表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

2-1 キュブとオリティ

一言あらすじ

就寝・・・・・できない!!!

「うーん・・・・・・。」



 もう朝みたいだ。眠い。もう少し寝ていたい。今日は寝て過ごしたい。いや、いつまでも寝て過ごしていたい。


 あれ、そういえば、何かするはずだったよな・・・

 というか、この感触はよく知る布団ではな・・・・・・・・・・・・・






「そうだった!!」


 キュブは飛び起きた。そうだった。スーアだ。


 

 キュブは今まで自分が寝ていた箇所を確認した。そこには木の板に布をかけただけの簡易な寝床があった。当然、久太の使っている寝床ではない。



 念のためにキュブは頬をつねってみたが、普通に痛い。キュブは周囲を見渡した。キュブが目覚めた家、1部屋しかないので正確には小屋と言うべきだろうか。この小屋の中にキュブ以外に人はいないようだった。人どころか寝床以外に何もない。



 少し家探しをしてみたものの、本当に何もなかったため、キュブはとりあえず小屋の外に出てみることにした。





「こ、これは・・・」



 キュブは目の前に広がっている景色を前に、改めてスーアに来たのだという実感が湧いた。しかし、感動よりは落胆が大きかったかもしれない。



 久太が住んでいる場所は大都会ではない。しかし、一般的な住宅街であるため、窓を開ければ他の家やマンションが見えるし、道路は舗装され電信柱が立ち並ぶ。近くに小学校があるので、朝は小学生の元気に通学している。


 しかし、キュブの周囲には、山、川、そして平原。建物が全く見当たらない。地球では間違いなくド田舎と言われるような場所だった。いや、畑もないから大自然といった方が近いかもしれない。





「なんか、予想と全然違う・・・。」


 魔法都市にいきなり住んでいる、とかは無くてもまぁ仕方ない。が、多少なりとも人がいる所からスタートできると思っていたキュブはガッカリした。




「まあ、お約束?のモンスターだの魔獣だのにいきなり襲われることはなかっただけマシなのかな。」


 と、キュブはとりあえずポジティブにとらえ、今後どうするかを考えることにした。

 寝る前にスタート地点のことは色々想定していたが、ここまで人気の無いところに放り出されるとは思わなかった。川はあるので、最悪水はどうにかなるとしても、早急に町か村を見つけたかった。




 どうしたもんか、と周りを見渡すと、遠くにキュブが住んでいた(?)小屋と同じような小屋があるのに気がついた。



 あてもないし、とりあえずキュブはその小屋に向かった。小屋の前に到着して再度じっくり小屋を眺めると、キュブの小屋と外観に違いはない。





「あ、あの。すみませーん。」


 やや遠慮気味に、キュブは小屋のドアをノックした。返答はない。

もう一度してみたがやはり返答はない。何かゴソゴソ音が聞こえたような気もしたが。


 カギがあるドアには到底見えなかったので、キュブは失礼を承知で中に入ることにした。




 返事がないからといって、勝手に他人の住居に入るのは現実世界では立派な犯罪。しかし、泥棒や器物損害はアウトとしても、ロールプレイングゲームよろしく小屋に入るくらいはセーフセーフ。そんな軽い気持ちで入ってしまった。



 直後に、ここはゲームの世界と全く異なることを再認識することになったが。





「おじゃましまーす。」


「え、ちょっ!?」


「ん?」




 小屋の中もキュブの小屋と全く同じように思えた。



 違う点があるとすれば、部屋の中に人がいたことだろうか。

 

 見たところ人間の女の子だ。年齢的には女子高生~大学生といった感じだった。




 今のところ「彼女いない歴=年齢」のキュブ。こんな小屋(←失礼)にまさか女の子がいるとは思わず硬直。


(どどど、どうしよう、やってしまった・・・)

と、思った矢先のことだった。





「こっ、来ないで! ふぁ、【ファイヤーボール】」



 女の子にしてみれば、いきなり見ず知らずの男が家に入ってきたわけだ。驚いて拒絶する反応を示すのは仕方ない。




 キュブにしてみれば、初対面の女の子に強く拒絶されたことは大きなショックだろう。日常生活の中であれば、の話だが。



 そんなことに気を病む以前に、彼女の明らかに呪文と思える魔法にキュブは焦った。


 彼女が【ファイヤーボール】と言った瞬間、野球ボールくらいの火の玉が発射された。




 そして、この火の玉はキュブの方へまっすぐ・・・・・・

 向かってくることはなかった。




 キュブの横を大きく逸れて飛んでいき、小屋に見事命中した。大して離れていないキュブを外すあたり、相当なノーコンだ。そのおかげで助かったわけだから感謝すべきかもしれない。




 ところで、小屋は木材の骨組みを薄い布のようなもので覆って作られていた。そんな所に、いくら野球ボール程度の大きさとはいえ火の玉を打ち込んだらどうなるか。

 火の玉は壁に当たって弾けてしまったが、しっかり置き土産を残していた。火災発生だ。




「きゃあああぁあ!?」




 完全に自爆だが、女の子はパニックになっていた。キュブも内心はアワワワ状態だった。

火は見る見るうちに広がっていき、視界が煙に覆われていく。何でできているかは知らないが、非常に燃えやすい素材で造られた小屋だったのだろう。




「ごほ、、、、ごほ。」


 どうやら女の子は焦るあまり煙を強く吸い込んでしまったようである。キュブは我に返る。





「ま、まずい。とりあえず外に出ないと。」


 文字通り火事場の馬鹿力といったところか。キュブは女の子のもとにいそいで駆け寄り、手をつかんで小屋の外に飛び出した。この間2秒ほど。



「「・・・はぁ、はぁ、、、」」



 

 小屋から急いで離れ、安全な場所まで移動した途端、力が抜けてしまったのか、キュブと女の子は座り込んでしまった。

 火災が発生して5分と経っていないが、もはや消火が間に合わないところまで小屋は燃えてしまった。そして、程なくして崩れ落ちてしまった。




 別世界に来た途端に火事に巻き込まれるとは思ってもみなかった。




(・・・あ、危なかった。これってもしかしなくても自分のせい!?

 やっぱり謝るしかないよね。ごめんなさいで済むのかなぁ・・・・)



 そんなことを考えていたが、中々切り出せず沈黙が続く。結局、小屋の最期の瞬間をただ見つめているだけだった。

 




(あーあ。燃え尽きちゃった。ボロ小屋(←失礼)だったとはいえ、火の魔法はすごいなぁ。そういえば、あの魔法・・・・)




 と、もはや別のことを考え始めたキュブだった。そんな余裕が出てくるくらいにはアドレナリンの放出が収まってきたのか、だんだん痛みを覚えてきた。ふと自分自身の手を見ると火傷を負っていた。

 ひょっとして、と思って女の子の方を見ると、同じように火傷しているようである。キュブより酷く見えた。




(・・・これって放置しといて良いレベル? 火傷だから冷たい水で洗い流せば少しはマシになるかも。川の水でいいかな?)


 幸いにも、川は近くにあった。キュブはおずおずと女の子に切り出した。





「あの、えっと・・・。本当にごめん。えっと・・・、ほら。お互い火傷してしまったみたいなので、そこの川の水で冷やそうと思うんだけど・・・。」


 女の子も少し落ち着いてきたのか、取り乱してはいなかった。そしてキュブの提案にコクリと頷いたので、言葉は通じているようだった。




 二人は川辺に移動した。キュブは川の水に手をつけてみた。水はよく冷えていて、川の水に火傷した部分をつけて冷やしてみた。女の子も同じように冷やしているがかなり痛そうにしている。



 しばらく冷やしたところ、キュブの痛みは引いた。むしろ手が冷たすぎてどうにかなってしまいそうだったので、水に浸けるのを止めた。



 しかし、女の子の手には大きな水ぶくれができていた。うまく火を避けることができなかったのだろう。


 こういう時の対処方法をキュブは知らなかったし、女の子も知らないようだった。女の子は泣きそうになっていた。




「う、うぅ・・・・・・、ひっく・・・。」


「あ、ああ。大丈夫だから泣かないで・・・」




(どどどど、どうしよう。マズいって。あぁ医学知識があればなぁ。そもそも医療道具もなしにこの火傷を魔法のようにサッと治すことなん・・・・・・・・・あ。)




 焦るキュブだったが、一つ思い当たった。燃え尽きていく小屋を眺めている時に考えていた彼女の魔法のこと。【ファイヤーボール】と言っていた。キュブはこれに違和感があった。そこから小さな仮説、正確にはその理由がこれだったらチートだなぁ、というキュブの希望のような仮説を思いついていた。



 この仮説が超超超幸運なことに当たっていたなら、この火傷を治せるかもしれない。果たしてそんなことがあるのか、という気持ちはある。だが、当たっていてくれたら非常に助かる。というか頼むから当たっていて・・・

 そんな強い想いとともに、キュブは女の子に切り出した。




「いきなりごめんね。もしかしたらその火傷を治せるかもしれないから少しの間じっとしててね。治らなかったら、何でもするから・・・。」



 女の子は、突然何を言っているんだろう、という様子だ。しかし、特に嫌がる素振りも見せずじっとしていた。そこで、キュブは女の子の水ぶくれに手をかざして一世一代の賭けをした。そう、




 回復の呪文を。




【ヒール】



 キュブがそう唱えた瞬間、女の子の火傷の周辺を緑色の光が取り囲み、火傷はあっという間に治った。女の子は呆気にとられていた。





「おおおお、魔法すげえぇぇ!! あ、どう、痛みは消えた?」



 女の子からすれば、回復の魔法を自分で唱えておいてその効果に驚いている変なヤツに見えただろう。今更かもしれないが。


 キュブの問いに女の子は頷いた。どうやら完治したみたいだ。キュブは心からホッとした。と同時に、自分の思い描いた希望の塊のような仮説が本当に当たっているのかもしれないと別の意味でも喜んでいた。




(治ってほんっっとうに良かった。それにしても、回復の魔法が本当に使えたよオイ。っていうことはさ・・・)



 キュブが自分の世界に入り込む直前に、女の子が初めて話しかけてきた。




「あ、あの・・・。治してくれてありがとう。あ、さっきはごめんなさい! いきなり男の人が入ってきてビックリしてしまって。気づいたら火傷しているし痛いしで頭がワーーってなってしまって。」



「ん? ああ、えっと・・・、本当に治って良かった。こっちこそ本当にごめん。返事がなかったから、ついゲーム感覚で入ってしまって・・・」


「え、ゲーム?」


「ああいや、その、なんというか。とにかく勝手に入ってごめん。小屋も燃えちゃって、どうお詫びしたら良いのか・・・。」




「い、いえ・・・。あなたに当たらなくて本当に良かった。私はおりさ、いえ、オリティって言います。色々とお尋ねしたいのですけど、まず一つだけ。」





 女の子は少し考えるそぶりを見せ、チラチラこちらを見た後、キュブに尋ねた。




「もしかして、現実コネクションを知っていますか?」


昨日は現実、今日は異世界。でも話の中ではしばらく異世界。

1日が何話にもなることはよくある話・・・。

Next→異世界(続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ