリとも動けません。
二本足の生きものがゆっくり黒い棒をこっちに向けてきました。先っぽに穴が空いている不思議な棒です。
「すまんな」
その時です。
二本足の生きものの後ろのほうでピカッとなにか光りました。
この前、お空をかけめぐった一本の光とソックリです。
次の瞬間です、
「グワォオオゥっ!」
オオカミさんが突然目の前にあらわれたのです。
「オオカミさんっ!」
二人は叫んでいました。
オオカミさんは二本足の生きものに飛びかかりました。
「う、うゎあっ!オオカミだあ!」
二本足の生きものは大慌てです。
長い黒い棒をほうりだし滝のほうにスタコラ逃げていきました。
「よかったなぁ、お前ら」
ホットしたオオカミさん。
「あのテッポウでうたれたらひとたまりもない」
返事がありません。
オオカミさんは驚いて振りかえります。
二匹の子ウサギが気絶してひっくり返っていました。
「しょうがないなぁ・・」
オオカミさんは呟きます。
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