第五話
「じゃあね、絆。また明日ね」
美海と夏来と別れる。
「うん、じゃあね~! 」
・・・蒼くん、今日来るっていってたよね・・・・・・。
なんかわかんないけど、楽しみだなぁ・・・。
「先生!! こんにちは~っ!!!」
「あら、絆ちゃん? どうしたの? 今日はレッスンないわよね?」
ここはエレクトーン教室。いつもの先生を見つけて、私は声をかけた。
「うん、そうなんだけど。発表会近いし、曲も決めたいし、それに・・・・・」
「それに? どうかしたの?」
先生が不思議そうに私を見る。
「・・・昨日、自主練習室で、蒼くんって人にあったんだ。それで・・・・・・」
私は昨日のことを先生に言った。
「えっ!! 蒼くんと話したの!?」
「えっ・・・と、話したけど・・・。でも先生、なんでそんなに驚くの?」
「・・・いやっ、なんでもないのよ。ほら、蒼くんって、確かピアノだったでしょ? だから・・・」
・・・先生、どうしたんだろう・・・? なんか変・・・。それに、なんで蒼くんのことで、あんなに驚いたんだろう・・・?
まぁ、いいか・・・。
カチャ・・・。
私は自主練習室のドアを開けた。
・・・蒼くんは、まだ来ていないんだ・・・。
「じゃあ、弾いてよっかな」
私は、独り言を言って、エレクトーンの前に座った。
・・・蒼くんが弾いてた曲・・・。確か、「メヌエット」って言ってた・・・。すごく、キレイな曲だったなぁ・・・。
でも、エレクトーンでも、弾ける曲なのかわからないしなぁ。
もし弾けたら、発表会で弾きたいなぁ・・・。
ガチャ。
「・・・藤堂さん・・・?」
「あっ! 蒼くん! 来てくれたんだ!!」
よかった。蒼くん、来てくれたよ。実は、ちょっと心配だったんだけど・・・。
「・・・一応約束したし・・・。今日、来るって・・・・・・」
「そうだね! そうだよね! よかった・・・」
よかった、来てくれて。あ、そうだ。メヌエットのこと、聞いてみよう。
「ねぇ、蒼くん。昨日弾いてた曲・・・メヌエット? って、エレクトーンでも、弾ける?」
「・・・わからない、けど・・・。楽譜とかがあれば・・・弾けるんじゃ・・・?」
「そっか。いや、あのさ。私、発表会の曲、決まってなくて・・・。もしできたら、メヌエットが弾きたいなぁって、思ってたんだ」
やっぱり、先生に聞かなきゃ、わからないか・・・。
「蒼くん。ありがとう。私、先生に、楽譜があるのか聞いてみるね」
「・・・うん」
蒼くんが、うなずいた。
「じゃあ、ちょっと行って来るね」
私はそう言って、自主練習室を出た。