第一話
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人里はなれた山おくにテンテンとミミミという子ウサギの兄妹がいました。
二人は、優しいお母さんといっしょに、元気いっぱいにせいかつしています。
「あんまり遠くへ行っちゃいけないよ」
お母さんはいつも二人に言いきかせます。
「わかってるよ」
テンテンもミミミもそう答えます。
でも、森の暮らしが楽しくてしょうがない二人は、あちこちかけ回り、帰ってくるのはお日さまが山の向こうにサヨウナラするころでした。
その日もリスのサンサンと追いかけっこをし滝の近くまで来てしまいた。
水の音がすごく、お耳のすぐそばで聞こえるようでした。
「もう、帰ろうよ」
怖がりのサンサンが言いました。
「意気地なしだねサンサンは」
生意気ざかりのテンテンがそうからかいました。
「ただ水が落ちる音じゃないか」
「でも・・お母さんも遠くへ行くなって・・」
小さな声でミミミが言いました。
お兄ちゃんのテンテンは怖いもの知らず。でも、妹のミミミはまだまだ怖いものがいっぱいです。
「ボクはもう帰るよ」
大きなシッポをくるりと巻いて、サンサンは行ってしまいました。
「フン、いいさ別に」
テンテンは気にしません。
「この下に大きなお魚がいっぱい集まるんだって」
「下まで行くの?」
「そうさ、お魚ともお友だちになれる」
「そうなの?」
ミミミは怖がりです。
だけど、友だちになれる──そう聞いてぜひ行ってみたいと思いました。みんなとワイワイ遊ぶのが大好きだからです。
二人は急な坂道をおそるおそる降りていきました。
大きな木がたくさん生えています。
〈ポーポーポー〉
フクロウさんの悲しそうな声。
「さみしい所だね・・」
ミミミは不安そう。
お日さまもだんだん低くなってきました。
「大丈夫、大丈夫」
テンテンはへっちゃらです。あたりはどんどん暗くなってきました。
「アレなぁに?!」
ミミミが急に大きな声をだしました。
お空を見上げる二人。
キレイな一本の光の線があらわれたのです。
スーッとお空をすべって、お日さまの沈むほうに消えました。
「不思議だね!」
テンテンもビックリしています。
「追いかけよう!」
テンテンが言いだしました。
「でも・・遠そうだよ・・暗くなってきたし・・お母さんも早く帰ってこいって・・」
ミミミは不安でした。
テンテンは妹の言葉にガッカリです。
「怖いならひとりで帰りなよ」
そう言ってしまいました。
「ボクはもう大人なんだ。平気さ」
まだまだ小っちゃい耳をピンとのばし、テンテンが言います。
一人で帰るのは怖い、それにお兄ちゃんが大好きなミミミは困りました。
「・・い、いっしょに行く・・」
たまらずそう答えました。
「そうだよね!さすがミミミ、ボクの妹だ!」
テンテンは嬉しそうに飛びはねます。
「とりあえずこの坂を下っていこう」
二人は坂道をドンドン下りていきました。
お日さまはほとんど沈みかけています。
あたりはすっかり暗くなってしまいました。風が吹き、森ぜんたいがゴーって鳴いてるようです。
「やっぱり・・帰ろうよ・・」
ミミミはもう泣きそうです。
「そ、そうだね」
テンテンもさすがに不安になってきたようです。
二人はいま来た坂道をのぼりはじめました。
〈ガサガサガサっ〉
どこかで騒々しい音がしました。
「ひゃっ!」
二人は飛び上がってしまいました。
音のしたほうをジッと見ます。
草むらに白い大きなどうぶつ?が横たわってました。「・・・」
兄妹は声もだせません。
その〈白いの〉の目がキラッと光りました。
「あ、あれって・・」
ミミミがテンテンにたずねます。
「き、キツネ?」とテンテン。
「そ、それ・・お、恐ろしいどうぶつだよ・・お母さんが言ってた」
ミミミは震えています。
「お、お前ら・・」
〈白いの〉が話しかけてきました。
目が三角につりあがり、すぐにでも飛びかかってきそうです。
「な、なに?」
走って逃げだしたい、でもテンテンはこらえました。
お兄ちゃんのアナタがしっかりなさい──いつもお母さんに言われているのです。
妹を守るぞ──テンテンは勇気をふりしぼって、
「な、なぁに?」
〈白いの〉に答えました。
「ここで、な、なにしてる?」
〈白いの〉が聞いてきます。
「ぼ、冒険」
「冒険?」
「でも、もう帰るんだ」
胸をはってテンテンが答えます。
「そ、そうか・・」
〈白いの〉がつぶやきました。
それっきりなにも言わず、〈白いの〉は目を閉じました。
今がチャンス──テンテンはこの場を去ろうと決めました。
そっと歩き始めます。
「ね、ねぇ・・」
急にミミミが聞いてきました。
「な、なに?」
こんなときになんだい──テンテンは少しはらが立ちました。
「け、ケガしてるみたい」
「え?」
振りかえって〈白いの〉を見ました。
ミミミの言うとおりでした。キレイな白い毛におおわれてる足のあたりが赤くなっています。
どうりでさっきから苦しそうなんだ、テンテンは思いました。
「ちょっと待ってて!」
そう言ってミミミが草むらに飛びこんでいきました。
「ど、どうしたの?・・」
いっつもおくびょうなミミミとは思えません。
ミミミは丸い葉っぱをくわえ戻ってくると、〈白いの〉のほうに走っていきました。
「な、なんだ?」
びっくりして〈白いの〉はミミミを睨みます。
「この葉っぱケガにきくってお母さんが言ってた」
ミミミはそう言って〈白いの〉の目の前に葉っぱを置きました。
「薬草・・てことか・・」
「薬草?」
ミミミのきいたことに答えず、〈白いの〉はそっと葉っぱをくわえると血のでてるところにおきました。
「ふぅ・・」
ため息をついて〈白いの〉は目をとじました。
どうしていいかわからず二人はしばらく〈白いの〉のことを見守っていました。
「ありがとう」
いきなり〈白いの〉が言いました。
「どうやら本当の薬草のようだ」
三角でおそろしかった〈白いの〉の目がやさしく感じられました。
「そのケガどうしたの?」
ミミミがたずねます。
「人間にやられた」
「ニンゲン?」とテンテン。
二人が今まで聞いたことないことばでした。
「この世でいちばんやっかいなヤツらさ」
「ふぅん・・」
テンテンにはチンプンカンプンでした。
「そっちの小っちゃいの」
ミミミを見ながら〈白いの〉が言いました。
「お前はオレと同じで白いところが多い。気をつけろ」
そう、〈白いの〉が言うようにミミミは目のあたりが茶色いだけで、のこりは真っ白なのです。
反対にテンテンは体ぜんたいが茶色で目のまわりだけがうっすら白いのです。
「あと二時間もすれば歩けるようになりそうだ。この葉っぱのおかげで」
嬉しそうに〈白いの〉が言いました。
なんだか二人も嬉しくなってきました。
「ありがとう、気をつけて帰れ」
〈白いの〉の目がいちだんとやさしくなっていました。
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